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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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ホクホク芋と八十八穀のための水辺探し

ホクホク芋の導入が決まり、メイヤは早速、協力してくれる農家たちの畑へ向かった。


今日の目的は二つ。


一つ目、ホクホク芋の“苗の取り方”を教えること。

二つ目、八十八穀を育てるための、水辺となる土地の下見。


その道すがら、ミュネが感心したようにつぶやいた。


「メイヤ様……本当に作物に詳しいのですね」


「え? あっ、ええと……本で読んだのよ!」


苦笑しながら歩くメイヤの胸は、期待でわずかに弾んでいた。


(ここから先、領地が大きく変わり始める……!)


──そして最初の農家に到着する。


■ ホクホク芋の“苗づくり”講習会!


「メイヤ様、本当にこの芋を植えればいいんですか?」


農家たちは、蒸した芋を食べた時の衝撃をまだ忘れていないらしく、目がキラキラしている。


「もちろん! でも芋を丸ごと植えるわけじゃないの。今日は“苗作り”からやります!」


畑の脇に設置された台の上に、ホクホク芋を並べる。

その横には、メイヤが前日に準備した“芽出し済みの芋”も用意されていた。


芋の一部から、にょきっとツル状の芽が伸びている。


「こ、これは……?」


「この伸びたツルを、畑に植えて苗にするのよ」


農家全員が「??」という顔をした。


メイヤは芋を手に取り、説明を続ける。


「芋そのものは“母体”みたいなもの。ここから伸びたツルを切って、土に挿して……」


すっと、伸びたツルを根本から切り取る。


ひゅん、と空気を切る音に、農民たちがのけぞる。


「メ、メイヤ様っ!? 芋を……切り捨てた……!」


「大丈夫大丈夫! これで“苗”ができるのよ」


切り取ったツルをそのまま地面の柔らかい区画に挿し、軽く土をかぶせる。


「はい、これで苗植え完了!」


凍りつく農民たち。


ひとりが恐る恐る手を挙げた。


「こ、こんなので本当に……芽が出るんですか……?」


「出るわ! 根っこもすぐ生えるし、ホクホク芋は生命力が強いの。むしろ芋そのものを植えるより、こうしたほうが増えるし効率が良いのよ!」


「……なんじゃそりゃぁ……」


ついに誰かが呟いた。


それを皮切りに、


「芋を切って挿すだけで土に根付くって、本当なのか……?」


「魔法か……?」


「いや、メイヤ様の知識が魔法なのでは?」


とざわざわと畑が揺れた。


「ふふ、大丈夫よ! ちゃんと育つから!」


メイヤは自信満々に笑い、農家たちは半信半疑ながらも、次々にツルを切って植えていった。


実際にやってみると簡単で、手も早い。


「……なるほど……これは確かに効率的だ」


「芋一個から苗がたくさん取れる……すげえ……」


メイヤは胸を張る。


(よしっ、ホクホク芋は“みんなで育てる体制”が整った!)


■ 八十八穀のための“水辺探し”


ホクホク芋の講習を終えたメイヤは、次の目的地へ向かう。


「八十八穀は普通の畑じゃ難しいから……水を使う畑が必要なのよね」


「はい。近くに小川はありますが、田のような場所は……」


「湿地みたいなところは?」


「……ありますが……」


ミュネが少し歯切れ悪く答える。


不思議に思いながらついていくと──


領地の外れに、小さな湿地帯が広がっていた。


草が生い茂り、地面はしっとり湿っている。

水も染み出しており、八十八穀にはちょうどよさそうだ。


「ここ……! ここなら出来そう!」


メイヤはぱっと顔を輝かせた。


すぐ近くに住む家へ向かい、土地を使っていいか確認する。


ピンポーン(的なノック)。


「す、すいません! この湿地を、少しお借りしてもいいですか?」


家の主は驚いたように目を白黒させた。


「え、えぇ……!? ど、どうぞどうぞ!!」


やけに慌てている。


(そんなに驚かなくても……)


と首を傾げていると、ミュネが隣でぼそっと呟いた。


「……メイヤ様。領地の土地はすべて“領主様”のものです」


「えっ!? そうなの?」


「はい。ですので“使っていいですか”と聞かれると……住民は断れません」


「…………」


ようやくメイヤは気づいた。


(そ、そうか……! 私、“領主の娘”だった……!!)


家の主は恐縮してペコペコしている。


「あ、あの……ほんの少しだけです! 本当に少し! 迷惑はかけませんから!」


メイヤが慌てて手を振ると、ミュネが小声でため息をついた。


「……そもそも御領主様のご家族が使いたいと言えば、誰も逆らえません」


「そういうの、もっと早く言ってよ~~!」


ミュネは困ったように眉を寄せた。


「メイヤ様が“領民に優しい言い方をする”から……言いづらくて……」


「うぅ……優しくしてるつもりはないのに……!」


苦笑しつつ、湿地の視察を続ける。


長さ、幅、水の深さ、近くの流れ。

小川からの水の引き込みも、工夫すればできそうだ。


(うん……ここなら、八十八穀の“試験栽培”にはちょうどいい!)


ミュネも頷いた。


「ここなら、領主館からも近く、管理がしやすいですね」


「よし、決まり! ここを“実験田んぼ”にしましょう!」


■ 新しい作物、領地に根付くか?


ホクホク芋は苗の大量生産が可能。

農家の心もつかんだ。


八十八穀は、まずはメイヤが主導で小規模栽培。

成功すれば農村全体に広げる計画だ。


「ふふ……なんだか、農業改革みたいになってきたわね!」


ミュネは笑いながら首をかしげる。


「メイヤ様がやっているのは、もはや“領地改革”では?」


「そ、そう? まだ始まったばかりよ!」


メイヤは遠く湿地を眺めながら、小さく拳を握った。


(ホクホク芋で領民の生活を安定させて、八十八穀で食文化を豊かにして……絶対に成功させるんだから!)


こうして、領地に新しい未来を呼び込む二つの作物が、静かに芽吹き始めたのだった。

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