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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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動く道のはじまり

「タルトさんを指揮官に。補佐は学術員を数名。敷設隊を編成します」


そう告げると空気がわずかに引き締まった。


技術が揃った。

材料も揃った。

――次は、それを“どこに通すか”。


つまり、道だ。


私は一枚の紙を取り出し、さらさらと書きつける。


敷設隊編成のお知らせ


設計経験者、土木・建築に特化した者を募集。

見習い、若干名可。


三日後、鍛冶工場前に集合。

食事付き。

期間:数か月程度(延長の可能性あり)


――メイヤ


「……こんな感じでいいかな?」


「十分すぎるくらいです」


即答したのは、横にいたパナーだった。


「じゃあ、パナーさん。この求人募集、領都に張り出しておいて」


「は、はい!すぐに行ってきます!」


少し早足で部屋を出ていく背中を見送りながら、私は小さく息をついた。


いよいよ、ね?


蒸気機関車を“走らせる”。

それは、ただの実験じゃない。

場所を決め、道を敷き、人を動かす――完全に実用の段階だ。


……とはいえ。


どこを走らせるか、まだ正式に出してないのよね。。


極秘というわけでもない。

隠すつもりもない。

だからこそ、この募集の仕方。


まずは“見せる”か?


三日後。


鍛冶工場前には、ざっと見て三十名ほどが集まっていた。


多いのか、少ないのか。

判断はまだつかない。


「はーい。それでは、移動します!」


私がそう言うと、ざわっとざわめきが走る。


「……移動?」


「どこへ?」


そんな声を背中で聞きながら、私は少しだけ前に出た。


「みなさん、注目してください」


視線が集まる。


「タルトさん、お願いします」


「お、おう……!」


どこか緊張した声とともに、あれが動き出した。


――蒸気機関車。


白い蒸気を吐きながら、金属の塊が、線路の上を走った。


ガタン、ゴトン。


その音に、誰かが息を呑む。


「……動いた?」


「な、なんだ、あれ……」


機関車は短い距離を往復し、ゆっくりと止まった。


しばし、沈黙。


全員が、ぽかんとしていた。


――当然だ。

この世界で初めて、“自分の足で走る鉄の塊”を見たのだから。


私はその沈黙を、はっきりとした声で切った。


「皆さんにお願いするのは、今この機関車が走った足元」


「この“レール”と呼ばれるものの設置です」


どよめきが広がる。


「細かい説明は、これから学術員さんが行います」


「これは、世界で初めての試みです」


私は一人一人の顔を見るように、ゆっくりと言葉を続けた。


「疑問、不安、問題点。全部、遠慮なく聞いてください。報告してください」


「正解は、まだありません」


少し間を置いて、微笑む。


「だからこそ――皆さんが“最初の正解”になります」


そして、一歩下がった。


「では、学術員さん。お願いします」


前に出た学術員の背中は、少し強張っていたが――その足取りは、確かだった。


世界で初めて、“動く道”を作る仕事。


その第一歩が、今、踏み出された。

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