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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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線を引くということ

うーん……。


メイヤは机に広げた地図を、じっと見下ろしていた。


鉄の生産量は、明らかに一段階上に入った。

紫石、そして蒸し焼きにした新燃料。

炉の火力は安定し、量も出る。


――つまり。


「そろそろ……どこに線路を引くか、よね」


ぽつりと呟く。


これまでは「作れるか」「動くか」「燃えるか」だった。


だが今は違う。


“どこへ繋ぐか”。


それを考える段階に来てしまった。


地図の上に、指を滑らせる。


「まずは……燃料よね」


紫石の採掘場。

ここは最優先だ。燃料がなければ、蒸気機関車も炉も止まる。


次に――


「砂鉄の採掘場……」


鉄を作るための鉄。

運びやすくなれば、生産効率は跳ね上がる。


その先は――


「……森、か」


木材。

建材。

そして、人が集まりやすい場所。


順番としては、間違っていない。

理屈では、そうだ。


でも。


メイヤは眉を寄せる。


「この地図……高低差が分からないわね」


線路は、魔法じゃない。

傾斜がきつければ、速度は落ちる。

下手をすれば、登れない。


カーブと同じだ。

数字と理屈だけでは決められない。


「これは……」


メイヤは小さく息を吐いた。


「先に、現地確認が必要ね」


机に肘をつき、指を組む。


問題は、そこからだった。


「……工作隊、もう解散しちゃったのよね」


城壁の補修、建物の基礎工事、道路整備。

それぞれの現場に散っていった。


新しく――“線路を敷くためだけの隊”。


それを作らなければならない。


「敷設隊、か……」


名前だけは簡単だ。

でも、実態は重い。


測量。整地。橋。留金。安全確認。


しかも、これまでにない規模。


「……一気に世界が広がりすぎよ」


思わず苦笑する。


数ヶ月前までは、炉一つ動けば喜んでいたのに。今は、地図の上に線を引こうとしている。


――線を引く、ということ。


それは、物を運ぶ道を決めるということ。

人の流れを決めるということ。

そして――この領地の未来を、固定するということ。


「……軽く決めちゃ、ダメね」


メイヤは地図を丁寧に畳んだ。


まずは、見る。歩く。感じる。

机上ではなく、大地の上で。


「よし」


小さく頷く。


「次は……外ね」


鉄は、もう十分に応えてくれている。

次に試されるのは――

それを、どう使うか。


線を引く覚悟、だった。

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