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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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戦後会談――ガリオン領の行方

ガリオン領の旧領主館、その一室が臨時の会談場として使われていた。


かつては贅を凝らしたであろう部屋も、今は家具の多くが持ち去られ、壁には戦の爪痕が残っている。だが不思議と、空気は落ち着いていた。


その席に着くのは、エドラン領主とメイヤ。


双方とも、この領地を完全に把握しているとは言い難い。だが、出撃時に掲げた目標――

「反乱軍残党の排除」「一般市民の保護」「治安の早期回復」

この三点については、明確に共有されていた。


「現状だが……」


エドラン領主が地図を指し示す。


「我々連合軍が展開した地域では、治安は急速に安定してきている。略奪は止まり、徴発兵も統制下に置けた」


「ええ。こちらの報告でも同様です」


メイヤは静かに頷いた。


エドラン軍は、散発的に抵抗していた徴発兵を次々と吸収し、即席ながらも治安維持部隊として再編していた。

経験と装備の差は歴然だったが、背後に「守ってくれる軍」がいるという事実だけで、民心は大きく変わる。


だが――


「問題は、本隊だな」


エドラン領主が溜息をつく。


「歩兵隊の到着までは、まだ時間がかかる。完全平定には程遠い」


「はい。こちらも同意見です」


小競り合いは、まだ各地で続いている。

反乱軍の残党、略奪を続ける貴族系兵、命令系統を失った半武装集団――

数は少なくとも、放置すれば再び混乱を招く。


そこで、メイヤは一つの決断を口にした。


「私の領地から、強化型荷馬車を臨時に全て徴発します」


その言葉に、エドラン領主が眉を上げる。


「……全て、だと?」


「はい。輸送用です。あなた方の歩兵隊が到着次第、即座にガリオン領内へ人員と物資を送り込めるように」


地図の上で、メイヤは輸送路をなぞった。


「補給物資の輸送、そして輸送路の警備は、こちらが担当します。治安が安定するまで、最低限は」


一瞬の沈黙。


それは、男爵領が背負うには明らかに過大な負担だった。


「……かなり無理をしているな」


「承知の上です」


メイヤは淡々と答える。


「ですが、ここで中途半端に引けば、もっと多くの犠牲が出ます」


エドラン領主は、しばらく黙って彼女を見つめていた。


「……もう一つ、提案があります」


メイヤは続けた。


「ガリオン領民のうち、希望者をフェルナード領で受け入れます。仮でも構いません。住居と仕事を用意します」


「……それは」


「この地の復興には時間がかかる。その間に、行き場を失う人を減らしたい」


エドラン領主は、深く息を吐いた。


「……分かった。君の提案、全て受けよう」


その言葉は重かった。

それは同時に、「この男爵領を一時的な駒として使わない」という意思表示でもあった。


会談は、静かに終わった。


その後、メイヤたちは短すぎる休息に入った。


仮設の天幕。簡素な寝台。


戦場の只中で眠るには、十分すぎるほど静かだった。


目を閉じたメイヤの寝顔を確認してから、隊長たちは隣の天幕で打ち合わせを始める。


「……これぐらいで、良いはずだよな?」


機構隊長が腕を組む。


「まあなぁ……」


近衛隊長も頷く。


「正直、これでもうちの戦力からすれば、かなりの背伸びだ。長引けば、破綻するのはこっちだ」


「ええ」


近衛隊長も同意する。


「エドラン領主も、その辺は理解しているだろう。何せ、戦力差は……」


「十倍どころじゃないかもな」


機構隊長が苦笑する。


「それでも、これだけ人と物を動かしてる。金がいくら掛かってる事やら……」


「あ〜……その話なんだが」


機構隊長が、ふと思い出したように言った。


「うちの密偵が、面白いもんを見つけた」


近衛隊長が視線を向ける。


「……ほう?」


「詳しくは、次に話すが……」


機構隊長は、少しだけ声を落とした。


「どうも王都の連中、まだ裏で動いてるらしい」


天幕の外では、焚き火が静かに揺れていた。


戦は一段落した――

だが、終わりには、まだ程遠い。

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