ホクホク芋と八十八穀、領地改革の第一歩!
ロウガが去ったあと、メイヤはテーブルの上に並べられた二つの袋――ホクホク芋とシラナリ穀を見つめ、腕を組んで唸っていた。
(これは……革命の予感しかしない!)
まずはホクホク芋。
前世で散々育てた“さつまいも”に酷似している。あれなら家庭菜園レベルでも簡単に育つ。種芋さえあれば、芽出ししてツルを伸ばし、苗は無限に増やせる。
痩せた土地でも大丈夫。味も甘く、保存も効く。この世界の作物事情を考えたら、チート級のポテンシャルだ。本当は別の目的も有るけど今はまだ秘密!
「でも……どう伝えたら農家さん達が納得してくれるかな?」
メイヤは机を指でとんとん叩く。
(いきなり“新しい作物を作りましょう!”って言っても警戒されるよね)
農民は慎重だ。
知らない種をいきなり畑に植えるのは、収穫が読めず、生活がかかっている以上、リスクが大きい。
「……よし! まずは“味で落とす”!」
名案がひらめき、メイヤは拳を握った。
■ ホクホク芋、まずは試食会!
メイヤは厨房に頼んでホクホク芋を蒸してもらった。
蒸し上がった芋は、ほかほかの湯気と一緒に、ほんのり甘い香りを漂わせる。
「……あぁ……やっぱりほぼさつまいも……!」
感動に震えながら割ってみると、黄色味がかった断面から湯気がふわりと立ち上る。
「甘い……絶対に売れる……!」
ミュネも一口食べて目を丸くした。
「んっ……!? これは……甘い……っ! こんな芋、初めてです!」
「でしょ!? これは育てる価値があるわ! 農家さんも絶対興味を持つはず!」
メイヤはすぐに動いた。
翌日、芋を蒸して小皿に盛り、以前ひよこを分けてくれた農家をはじめ、数軒のベテラン農家を訪問する。
「これ……甘っ!!?」
「ほう……芋とは思えんな。子どもも喜びそうだ」
「痩せた土地でも育つのか? 本当かい、メイヤ様」
「ええ! 私が責任を持って育て方を教えます!」
農家たちは顔を見合わせ――やがて笑った。
「……そこまで言うなら、やってみる価値はあるな!」
「うちの畑、ちょうど休ませてる区画がある。試しに使ってみるか」
(よし、掴んだ!)
ホクホク芋は、試食による“味の衝撃”で一気に関心を得た。
「もちろん領主館の庭でも育てて実験するわ! 私もちゃんと管理するから!」
こうしてホクホク芋は、複数の農家+領主館で小規模試験栽培が決定した。
■ 問題は――八十八穀
一方で、テーブルの上に残った袋をメイヤはじっと見つめた。
(そして問題児……八十八穀、つまり“お米”)
芋と違って、栽培には水と手間が必要だ。
田んぼの整備、苗の管理、収穫後の脱穀や乾燥……。
(これはさすがに農家さん全員には勧められないわね)
とはいえ、この領地で米が作れれば、栄養価や食生活の向上は計り知れない。
まずは現実的な案を考える。
「……とりあえず、食べてもらおう」
メイヤは厨房に頼み、八十八穀を炊いてもらった。
炊き上がる湯気の香りに、胸が高鳴る。
(ああ……完全に米の匂い……!)
ほっこり膨らんだ白粒に、感動が止まらない。
「ミュネ、食べて!」
「……っ!? これは……な、なんて優しい味……!」
「でしょ!? どんな料理にも合う万能食材よ!」
ミュネはしばし無言で咀嚼し、感極まったように言った。
「こんな“柔らかい穀物”は初めてです……!」
(やっぱり、伝わるわよね!)
しかし、農家に勧めるにはまだ早い。
メイヤは深く呼吸した。
「八十八穀は……まず、私の方で小規模で育ててみるわ。だけど農家さんにも、少しずつ協力してもらえるようお願いしてみる」
そして村の数名の農家を訪れ、慎重に説明する。
「これは普通の畑じゃなく、“水を使う畑”で育てる作物なの。最初は私が責任を持つわ。でも、興味がある人がいたら少しだけ……手伝ってくれないかしら?」
農家たちは難しい顔をしながらも――
「メイヤ様が試して成果が出たら……そのときは考えてみましょう」
「見本があるならやりやすい」
という前向きな返事をしてくれた。
(……うん、これでいい。急ぎすぎないのが大事)
メイヤはほっと息をつき、決意を固めた。
(芋で領地の栄養と収穫の安定性を確保して、
八十八穀は私が道筋を作る……!)
■ 新たな挑戦の始まり
「ミュネ、明日からホクホク芋の苗作りと、八十八穀の水場探しを始めましょう!」
「はい、メイヤ様!」
領地の未来を変えるための、“作物改革”。
その第一歩が、静かに踏み出された。




