居場所をつくるという仕事
目を覚ましたのは、昼を少し過ぎた頃だった。
久しぶりに、何も考えずに眠った気がする。
「……寝過ぎた?」
そう思ったけれど、身体は驚くほど軽い。頭も冴えている。
やっぱり、この身体に引っ張られているのだろう。若さというのは、こうも露骨に性能差が出るものなのね。
ベッドを抜け出し、簡単に身支度を整える。
「さて……現実に戻りましょうか」
まず確認すべきは、難民の状況だ。
感情論ではなく、数字と配置。ここを曖昧にすると、善意は必ず破綻する。
机に広げられた名簿に目を通す。
「……ふむ」
年齢、家族構成、出身地、そして元の職業。
当然と言えば当然だが、職種は実にバラバラだった。
「元農家……この人数なら、余っている開墾地に割り当て可能ね」
土地はある。問題は人手だった。むしろ歓迎すべき人材だ。
「元商人、元職人……」
こちらは街区に空いている区画を思い浮かべる。
同業が被らないよう調整すれば、すぐにでも店は開ける。
「元の仕事に近い形で就ける人は、極力そうする。無理な人には別の仕事を紹介……」
独り言のように呟きながら、頭の中で配置図が出来上がっていく。
「お子さんがいる家庭は……全員、学校行き。これは義務」
情けは必要だが、妥協はしない。
教育を途切れさせれば、十年後に必ず歪みが出る。
「お年寄りは……まずは話を聞くところからね。出来ることだけ、無理のない範囲で」
ここまで来て、私は一度手を止めた。
「……問題は、ここ」
名簿の最後。
両親を失い、身寄りのない子供たち。
数は多くない。けれど、一番難しい。
「カウンセラー……居れば理想だけど」
現実は甘くない。
専門職は簡単に湧いてこない。
「なら――」
思考を切り替える。
「寮を作る。集団生活。大人の目が常に届く環境」
学校の近く。通学距離は短く。
年長者には年少者の面倒を見てもらう役割を与える。
「役割があれば、人は自分を保てる」
救うのではない。
“居場所を用意する”だけだ。
名簿を閉じ、深く息を吐く。
「……ほんと、人手不足ってレベルじゃないわね」
でも、不思議と悲観はしていなかった。
仕事がある。役割がある。
それはつまり、この領地がまだ成長途中だという証拠でもある。
「猫の手も借りたいくらい、って思ってたけど……」
ふっと笑う。
「借りるんじゃない。迎え入れる、ね」
机の上に、新しい紙を置いた。
次に書くのは、計画書だ。
この領地に来た人たちが、
“難民”ではなく、“住民”になるための。
――忙しくなるわよ。でも、それでいい。
これは、戦後処理じゃない。未来づくりなんだから。




