ロウガ召集!“新作物”大捜索計画
村の散策を終えて館へ戻ったメイヤは、バインダーのメモを見つめながら眉を寄せていた。
「……やっぱり、野菜の種類が少なすぎるわ」
麦・豆・玉ねぎ・甘菜。
主力はこの四つのみ。他の家もほぼ同じ。
保存が効くのは大事だけど……選択肢が少なすぎる
もっと育てやすい作物、保存性の高い作物、
あるいは料理を豊かにする葉物や香草があれば、領民の暮らしはぐっと良くなるはず。
そこでメイヤは、ひとつの名前を思い浮かべた。
「……ロウガさんを呼ぼう!」
■ 商人、ふたたび呼び出される
「め、メイヤ様……!? またお呼びですか?」
慌てた様子で駆けつけたのは、もちろん犬族ハーフの商人ロウガだ。
「はい! 今日は野菜……いえ、作物のお話です!」
メイヤはバインダーを開いて、村の聞き取り結果を見せた。
「この領地、育てている野菜の種類がとても少ないの。だから――ほかの領地や街で、どんな種や苗木が手に入るのか知りたいの!」
ロウガは目を丸くした。
「な、なるほど……作物の品揃え、ですか。確かに農村は保守的ですし、新しい種は滅多に入ってきませんからな」
「そうなの? じゃあ、扱いのある商人さんを知ってる?」
「もちろん、ツテならあります!保存性が高いもの、育てやすいもの……いくつか心当たりがありますぞ」
メイヤの目が輝く。
「本当!? ぜひ教えて!」
ロウガは鞄をごそごそと探り、布袋を取り出した。
「残念ながら“植物図鑑”のような冊子は、この国には一般的ではありません。
識字率も低いので、絵や文字でまとめられたものはほぼ存在しないのです」
「……そっか、紙も高級品だものね」
頷くメイヤに、ロウガは続ける。
「ですが、私が旅の中で仕入れた“種の知識”ならお伝えできます」
彼は一本の紙に、ざらざらとした字で数種類の作物をメモした。
■ ロウガが提案した“育てやすい/保存向き作物”
ロウガは大きめの麻袋から植物の見本を取り出しつつ説明を始めた。
「まずはこちら……“ホクホク芋”と呼ばれる芋でしてな。痩せた土地でも育ち、味も甘い。土の中で長く保存もできます」
「えっ、これ……もしかして前世でいう“さつまいも”じゃない?2つ合わさった様な芋?」
メイヤは思わず身を乗り出す。見た目は微妙に違うが、断面の色と香りがほぼ一致している。
「蒸しても、焼いても、潰しても良い万能芋ですな」
「最高じゃない! それ絶対育てたいわ!」
ロウガは次の袋を持ち上げた。
「続いてはこちら。“八十八”という穀物です。水をよく吸う土地で育ちまして、実は小さく白い。収穫後は乾燥させれば長期保存が可能」
「……ちょっと待って。それ、炊いたらどうなるの?」
「ええ、ふっくら膨らんで粘りも出ますな。汁物にも合う。香りは淡泊ですが、どんな料理とも相性がよろしい」
メイヤは目をぱちくりさせた。
これ……完全に“お米”じゃない!? 名称が違うだけで、どう見ても米の扱われ方!
思わずメモに “=米!?(絶対そう)” と大書きする。
「育てるには少し手間がかかりますが、軌道に乗れば村の主食にもなりましょう」
芋と米……これを広められたら、領地の食生活が劇的に良くなる!
ミュネも横で目を輝かせていた。
メイヤの手帳には、次々に未来の種が書き込まれていく。




