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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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才覚は波を越えて

「……アステリアさんって、確か養女だってお母様が言ってたわよね」


敷設隊の進捗報告に目を通しながら、ふとその疑問が口をついて出た。

優秀なのは間違いない。けれど、あの思考の速さと視点の飛び方は、ただの“出来る領主”では収まらない。


――一体、どんな人物なのか。


「お母様に聞いてみるか」


そう思い立って、メイヤは居間へ向かった。


「アステリアちゃん?」


お茶を淹れながら、母・セリアは少し懐かしそうに微笑んだ。


「学年は違ったけど……かなり優秀、だったわよ?」


「……その“?”は何?」


「だって、説明しづらいのよ」


首を傾げるメイヤに、セリアは指を折っていく。


「成績は常に次席。規則の理解と運用が得意。人をまとめるのも上手。それから――剣術、棒術、弓術、馬術。全部、学年トップクラス」


「……それ、ほぼ万能じゃない」


「でしょう?」


くすりと笑ってから、少し声を落とす。


「でもね、平民出身だったの」


「平民?」


「ええ。当時は今よりもっと露骨だったから。

貴族の子たちに、まあ……色々と、ね」


「嫌がらせ?」


「ええ。だから――」


セリアはさらっと言った。


「学年を跨いで嫌がらせしてきた貴族を、まとめてフルボッコにして有名になったのよ」


「……は?」


「学科でも実技でも正面から叩き潰して。

その後、勉強会を開いて“分からないなら教える”って言ったの」


メイヤは思わず口を開けた。


「……なにその、伝説」


「同性にも平民にも人気者だったわ。私は心配でね、お茶会に呼んで“あまりフルボッコしすぎないで”って宥めたりして」


「宥める内容じゃないと思うんだけど……」


「懐かしいわねえ」


しみじみする母を横目に、メイヤは理解した。


――元から、頭も腕も強くて、弱い立場の者に手を差し伸べるタイプ。

それがロウル領主の目に留まって、養女に迎えられた。


なるほど、納得しかない。


そのタイミングで、扉が勢いよく開いた。


「メイヤ!」


「……今度は何?」


「領主様から了解が取れた!ロウル領の技術者をここで受け入れてもらう!」


「はい??どゆこと?」


「そのまんまだ!同盟として正式に俺からお願いした!」


一瞬、言葉を失う。


「……ちょ、待って。技術者受入って、そんな軽く決まる話じゃ」


「それとこの領地に港を作ってくれ、小型船でちまちま運ぶのは非効率だし」


「港!?そんなの簡単に作れるわけ――」


「そうか?」


きょとんとした顔で言われる。


「お前なら、すぐ作れると思ったんだが」


「流石に無理!!」


即答だった。


「流石に無理か……」


だが同時に、胸の奥が少しだけ高鳴る。


技術者の交流。港という“海への窓”。


アステリア・ロウルという人物は――

ただ見て、学ぶだけで終わる気は、最初からなかったのだ。


「……ほんと、油断ならない人だわ」


メイヤは小さく息を吐き、次の書類を引き寄せた。


波は、もう陸に届いている。

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