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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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沖合に現れた影

「――なっ!?敵襲!?」


思わず声が裏返った。


「メイヤ様、落ち着いて下さい」


機構隊の伝令役が、すぐに否定する。


「南のロウル領船籍と思われる船が、沖合に姿を見せたという報告です」


……南。


一瞬、地図が頭に浮かぶ。


「ロウル領……」


領境は、確かに接している。

だが、山と断崖、そして深い森に阻まれ、陸路での交流はほぼ皆無。

こちらからも、向こうからも、「行く理由がない」場所だった。


「南領……」


知らない。正直に言えば、ほとんど調べてすらいない。


「反乱に……加わっている可能性は?」


私の問いに、近衛の副官が首を横に振る。


「現時点では何とも言えません。敵と断定できる情報はありません」


……けれど。


胸の奥に、嫌な重みが残る。


「完全に盲点だった……」


道が無い。だから行かなかった。交流も無い。だから調べなかった。


でも――海は、道だ。


「船……」


呟いた言葉が、自分に刺さる。


「もっと早く、大型船とまでは言わなくても……せめて中型船が一隻でもあれば……」


悔しさが滲む。


「落ち着いて下さい、メイヤ様」


そう言われて、ようやく深呼吸した。


「……分かってる」


情報を整理する。


「ロウル領について、知っていることを」


「はい」


副官が淡々と説明を始める。


「ロウル領は王国に属しておりますが、中立政策を掲げています。独自の外交官を立て、王都からの公式な外交官は受け入れておりません」


……厄介ね。


「半島の南端に位置し、海上交通の要衝です。元は海賊をルーツとする一族が支配し、現在は海上貿易で成り立っています」


「他国との接点も?」


「勿論。王国以外とも取引があります」


「……今の領主は?」


「女領主です」


「となると……」


私は腕を組んだ。


「反乱側に加担している可能性も、完全には否定できない」


中立という言葉は、便利だ。そして同時に、危うい。


その時だった。


――パッパパパパァァァ!!


甲高く、はっきりとした音。


「……ラッパ?」


「この音は……」


近衛が目を見開く。


「リディア隊です」


「え?」


胸が、嫌な音を立てた。


「出るの?」


「緊急招集の合図です。完全武装の音ですね」


……早い。判断が、早すぎるくらいだ。


「誰の判断?」


「おそらく、領主様の命です」


私は唇を噛んだ。


「……まだ、敵だと決まったわけじゃないのに」


けれど。


もし敵だった場合。沖合から上陸されれば、こちらは後手に回る。


「……理屈では、出ない方が正しい」


でも。


「感情と危機管理は、別問題よね」


遠くで、鎧の擦れる音と、整列の号令が聞こえる。


お姉ちゃん……


完全武装の彼女の姿が浮かぶ。


「……」


私は静かに立ち上がった。


「残っている近衛と機構は何名?」


周囲が一瞬、凍りつく。


「メイヤ様!?」


「何名?残ってる?」


「恐らく6名は残っております」


「“状況確認”よ」


敵か味方か。それを見極める。


南のロウル領。中立を名乗る、その真意。


「――このタイミングで現れた理由」


それだけは、はっきりさせないと。


沖合に現れた、たった一隻の影が、この領地の未来を左右するかもしれないのだから。

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