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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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甘い進捗と重たい現実

紫石までの敷設は無事完了。

次は砂鉄採掘場へ――既に敷設は始まっている様だし、進捗も悪くない。


「中々良いわね……」


そう呟いてから、ふと視界に入った二人に目を細める。


……ん?


ミュネとパナー。

最近、妙に丸くなってない?


健康管理も領政の一部。

子供相手だし、軽く聞くだけなら問題ないわよね。


「お二人さん、ちょっと良いかしら?」


「「はい?」」


「最近、太って来てない?」


「にゃ、にゃ〜!そんな事ないですにゃ〜!」


焦ると語尾が壊れるミュネ。

隣のパナーも必死に頷いた、その瞬間――


ブチッ。


「……」


弾け飛ぶボタン。

沈黙。怪しい、これは完全に怪しい。


「……何か隠してるわよね?」


「そ、そんな事は……」


その時。


コンコン、とノックの音。


「メイヤ、この二人を少しお借りしますわね」


現れたのは、にこやかな――お母様。


……あれ?

最近、この二人よく呼ばれてない?


怪しい。とても怪しい。


こっそり後をつけると鼻をくすぐる甘い匂い。


「……まさか」


扉を開ける。


「そこを動くな!」


「なっ――!」


机の上には、見事なショートケーキ風の菓子。


「開発……成功してたのね……?」


現行犯逮捕。


どうやら主犯はお母様。

ミュネとパナーは巻き込まれ甘さにも負けて逃げられなかった模様。


「三人とも、明日から朝のアステリアさんとの運動を追加です」


「にゃあああ……」


「リディアお姉ちゃんは?……少しだけ、甘い物解禁」


静かなガッツポーズが見えた気がした。



母は伊達に母ではない!


学生に混ざって基礎訓練を始める三人。

腕立て、屈伸、柔軟、軽い走り込み――。


窓からその光景を眺めながら、メイヤは小さく息をついた。


……いつまで持つかしらね?


とはいえ、朝の運動は健康的だ。

甘い物の代償としては、むしろ軽い方かもしれない。


その訓練場の中央で、アステリアが妙に楽しそうな顔をしていた。


「姉御〜、何やってんすか?」


突然の呼びかけに、学生達の動きが一瞬止まる。向けられた先にいたのは――メイヤの母。


「……何よ?」


「今なら俺にも倒せそうっすね」


空気が凍る。


あ、これ……煽ってるわね。


メイヤだけでなく、リディアや周囲の学生達も察したらしい。視線が一斉に集まる。


「はぁ〜?確かにここ数年、体は動かしてなかったけど……」


「情けないっすねぇ」


ざわっ、と小さくどよめく学生達。


これ、アステリア式の挑発ね……


メイヤは内心で頭を抱えた。

母が“闘う姿”など、正直想像がつかない。


止めた方が……いや、止まらないわね、これは。


一方で当の本人は、ふっと笑った。


「へぇ……アステリアちゃんも、言うようになったのね。私は嬉しいわよ?」


「そうすっか?じゃあ、やってみます?」


遠くから見ていたメイヤは思わず顔を覆った。リディア達も「あちゃー……」という顔だ。


どう見ても、母が不利。

周囲も完全に“止めに入るタイミング”を探している。


「奥様!怪我しちゃいますにゃ!」


ミュネが慌てて割って入る。


「もうストレッチも終わってますし!」


その瞬間――


シューッ!


風を切る音。


次の刹那、アステリアの鼻先を鋭い蹴りがかすめた。


「――っ!!」


アステリアが反射的に上体を反らす。


「うわっ!?いきなりとは卑怯じゃないっすか!」


「はぁ〜?」


母は涼しい顔で脚を下ろす。


「勝てば官軍って、教えたのは私でしょう?」


学生達が、言葉を失う。


「それに……」


母は一歩踏み出し、にこりと笑った。


「私の蹴りを避けるなんて。成長したじゃない、アステリアちゃん」


「なにーーー!?」


アステリアが目を見開く。


「体術、教えたのは……私よ?」


その一言で、場の空気が完全にひっくり返った。


……ああ、そういう事?


メイヤは悟った。

この人は、最初から“隠していただけ”なのだ。


学生達の視線が、尊敬と恐怖の入り混じったものに変わる。


「さ。どうする?」


母は構えも見せず、ただ自然体で立っている。


「まだ続ける?」


アステリアは一瞬黙り――そして、楽しそうに笑った。


「……流石っす、姉御。これは、簡単には倒せそうにないっすね!」


でしょうね!


メイヤは苦笑しながら、窓を閉めた。


朝の運動は――

どうやら、想像以上に本格的なものになりそうだった。

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