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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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軽い運動と沈まない桟橋

お互い一歩も引かず、女同士の――いや、もはや戦士同士の熱い闘いが繰り広げられていた。


見ているリディアや学生達は、息を呑んで固まっている。


それも当然だった。


アステリアに、これまで一太刀も入れられなかった自分達。

そのアステリアが、今――明確に「防御」を使わされている。


しかも相手は、メイヤの母。


え……あの人、そんなに強かったの……?


さらに異様なのは、あれだけ挑発を飛ばしていたアステリアが、今は一言も喋らず、ただ黙々と闘っていることだった。


「……やっぱ流石ですね!姉御!」


アステリアが息を整えながら言う。


「貴女もね。大分成長してるわ。私は嬉しいわよ」


そう返す母の表情は、どこまでも穏やかだ。

だが、その足運び、体重移動、間合いの取り方――どれもが研ぎ澄まされている。


パナーは、物陰からその光景を見て、静かに確信していた。


やっぱこの家族……やべー!


領主は領主で、どこか貧乏が染み付いているし、リディアはバーサーカー気質、メイヤはそもそも発想が意味不明。


「この家なら、母親だけはまともだろ……」


そう思っていた自分を、今すぐ殴りたい。

近接戦闘で、この人に仕掛けたら……死ぬ


その時だった。


「こらこら!!セリア!!いい歳して何やってるんだ!?」


広場に響いた声。

振り返ると、父が呆れ顔で立っていた。


「あら、貴方。見ての通り、軽い運動よ?」


軽い……!?


父は一瞬、言葉を失い――そして、母の姿を改めて見た。


「ん? セリア……お前……」


「何? 貴方?」


「……少し太ったか??」


次の瞬間。


綺麗に捻りの入った右ストレートが、父の顎を正確に捉えた。


何の無駄もない一撃。


父は、音もなく宙を舞い、そのまま地面に転がった。


……沈黙。


「……」


パナーは、目を逸らした。

リディアは、何も見なかったことにした。

学生達は、人生観が一つ更新された。


メイヤは、深くため息をついた。


「……はぁ」


これ以上見ていても仕方ない。

そう思い、広場を後にする。


向かった先は浜辺だった。


そこには、完成したばかりの浮桟橋の実物が、一基だけ静かに浮かんでいる。


「……安定してるわね」


「はい。問題は無さそうです」


学術員が報告する。


「まだ一つだけですが、これを連結して沖合へ延ばす予定です。十分に検証してから進めます」


「ええ。焦らず、ね」


波に揺られながらも、桟橋は沈まず、傾かず、穏やかにそこに在った。


こっちは……まあ、平気そうね。


背後では、まだ何やら騒がしい声が聞こえるが、少なくとも――


この浮桟橋は、ちゃんと“地に足”ならぬ“水に浮いて”いる。


メイヤはそう思い、少しだけ安心したのだった。

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