止まらない現場、追いつかない理解
募集から数日。
結果として、蒸気機関車の運転訓練に集まったのは――合計6名。
全員、基準は問題なくクリア。
操作、基本ルール(まだ未確定な部分も多いけれど)、緊急時対応――
とにかく“走らせるために必要なこと”を詰め込みで訓練中だ。
……ほぼ身内3人ーズ、やっぱり強い。
覚えは早い。判断も速い。
さすがと言うべきか、日頃から現場と書類の両方を見ているだけある。
ただ――。残りの3人
この3人が、また別の意味で手強い。
余計な癖がない。聞いたことをそのまま吸収して、淡々と再現する。失敗しても引きずらない。
あれ……?主戦力、やっぱこっちになりそう……?
まあ、今は蒸気機関車も1台しかない。
これで十分。うん、十分よね。
「はぁ〜……」
私は思わずため息をついた。
メイヤ様の傍にいると、どうしても気疲れする。うちの機構隊長も、最近ずっとあんな調子だし……。
まあ、隊長がああなるのも、分からなくはないけど私は書類を抱え直した。
「さっさと各担当に渡して、戻らないと……」
まずは森。
木材関係の発注が、えらいことになっている。
――と、その時。
「……ん?」
森の入口付近。見慣れない“それ”が鎮座していた。
「……蒸気機関?なんで、ここに……?」
首を傾げていると、声が掛かる。
「あー、パナーさんか!」
振り向けば、学術員。
「うちの学術員がですね小型の蒸気機関を完成を聞きつけて、これを完成させたんですよ!“こっちにも使える”って話になりまして!」
嫌な予感がする。
「……それで?」
「名付けて――クレーン車!」
嫌な予感、的中。
「強化型馬車に蒸気機関を乗せまして!従来の滑車作業を、人力から蒸気機関に変更!ロープ巻き上げ式です!」
彼は胸を張った。
「作業効率、約40%改善の見込みです!」
「……なるほど……」
私は無言で、書類を置いた。
「……書類、ここに置いておきますね」
「はーい!」
……いいのかしら?効率が上がるのは、確かに良い。間違いなく、良い。
――でも。
現場が、止まる気配、まったく無いんだけど……
私は、少し遠くで動き続ける蒸気の音を聞きながら、そっと額を押さえた。
この領地。
もう、誰にも止められない段階に入りつつあるのかもしれない。




