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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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仮名盗賊団と帰還命令

「……ふぅ」


夜明け前。

ようやく拠点へ戻ってきた強化型荷馬車の列を見て、メイヤは小さく息を吐いた。


見た目はいつも通りの仮設陣地。

だが、その中身は先ほどまでとはまるで違う。


――仮名盗賊団、無事帰宅。


誰にもそうは呼ばせないが、やっている事は完全にそれだった。


「さて、と」


メイヤは一度、パンッと手を叩いた。


「お姉ちゃん!」


「はーい?」


すぐにリディアが振り向く。

顔には疲労がにじんでいるが、目はまだしっかりしている。


「学生隊を二つに分けて。もう限界な人達と、まだ動ける人達」


「了解。顔色見ればすぐ分かるわね」


「疲れ切ってる人達は、護衛として領地に戻して」


「護衛?」


「そう。その学生さん達には――」


メイヤは声を落とし、短く指示を出す。


「例の荷物を領主の元へ引き渡す極秘任務って伝えて」


一瞬、リディアの目が見開かれたが、すぐに頷いた。


「……りょ!」


軽い返事だが、そこに冗談はなかった。


続けてメイヤは振り返る。


「近衛隊長さん、機構隊長さん」


「おう」「なんだ?」


「お二人の隊からも、それぞれ部下を二名ずつ出して下さい」


「護衛か?」


「ええ。同じく領内へ一時帰還です」


即座に判断が下される。


「手配する」

「問題ない」


メイヤは小さく頷き、さらに続けた。


「その帰還部隊に――ガリオン領からの避難民も一緒に送ります」


その言葉に、近衛隊長が一瞬だけ表情を引き締めた。


「……いい判断だ」


「領内は今、比較的安全です。ここに留める理由はありません」


メイヤは周囲を見渡す。


強化型荷馬車。

疲れ切った学生達。

護衛に回される兵。

そして、まだ気力を残している者達。


「残りの部隊は、ここで暫く様子見」


「次の動き次第、って事か」


「ええ。エドラン歩兵隊の到着、反乱軍残党の動き、王都の反応。全部揃ってから、次を決めます」


その声は、迷いなく静かだった。


「以上!」


短い号令。


だが、それだけで場の空気が切り替わる。


疲労に引きずられていた人間達が、「今、自分が何をすべきか」を理解し、動き出す。


リディアは学生隊の方へ駆け出していった。


「はいはい、聞いて聞いてー!まずは顔色チェックよー!」


その声に、少しだけ笑いが戻る。


近衛隊長はメイヤの横に立ち、ぽつりと呟いた。


「……嬢ちゃん」


「何です?」


「完全に、指揮官の顔だな」


メイヤは一瞬だけ考え、肩をすくめた。


「そうしないと、皆が倒れちゃうもの」


荷馬車の影で、夜が明け始めていた。


戦は一区切りついた。

だが、戦後処理と次の波は、もうすぐそこまで来ている。


――仮名盗賊団の仕事は、まだ終わらない。

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