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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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鉄の道は、静かに広がる

トコトコと歩く三人。

その少し後ろを、アステリアの護衛が二名、無言で続いている。


……やっぱり、やり辛い。


背中に視線を感じるだけで、肩が凝る。

敵意ではないのは分かる。分かるけど――「観察されている」というのは、どうにも落ち着かない。


「まずは、どこへ?」


アステリアが、淡々と聞いてくる。


「んー……敷設隊の進捗を見に行く予定なんだけど」


そう言いながら、私は少し考えた。

いきなり敷設現場は、刺激が強すぎるかも?


線路、測量、作業効率。

見せて問題はないはずだけど、“全体像”を一気に見せる必要はない。


「その前に、運転士の練習状況を見てからにしましょう」


「運転士?」


「ええ。今はまだ訓練段階だけど」


少し歩くと、遠くから、規則的な金属音が聞こえてきた。


――カタン、カタン……。


「あ、動いてるわね」


線路の先で、黒い鉄の塊が、ゆっくりと前進している。


「……なっ……」


アステリアが、言葉を失った。


「な、な、なに、あれは……?」


「蒸気機関車です」


横でパナーさんが、できるだけ簡潔に説明を始める。


「鉄製の車体を、蒸気の力で動かしております。現在は試験走行と訓練を兼ねていまして」


「……鉄が、動く……?」


アステリアは、完全に立ち止まっていた。


「馬は?」


「使っていません」


「……正気か?」


その呟きは、たぶん褒め言葉だと思うことにした。


「後から合格した三人のうちの一人が、今は操作練習中ですね」


「ふむ……」


アステリアは、しばらく黙って走行を眺めていたが、やがて小さく息を吐いた。


「……これは」


地図を取り出す。


「さて、次は敷設隊」


地図と実際の距離感を頭の中で照らし合わせながら、歩く。


……思っていたより、遠い。


はぁ、はぁ……。


「……着いた」


敷設隊の作業現場に近づくと、まず目に入ったのは――


「……強化型荷馬車?」


線路の上を、改造された荷馬車が走っていた。

車輪はレールに噛み合う形で作られ、馬は軽やかにそれを引いている。


「ほぉ……」


メイヤが、感心したように唸る。


「蒸気機関に拘らず、こう来たか」


「ええ。材料運搬用ですね」


「馬の負担も少ないな。これは……賢い」


確かにそうだ。煙も音も少ない。整備も簡単。


順序が逆な気もするけど……結果オーライね。


私は、ふと考えた。……これ、領都の中でも使えない?


蒸気機関車ほど目立たないし、騒音も少ない。

循環路線みたいに使えば、人の移動も楽になる。


……後回し、後回し


今は、やることが多すぎる。


「……なるほどな」


アステリアが、線路と作業員たちを見渡しながら言った。


「あの動く鉄を更に動ける様に広げているのか?」


「そうですね」


アステリアは、ぶつぶつと何か言ってるが。

いちいち気にしていたら、仕事が捗らない。


アステリアは肩をすくめた。


鉄の道は、静かに、確実に広がっている。

誰にも気づかれない速度で――でも、後戻りできないほどに。


私は、線路の先を見つめながら、次の仕事を頭の中で整理し始めていた。


まだ、序盤。

これはまだ、“準備段階”に過ぎないのだから。

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