甘さの正体
今日は、こっそり畑を見に行く予定だった。
……はず、だったのだけれど。
「メイヤ」
背後から聞き慣れた声。
「……お姉ちゃん?」
振り向いた瞬間、全てを悟った。
この人、こういう時の勘だけは異様に鋭い。
「今から畑でしょ?」
「……はい」
というわけで、結局パナーさんも合流し、三人で畑へ向かうことになった。
目的はテンテン菜。
最近、葉が枯れ始めてきたのが気になっていた。
「収穫時期がはっきり分からないのよね」
「だから様子見?」
「うん。葉が枯れ始めたのから、数個だけ」
掘り起こしてみると、地中から現れたのは――
ずんぐりした、カブのような根。
「これ、何なの?」
お姉ちゃんが首を傾げる。
私はニコッと笑うだけ。まだ成功してないしね。変に期待持たせて失敗してもね。。
(影の時に撒いてるのは見たことあるけど……まあ植物だし、大した影響はないでしょ)と心の中で思うパナーだった。
そのままテンテン菜を抱え、向かったのは調理場だった。
「ナルトさん、これお願い」
「前に言ってた野菜って、これか?」
ナルトさんはテンテン菜を手に取り、眉をひそめる。
「見たことねーな。スープか?」
「違います」
私は首を振った。
「まず、細かく千切りにして。鍋に水を張って、茹でます」
「ほう?」
「アクが凄いと思うので、アク取りをしっかり」
「おう」
しばらく煮込んだあと。
「……もう火は通ってるぞ?」
「まだです」
「まだ?」
「ゆっくり、です」
ナルトさんは不思議そうな顔をしながらも、火を弱めた。
十分に煮詰まったところで、私は言った。
「じゃあ、その千切り、全部取り除いてください」
「……は?」
「取り除いて。あ、それは家畜ちゃん達の餌へ」
「はあ!?」
ナルトさんが声を荒げる。
「餌を作るために、こんな手間かけさせるなよ!」
「ちっぃ、ちっぃ、ちっぃ」
私は指を振った。
「重要なのは、こっちです」
「……汁?」
鍋に残った液体を、小皿に分ける。
「皆さん、舐めてみてください」
半信半疑で口に含んだ瞬間――
「「「甘い!!」」」
三人の声が揃った。
「これ……砂糖か?」
ナルトさんが目を見開く。
「完全に同じではないけど、方向性は一緒です」
私は頷いた。
「ナルトさん。命令です」
「お、おう?」
「これを使って、甘〜いお菓子の開発を」
「……固形化できれば、砂糖だな?」
「そう」
私は静かに言った。
「超高級品の砂糖を手の届きやすい場所まで持って行きたいんです」
すぐにパナーさんへ指示を出す。
「テンテン菜の種は、普通に流通しています。地方では家畜の餌として育てられてるそうです」
「はい」
「この工程、直ちに登録を。それから、砂糖として固形化できたら――」
私は畑の広さを思い出しながら続けた。
「テンテン菜の種を発注。あの畑で約1キロ分」
「……かなりですね」
「使ってない畑、狭くて使いにくい畑、全部です。集計後、発注してください」
「了解しました!」
最後に、甘い液体を小分けにして配る。
「個人に分けて、どうぞ。お茶に入れてもいいですよ」
「……これは売れるわね」
お姉ちゃんが、ぽつりと呟いた。
私は畑の方角を思い浮かべる。
また一つ、世界が甘くなる!
気づけば、いつも通り――静かにでも確実に。




