着飾る館、落ち着かぬ領主
領主館。
領都の建築工事を一時中断したおかげで、改修と増築は恐ろしい速度で進んでいた。
隙間風は消え、雨漏りも止まり、石壁の補強まで終わっている。
「よう、領主様。大分マシになってきたな?」
ロウガが腕を組み、満足そうに外観を眺める。
「そうだろ?一応“領主館”になっただろ」
「外からはな」
「……中もだぞ?」
ロウガは一瞬、言葉に詰まった。
「お前さん、他所の領主館に入ったことないだろ」
「ああ。ほとんど無いな」
「だと思ったわ……」
室内は確かに綺麗になった。だが、家具は最低限。
机は修理され、椅子は揃ったが、豪奢さとは無縁だ。
「机のガタ付きが無くなった程度だぞ。新しいの買え」
「これは代々使っておる。直せば十分だ」
「伯爵令嬢を迎える館だぞ?」
「……分かってはいる。だが、何をすれば正解なのか分からん」
ロウガはニヤリと笑った。
「なら任せろ。請求は――まあ、あれから回収しとく」
「そうしてくれ」
数日後。
「ロウガ!!」
「どうだ?すげえだろ?これぞ“ザ・領主様の館”!贅沢三昧!」
絨毯、装飾、照明、調度品。
見違えるほど華やかになった室内に、領主は呆然と立ち尽くす。
「……落ち着かない」
「慣れだ慣れ!」
こうして、伯爵令嬢を迎える準備は整った。
問題は――この館に、主が慣れるかどうかだけである。




