剣と朝日のあいだで
ん〜っ!
リディアは大きく伸びをして、ベッドから起き上がった。
身体は軽い。昨日の訓練の疲れも、もう残っていない。
「さて。顔洗って、朝食!」
廊下を歩き、食堂へ向かう途中で声をかける。
「おはよー!ミュネ!」
「おはようございます、リディア様。すぐ朝食の準備をいたしますね」
「ありがと!メイヤは?」
「まだお休みです。昨夜も遅くまで書類を……」
「もう!まったく!」
呆れたように笑いながらも、どこか誇らしげだった。
あれだけの事を動かしているのだ。無理もない。
朝食を手早く済ませ、外套を羽織る。
「よし!訓練行ってくる!」
訓練場では、学生隊がすでに集まり始めていた。
「さあ!今日は二手に分かれて模擬戦よ!」
「おう!!」
木剣が打ち合わされ、乾いた音が響く。
カン!カン!
「ほら、そこ!脇が甘い!」
「うっ!」
動きながら、全体を見渡す。
体力も判断も、確実に底上げされてきている。
その時――
「フォフォ。元気にやっておるな?」
「ロットさん!おはよう!」
現れたのは、木工師のロットだった。手には、大きな布包み。
「今日はの。お前さん達に贈り物じゃ」
「プレゼント?」
布を解くと、中から現れたのは鎧だった。
「鎧!?」
「メイヤが“拾ってきた”装備をな、少し手直しした。成長しても使えるよう、調整できるようにしてある」
「でもロットさん、木工師でしょ?」
「フォフォフォ。作るのが好きなだけじゃ。使われん物ほど、哀れなものはないからな」
一瞬の沈黙の後、歓声が上がった。
「かっこいい!!」
「軽い!」
「動きやすいぞ!」
リディアは頷いた。
「みんな、ちゃんとお礼を!」
「ありがとうございます!!」
ロットは満足そうに目を細める。
「うむ。これで怪我も減るじゃろ」
午前の訓練を終え、昼食を挟んでから、リディアは号令をかけた。
「午後は各自、領内巡回!住民の様子を見て、問題があれば報告!終わったら集合して解散よ!」
「了解!」
剣を持つ手は、戦うためだけではない。
守るため、支えるため、そして――日常を回すためにある。
リディアは、青空の下で小さく息を吸った。
……悪くないな。この毎日。
遠くで、工場の音が聞こえる。
領地は今日も、生きている。




