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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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使用許可

「お父様に、火縄の使用許可の合図を」


メイヤのその一言に、場の空気がわずかに張り詰めた。


機構隊長は腕を組み、低く息を吐く。


「……いよいよ、あれを使うのか?」


「本来なら、使いたくないわ」


メイヤは即答した。


「でも、次が本番よ。ここから先は、誤魔化しも小細工も通じない」


敵が立て直して来る。

それも、今までとは比べ物にならない規模で。


「まあ……そうだろうな」


機構隊長も、否定はしなかった。


「百名部隊が消えた理由を、向こうが“事故”で済ませるとは思えん。次は必ず数を揃えてくる」


「人数は不明。でも、少数って事はない」


メイヤは地図に視線を落とす。


「だからこそ、次で“線”を引く必要があるの」


その時、近衛隊長が一歩前に出た。


「射撃の腕が立つ者を、十名ほど選抜した」


静かな声だったが、覚悟が滲んでいる。


「十名でいいのか?火縄は三十丁用意できているが」


その問いに、メイヤは小さく頷いた。


「ええ。十名でいい」


「……少なくないか?」


周囲からも、同じ疑問の空気が流れる。


火縄銃は強力だが、欠点も多い。

装填に時間がかかり、連射は効かない。

数で押された場合、隙が致命傷になる。


メイヤはその視線を正面から受け止め、説明を始めた。


「射撃手は十名。選抜された人は、撃つことだけに集中して」


彼女は指で簡単な動きを描いた。


「撃ち終わったら、すぐ後ろにいる人に火縄を渡す。後ろの人は、撃ち終わった銃に再装填」


「再装填が終わったら?」


「前に渡す。それだけ」


一瞬の沈黙。


次の瞬間、機構隊長の目が見開かれた。


「……待て。それって」


「ええ」


メイヤは、はっきりと答えた。


「射撃手と装填手を分けるの」


近衛隊長も、ようやく意図を理解したらしく、息を呑む。


「連射出来ない欠点を……人で補う、という事か?」


「そうよ」


メイヤは淡々と言った。


「火縄銃は“撃つ”までが遅い。でも、“撃った後”は早い。なら、遅い部分を他の人に任せればいい」


機構隊長は、思わず笑った。


「はは……誰がそんな使い方を考えるんだよ」


「私」


「だろうな」


頭を掻きながらも、その表情は真剣だった。


「理屈は通ってる。射撃手は照準と発射だけ。装填手は弾と火薬に集中……練度が上がれば、かなりの回転になる」


「ええ。数で来る相手には、数で撃ち返す必要はない」


メイヤは静かに続ける。


「“一斉射”を、切れ目なく続けられれば、それだけで相手は足を止める」


恐怖は、数ではなく体感で生まれる。

間断なく響く銃声。

倒れていく前列。

見えない再装填。


敵にとっては、それだけで十分すぎる。


近衛隊長は深く頷いた。


「……了解した。射撃手十名、装填手二十名。連携訓練を急ぐ」


「お願い」


メイヤは最後に念を押した。


「これは切り札よ。使うのは“次”だけ。無駄撃ちはしない」


「分かっている」


機構隊長は、遠くを見るように呟いた。


「ここからは……本当の戦だな」


「ええ」


メイヤは短く答えた。


「だからこそ、ここで終わらせるつもりで行くわ」


火縄銃は、まだ鳴らない。

だが、その準備が整いつつある事だけは、確かだった。


次で、戦の形が変わる。

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