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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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動き出す実感

本日の予定は、午前と午後できっちり分かれている。


午前中は蒸気機関車の試験路線での運転確認。

午後からは、U字溝コンクリとその蓋の完成確認。


パナーさんが整えてくれた予定表を眺めながら、私は大きく一つ伸びをした。


「はーい!」


返事をして間もなく、控えめなノック。


「メイヤ様、お茶をお持ちしました」


「ありがとう、ミュネ!」


湯気の立つカップを両手で包み、ゆっくり一口。


「……ふぅ〜。朝のお茶は最高ね」


「そう言っていただけると嬉しいです」


さて。

英気も養ったことだし、行きますか。



工房の外に出た瞬間、耳に届く音で分かる。


「おー、既に火が入ってるわね」


蒸気の吐き出す音が、規則正しく響いている。


「やっと来たか!メイヤちゃん!」


タルトさんが、煤で少し汚れた顔のまま大きく手を振った。


「どう?」


「そうだな……」


タルトさんは機関車の横を軽く叩く。


「お前が言ってた“貨車”ってやつ、丸太用と砂鉄用で各三両ずつ造ったぞ」


「流石!」


「これを聞いた時な、ようやく俺にもピンと来た」


ニヤリと笑う。


「森と砂鉄採掘場に線路を引いて、これで運ばせるんだろ?」


「正解。そうすれば馬や荷馬車に余裕が出る」


「だろうなぁ!」


私は機関車を改めて見上げた。


正直、洗練された見た目ではない。

むき出しで、少し無骨で、どこか可愛らしい。


「本物の電車を知ってる身としては、遊園地の乗り物サイズだけど……」


この世界では、十分すぎるほどの革命だ。


「よし、試運転行くぞ!」



しゅっ。しゅっ。しゅっ。


蒸気を吐きながら、機関車がゆっくりと動き出す。


「……動いた!」


レールを踏みしめる音が、思った以上に安定している。


「問題なさそうね……速度は……」


感覚的に、時速30〜40キロといったところ。


「次は減速……」


レバーが操作され、機関車は滑らかに減速し――


「止まった!」


「今のところ異常なしだ!」


「良いわね」


私は即座に指示を出す。


「じゃあ、次は楕円と8の字をぐるぐる。それから貨車に実際に荷物を積んで同じテストを。問題点を洗い出して、修正お願いね!」


「任された!」


タルトさんの声は、完全に職人のそれだった。


――うん。

良い流れ。



午後は学術員の区画へ。


「こちらが、U字溝と蓋の完成品です」


並べられた試作品を一つずつ確認する。


配合の違い。

鉄線を入れた場合の強度。

作業性と成形のしやすさ。


説明を聞きながら、私自身も軽く叩いたり、持ち上げたり。


「……いいわね。これなら温泉計画も一気に進む」


「はい。排水溝や建築基礎への応用も可能かと」


「素晴らしいわ」


そして、ふと思い出す。


「そういえば……名も無い石の件は?」


「まだ最終報告は……」


「なら、ロウガさんの所へ行きましょう」



「おう!メイヤちゃんか」


ロウガさんは、相変わらず気軽な様子だ。


「例の石の件な。機構に登録しといてやったぞ」


「早い!」


「向こうにも有効性は伝わるはずだ」


少し間を置いて、続ける。


「でな。一つ提案なんだが……」


「何?」


「水を混ぜる前の加工状態で輸入しても良いんだろ?」


「あ……確かに」


「カサが減るから輸送コストも下がるし、輸送量も増やせる」


「なるほど……」


何でもかんでも領内で抱え込む必要はない。


「それに向こうで勝手に使い始めりゃ、使用料も入る」


「……当面は気づかれなさそうだけどね」


「だろうな」


私たちは顔を見合わせ、苦笑した。



蒸気機関車。

コンクリ。

物流と建築。


どれも一つ一つは地味だけど――


確実に、領地が“前に進んでいる”実感がある。


私は静かに息を吐いた。


「……忙しいけど、悪くないわね」


未来が、ちゃんと形になり始めているのだから。

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