表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/197

百の慢心

反乱軍の陣営は、奇妙な高揚感に包まれていた。


「百名だ。今回は私が直接指揮を執る」


指揮官の言葉に、周囲の士官たちは一斉に背筋を伸ばした。


これまでの小規模な偵察失敗は、すべて部下の不手際。そう結論づけられていた。まとめて動けば問題ない。男爵領ごときが、正規兵百名に抗えるはずがない。


「斥候ではなく、威力偵察だ。敵の出城とやらを正面から確認する」


「抵抗があれば?」


「蹴散らせ。抵抗がなければ、そのまま踏み潰す」


指揮官は地図を指でなぞる。


「所詮は付け焼き刃の防備。数を見せれば、恐怖で固まる」


その口調には疑いがなかった。戻ってきた斥候たちの異様な証言――整然とした配置、無言の圧、妙に落ち着いた対応――それらは全て「誇張」か「言い訳」として処理されていた。


「平民は平民だ。戦を知らん」


その一言が、陣営の結論だった。


やがて百名の兵が選抜され、装備を整え、夜明け前に動き出す準備が進められていった。


その動きを、すでに見ている者がいるとも知らずに。



「来るわね」


メイヤは、簡易地図の上に置かれた木片を一つ動かした。


「百名規模。指揮官直々、ってところかしら」


「随分と強気だな」


機構隊長は苦笑する。


「斥候をボコられて、逆に腹を立てたか」


「ええ。典型的な流れ」


メイヤは淡々としていた。


「小さく負けると、大きく賭けたくなる。自分が出れば勝てる、ってね」


机の上には、出城周辺の配置図が広げられている。草むら、起伏、視界の切れ目。藁人形の位置も、すでに記されていた。


「藁人形の配置は、予定通り後方に厚く」


「了解。遠目には、倍以上に見えるな」


「それでいいわ。敵は“兵が多い”と誤認したまま前に出る」


メイヤは視線を上げた。


「百名程度なら、正面衝突をする必要はない」


「包囲か?」


「分断」


その一言は短かった。


「前列が出城に意識を取られている間に、左右と背後。逃げ道は一つだけ残す」


「……逃がすのか?」


「逃がすわ」


メイヤははっきり言った。


「全滅させたら、向こうは“負けた”と理解する。でも半壊で返せば、“想定外”が残る」


機構隊長は、なるほどな、と息を吐いた。


「恐怖を持ち帰らせるってわけか」


「ええ。百の慢心には、それが一番効く」


外では、志願兵と学生隊が静かに準備を進めている。誰一人、声を荒げない。


「リディア達は?」


「伏兵の一角。矢は温存。撃つのは合図があってから」


「了解」


短いやり取りだけで、全てが通じていた。


メイヤは窓の外を見た。


「敵は“攻める側”のつもりで来る。でも実際は……」


その先を言葉にせず、彼女は小さく笑った。


「踏み込んだ瞬間から、試される側になる」


地図の上で、百名を示す木片が、静かに包囲線の内側に置かれた。


「……想定通り」


その一言が、作戦開始の合図だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ