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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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本隊同士初対面

「……ありゃあ、領主の旗だな」


見張り台から戻ってきた兵の一言で、場の空気が一段引き締まった。


「敵の“ボス”が、前に出てきてるぞ」


その言葉に、メイヤは双眼鏡を下ろした。


確かに、敵陣の中央付近。ひときわ目立つ旗印と、その下で馬上に立つ人物がいる。周囲を固める騎兵の装備も、明らかに他とは違っていた。


「……そうなのね」


メイヤは小さく息を吐く。


「正直、“正しい戦い方”がまだよく分からないのよね」


「どういう意味だ?」


機構隊長が首を傾げる。


「貴族同士の戦いって、本来は何か“しきたり”みたいなものがあるのかしら?」


「うーん……」


機構隊長は顎を掻いた。


「特別な決まりはねぇな。まあ、よくあるのは――」


「あるのは?」


「口上を述べる、とか。名乗り合いとかだな」


「……なるほど」


「あと、一騎討ちの申し入れ、とか?」


その言葉に、近衛隊長が鼻で笑った。


「今どき、そんな事を言い出す貴族がいたら、逆に尊敬するな」


「でしょうね」


メイヤも同意する。


「そもそも向こうは反乱軍。正式な戦争ですらないわ。一騎討ちする理由もない」


「だな」


そう話している間にも、敵陣から一騎、ゆっくりと前に出てくる者がいた。


白馬に跨り、胸を張り、明らかに“代表”と分かる動き。


「……あれは」


「口上要員だな」


機構隊長が即答した。


「話す気満々だ」


馬上の人物は、こちらとの距離を測るように進み、声が届く範囲で馬を止めた。


深く息を吸い込み、口を開こうとした、その瞬間だった。


「――待ちなさい」


凛とした声が、戦場に響いた。


全員の視線が、メイヤに集まる。


彼女は一歩前に出て、敵を真っ直ぐに見据えた。


「こちらは、貴殿らを反乱軍として認識しています」


静かな、しかし一切の揺らぎのない声。


「よって――」


一拍置き、はっきりと言い放つ。


「口上を述べる権利は、ありません」


その言葉は、矢のように突き刺さった。


敵の騎兵は、明らかに言葉を失った様子で馬上に固まる。後方の敵陣にも、ざわめきが走った。


「……お、おい」


機構隊長が小声で囁く。


「随分、バッサリ行ったな」


「ええ」


メイヤは視線を逸らさない。


「ここで“対等な貴族同士”を演じる必要はないわ」


近衛隊長が、低く笑った。


「なるほどな。向こうの“格式”を、最初から叩き折るわけか」


「そう」


メイヤは頷く。


「これは儀式じゃない。内乱よ」


敵の騎兵は、数瞬の沈黙の後、怒りと屈辱を滲ませた顔で踵を返した。


その背中を見送りながら、メイヤは呟いた。


「……さて」


彼女の視線は、敵陣全体へと向けられる。


「ここからは、“話し合い”じゃないわね」


空気が、完全に戦のものへと切り替わった。


夜明けの光の下、二つの軍が、ついに真正面から向かい合った。

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