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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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潮騒の向こう女領主は告げる

領主を先頭に、一行は海岸へと向かった。


近衛隊長、機構隊長二名とその部下がそれぞれ五名ほど。

さらに、リディアが率いる学生隊十五名。


――これが、この男爵領が即応で動かせる全戦力。


機動性と訓練だけは確かだが、数だけを見れば心許ない。

それでも、誰一人として足取りに迷いはなかった。


海岸に出ると、噂通り一隻の船が停泊していた。


帆は畳まれ、錨は下ろされている。

船籍は南ロウル領。


「……一隻だけ、か」


近衛隊長が低く呟く。


攻撃なら、この数では来ない。

だが逆に言えば――この地を「一隻で足りる」と見られている可能性もある。


貧乏男爵領。

外から見れば、制圧は容易と思われても不思議ではない。


判断が、難しい。


やがて、船の側面から小型船が降ろされ始めた。


「……五名ほどだな」


護衛と思しき四名は軽武装。

そして、その中央に立つ一人――女。


「まさか……」


砂浜に小型船が着く。


先に降り立った女は、黒に近い濃紺の外套を纏っていた。

長い髪が海風に揺れ、足取りに一切の迷いがない。


その立ち姿だけで分かる。


――この者が、主だ。


「南ロウル領領主、アステリア・ロウル」


女はそう名乗り、静かに一礼した。


「突然の訪問、驚かせてしまったことを詫びよう」


その声音には、媚びも威圧もない。

対等を前提とした、領主の声だった。


こちらも領主が一歩前に出る。


「我が名は――」


互いに名を告げ終え、短い沈黙が落ちた。


やがて、アステリアがわずかに目を細める。


「……王都のパーティーで、一度お会いしたな?」


「覚えておられるとは光栄だ。確かに、その場にいた」


「記憶に残っている。王都の喧騒の中で、妙に地に足の着いた目をしていた」


その言葉に、近衛隊の空気がわずかに緩む。


だが本題は、ここからだ。


「――それで」


領主が切り出す。


「今回の訪問目的を伺おう」


アステリアは即答しなかった。

一度、砂浜と、こちらの布陣をゆっくり見渡してから口を開く。


「状況確認、と言ったところだ」


「状況確認?」


「王都が揺れている。反乱の火が燻り、各地の判断が問われている」


彼女ははっきりと言った。


「我々、南ロウル領は中立を望む」


一瞬、空気が張り詰める。


「だが」


続けて、こちらを真っ直ぐに見る。


「貴領が、王国派であるならば――それを確認しておきたかった」


領主は一呼吸置いて答えた。


「我々は、王国派だ」


「そうか」


「こちらも一つお聞きするが?もし反王国派だとしても同じ答えをしていたのか?」


「は?どういう意味だ?」


互いに、探るような視線。


敵か、味方か。あるいは――今はどちらでもない存在か。


「我々は中立を保つと仰っていたが。もし私が貴女の様な、海を自由に動ける力がれば、王国派には王国派を話し、反王国派には反王国派と話、どちらにも武器食料を供給するが?これでも中立と言い切れる。どちらにも平等に渡してましたと」


アステリアはきっぱりと言う。


「我々はそんな事はしない!」


「では、どちらにも何も供給しないと?」


返事は無かった。


「この地が、どちらを向いているのか。それが分かれば十分だった」


「それだけのために、領主自らが?」


「それだけだからこそ、私が来た」


迷いのない答えだった。


「余計な誤解は、早めに潰すに限る」


波の音だけが、砂浜に残った。


王都の火種は、確実に――

この地の近くまで、迫ってきていた。

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