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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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領主家、黒字転換とエルフ家庭教師

領主執務室。積み上がった帳簿を前に、父は震えていた。


「こ、これは……本当にうちの領地の数字なのか……?」


鉛筆とゴアゴア紙――。

原材料のほとんどは森と湿地から拾ってくる“タダ同然”の資源。

確かに人手こそ要るが、それを差し引いても粗利が異常なほど高い。

万年赤字が当たり前、補填続きだった領地経営は、メイヤの発明のおかげで、ついに真っ黒黒字へと転換を果たした。


父は震える手で新しい帳簿を撫でる。


「ああ……黒い……黒いぞ……。まさか我が領が、こんな数字を見る日が来ようとは……」


横で母もほくほく顔。


「今月からようやく“普通のご飯”が食べられますね。あら、あなた、肩の力が抜けてるわよ」


「抜けるに決まっておろう! 全てはメイヤのお陰だ……!」


そんな夫婦の幸福オーラ溢れる空間に、メイヤが勢いよく扉を開けて飛び込んできた。


「お父さま!! リディア姉さんを一発卒業させたいの!!」


二人は同時に固まった。

黒字の余韻が吹き飛んだ瞬間でもある。


「い、いきなり何を……?」


「優秀な家庭教師を雇いたいの! リディア姉さん、本当は学園行きたくないんだもん!」


父は驚きつつも――メイヤを見ると、どうしても売上の数字が脳裏をよぎる。


(……ここまで来られたのは、確かにあの娘の功績だし……)


母も苦笑しながら、夫の袖をつつく。


「あなた、あの子が言うなら聞いてみてもいいのでは?」


「う、うむ……!」


実のところ、父も母も今の王都学園には思うところがあった。

貴族社会の派閥だの、成績の裏取引だの、聞こえてくる噂も多い。

リディアの性格からして合うとは思えない――それは親として共通の心配だった。


「……実は、心当たりはある。年寄りだが、腕は本物の教師が一人おってな」


「え、年寄り……?」


「ただし条件があってな。教えるのはリディアだけでなく、メイヤ、お前も受験することだそうだ」


「えっ!? わ、わたしも!?」


突然の展開にメイヤは飛び上がった。

受験資格年齢に制限はない。

領主家の娘として、知識はあって困らない。

それに――父の“貧乏性”が完全に抜けていないのも事実だった。


「二人まとめて教えてもらえるなら、お得であろう!」


「お父さま……!」


こうして家庭教師招へいは即決された。


数日後。


「今日からお世話になります」


領主館の玄関に現れた人物を見て、リディアとメイヤは同時に息を呑んだ。


――金糸の髪が腰まで流れ、翡翠色の瞳。

白い肌に、森の精霊を思わせる優雅な立ち姿。

年寄りだど聞いていたはずのその人物は、どう見ても“若くて美しい女性”だった。


「え……エルフ……?」


「うそ、若っ!?」


女性は微笑み、軽くスカートの裾を摘んで礼をした。


「わたくし、エルフの家庭教師・セレスティアと申します。年齢は……まあ、気にしてはいけませんわ」


エルフの年齢は人族とは大きく違う。

年寄りでも若く見える、という噂は知っていたが――それにしても美しすぎる。


「さて、お二人。明日から地獄……いえ、楽しい授業を始めますわね?」


「い、今地獄って言ったよね!?」


「気のせいじゃないかしら。ふふっ」


こうして、リディアとメイヤの“卒業1発合格を目指す戦い”が始まるのだった。

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