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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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視線の主と見せていい仕事

メイヤ…………


ミュネ…………


パナー…………


そして――


アステリア。


じーーーっ。


「……あのー。アステリアさん?」


私が声を掛けると、視線だけをこちらに向けたまま、短く答えが返ってきた。


「お前の仕事ぶりを観察してる」


「観察って……」


見られてる側の気持ち、少しは考えてほしい。

背中がむず痒いというか、集中力が削がれるというか。


「気にするな」


気にするに決まってるでしょ!!


心の中で叫びつつ、ため息を一つ。


……どうしてこうなった?


まさか、お母様の“後輩ちゃん”だとは夢にも思わなかった。

しかも、あの様子だと相当仲が良い。


――やりづらい。とても。


「ちょっと、見回りに行ってくるわ」


空気を変えたくてそう言うと、アステリアが即座に立ち上がった。


「じゃあ、俺も付いてくぞ」


「……」


ダメ、とは言えない。

けれど、正直困る。


見せちゃまずい所、結構あるのよね……


直接管理というほどではないけれど、今一番気になっているのは敷設隊の進捗。

書面での報告は上がってきているが、やはり現場は見ておきたい。


私はさりげなくパナーさんと目を合わせ、机の端に置いてあったメモ紙を滑らせた。


―― 見せちゃ不味い物、多いわよね?


パナーさんは一瞬だけ苦笑し、同じ紙に書き返してくる。


―― はい。そう思いますが


やっぱり。


「……お父様に確認してきて。どこまで見せていいか」


小声で告げると、パナーさんは頷き、静かに部屋を出ていった。


その背中を見送りながら、ふと別のことが頭をよぎる。


そういえば……


領主館を急に建て替える、という話。


まだ修繕すれば十分使える建物だ。

確かに最近、色々と“成果”は出ているけれど、それでも大工事をするほどだろうか。


小銭が入ったからって、無駄遣い……ではないわよね、多分?


考え込んでいると、ほどなくしてパナーさんが戻ってきた。


「確認が取れました」


「で?」


「仮とはいえ同盟国の領主です。全てを細かく見せて回る必要はありませんが――」


一拍置いて、続ける。


「メイヤ様ご自身が関わっている仕事であれば、見せても構わないとのことです」


「……なるほど」


つまり、“私の責任範囲”ならOK、ということか。


それなら……

私は小さく息を吐き、決断する。


「じゃあ、敷設隊の進捗を見に行きましょう」


アステリアが口元を少しだけ吊り上げた。


「ほう。面白そうじゃねぇか」


面白半分で来られると困るんだけど……。

そう思いつつも、もう後戻りはしない。


――さて。


見せられる仕事と、見せてはいけない未来。

その境界線を、上手く歩かないとね。


私は心の中でそう呟きながら、歩き出した。

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