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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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泥だらけのニ姉妹と沼地開拓作戦

「……メイヤ。最近、メイヤとミュネ……動きが怪しい」


朝食後、長女リディアが椅子から身を乗り出し、じぃっと私を見つめてきた。


――やばい。気づかれた。


「な、何のことかな〜?」


「誤魔化しても無駄。昨日もミュネとコソコソ外に出たでしょう? 私も行く」


逃げ道はなかった。

こうして、湿地へ行く秘密計画に……リディアが正式加入することになったのだ。


◇◆◇


「うわ……水っぽい……」


屋敷から少し南、村はずれにぽっかりと広がる湿地。

足を踏み入れるたび、ぬちゃっ……と控えめに心を折る音がする。


でも、八十八穀を育てるならきっとここだ。

前世で田んぼを“体験”したのはほんの数回。でも苗づくりや稲刈りはちゃんと覚えている。


「さて!! 開拓するわよ!」


「どうやって……?」


「とりあえず、掘って、均して、水の流れ作って……」


「力仕事、全部……わたしだよね……?」


と、ミュネが遠い目をする。


「ミュネならできる! 頼れる私たちの怪力担当なんだから!」


「褒められてる……のかな……?」


そんな軽口を交えながら、三人で開拓作業が始まった。


リディアは鍬を振り上げるたび


「うそでしょ!? 重っ!」


と悲鳴をあげ、私は泥に足を取られて何度も前のめりに。

ミュネだけは慣れた動作で土を掘り返していく。頼もしすぎる。


三人が泥だらけで作業していると――

いつの間にか、村の農家たちがずらり。遠くから静かにこちらを見ていた。


(あれは……なんで見てるの!?)


視線が痛い。

“領主様のご令嬢2人が泥遊び……いや、開拓……?”そんな空気が漂っている。


「ちょっとメイヤ様、本当に……やるんですか?」


最初に声をかけてきた老人は、鍬を手に近づいてきた。

目は不安と驚きが半々。


「もちろん。八十八穀を育てるためよ。湿地がいいと思って」


と言うと、老人はしばらく黙り――ふいに笑った。


「……見てられません。手伝わせてください」


その一言を皮切りに、ポツポツと大人たちが集まり、鍬を振るいはじめた。

くわっ、ずしん、ざくっ。

慣れた大人たちの動きは速い。

気付けば、ぬかるんだ湿地の一角――半反ほどが綺麗に均されていた。


「すごい……! こんなに……!」


「大人の力ってすごい……」


私とリディアは同時につぶやいた。


◇◆◇


「とりあえず、ここに苗床を作るからね!」


私は屋敷で育てていた八十八穀の苗を土に優しく押し込みながら言った。


湿地の土は柔らかく、苗はすっと根を受け入れる。

いける……これはいける!


リディアは泥だらけの顔で笑う。

ミュネは疲れたようで満足そう。


こうして沼地の開拓は、村の協力もあって無事終了した。


◇◆◇


夕刻。

泥まみれで帰ってきた私たち3人を目にした父は、しばらく口を開けたままだった。


「……メ、メイヤ。ど、どこへ行っていたんだ?」


声は震え、こめかみには青筋。


「湿地の開拓に行ってました!」


と爽やかに言ったら――


「き、きっ、きかぁぁぁーっ……!!」


父は頭を抱え込んだ。


横では執事ガルドが静かにお辞儀をした。


「旦那様。メイヤ様の行動は一見無茶に見えますが……もし、あの沼地で八十八穀が育つとなれば――」


「育つとなれば……?」


ガルドは、ゆっくり目を細め、静かに言った。


「――“無価値だった沼地”が、一気に領地の宝に変わります」


父の動きが止まる。


「……宝、だと?」


「はい。食糧問題の改善だけでなく、村の財産にもなりましょう。その可能性を見つけたのは……メイヤ様です。」


沈黙。

父は私たちの方を見た。泥だらけのリディア、無言で立つミュネ、そして胸を張る私。


「……まったく……お前は……」


父は大きくため息をつき――

そして少しだけ、笑った。


「……怪我だけはするな」


◇◆◇


こうして、ニ姉妹と村人総出の湿地開拓作戦は幕を閉じた。

次は……この八十八穀を立派に育て上げる番だ。

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