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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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拾い物が多すぎる日

鹵獲品が届いた。


数えてみれば、荷馬車が十四台。それを引いていた馬に加え、逃げ出して周囲をうろついていた馬まで回収した結果、合計で五十頭近い。


「……大漁ね」


思わずそう呟いてしまうほどだった。


しかも質がいい。全部、もともと荷馬車を引いていた馬だ。軍馬ほどの瞬発力はないが、持久力と従順さは申し分ない。

荷馬車は到着と同時に、即座に改造に回した。車軸の補強、板ばねの設置に荷台の高さ調整、簡易装甲。今のうちにできることは全てやる。


「荷物の中身は?」


「ほとんど糧食です」


報告を受け、内心で小さくガッツポーズをした。

乾燥穀物、干し肉、塩、豆類。量も十分で、この分だけでも数十日はうちの部隊を賄える。


敵が置いていった物だが、こちらからすればありがたい話だ。


「エドランの歩兵隊は?」


「到着まで、あと十日前後とのことです」


十日。


短いようで長い。長いようで、戦況次第では一瞬でもある。


私は地図の前に立ち、指で線をなぞりながら考える。


今、こちらに居る戦力は――

近衛、機構、学生を合わせて約六十名。数は少ないが、少なくとも“組織として動く”ことができる。

建築隊は戦闘要員ではないが、防備構築と陣地維持では欠かせない存在だ。


問題は志願兵。


彼らは勇敢だし、今回もよく動いてくれた。

でも、組織ではない。あくまで個の集合体だ。ここから先、機動戦や連携を求める局面では足を引っ張る可能性が高い。


「……連れて行くのは危険ね」


決断は早い方がいい。


志願兵は領内に残す。臨時警備隊として再編し、防衛と治安維持に専念してもらう。

前線に出す戦力ではないが、背後を任せるには十分だ。


「問題は……」


視線が、馬のいる方向へ向く。


五十頭。


馬。

荷馬車。

補給。


「……騎兵、諦めきれないのよね」


自分でも苦笑する。

軍馬は高価で、調達も難しい。今まで手を出せなかった理由は山ほどある。


でも、今は違う。


「近衛と機構の人達は、馬の扱いができるわよね?」


「ああ。最低限はな」


機構隊長が頷く。


「なら、学生達に慣れてもらいましょう」


一瞬、場が静まった。


「いきなり騎兵として使うわけじゃないわ。世話、騎乗、移動。まずは“馬と一緒に動く”ことを覚えてもらう」


馬に乗れるだけで、移動距離も選択肢も一気に広がる。

偵察、連絡、補給。全部が変わる。


「歩兵が来るまでの十日間、やる事は多いわ」


私は地図を畳み、顔を上げた。


「戦いは一段落。でも、準備はこれからが本番よ」


火縄銃を使わずに済んだのは幸運だった。

でも、それは“次”があるという意味でもある。


切り札は温存できた。

なら、その間に――さらに切り札を増やすだけ。


静かな陣地の中で、歯車は確実に回り始めていた。

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