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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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こちら側から

「さてと。機構隊長。あの街には、密偵は何人入ってるの?」


不意に投げられた問いに、機構隊長は一瞬だけ言葉に詰まった。


「あ〜……嬢ちゃん。それは、その〜……な?」


歯切れの悪い返答に、メイヤは軽く肩をすくめる。


「まあいいわ。数を聞いたところで、今から増やせるわけでもないし」


そう言いながら、彼女は机の下から細長い筒を一本取り出した。


「これを作ってもらったの」


「……竹筒?」


受け取った機構隊長は、くるりと回し、軽く振ってみる。中で何かが擦れる音がした。


「中に火薬と油を仕込んであるわ」


「は?」


「藁紐を用意して。短くていいから」


半信半疑のまま、近くに積まれていた藁束を持ってくる。メイヤは迷いなく火を点けた。


次の瞬間、竹筒は激しく発火し、勢いよく火柱を噴き上げた。


「……ほぅ〜」


機構隊長の目が、完全に職人のそれになる。


「藁紐の長さで着火までの時間を調整できるの。投げてから、数呼吸遅れて燃えるようにもできる」


「待て待て……発火遅延付き、軽量、投擲可能……?」


「そう。中身は簡単。複雑な加工もいらない。誰でも使える」


機構隊長は、しばらく無言で竹筒を見つめていたが、やがて低く息を吐いた。


「……こんな物を、よく思いつくな」


メイヤは淡々と答える。


「これを密偵に渡して。街の武器庫、あとは……あんまりやりたくはないけど、食糧庫にも」


「……街を燃やす気か?」


「燃やすんじゃないわ。混乱させるの」


メイヤの声は冷静だった。


「反乱側は、今『安全な後方』だと思ってる。そこを揺らす。火が上がれば、兵は戻る。指揮系統は乱れる。疑心暗鬼も生まれる」


「……なるほどな」


機構隊長は、顎に手を当てた。


「嬢ちゃんのやりたい事は解るぞ。前線で殴り合う前に、足場を崩すってわけだ」


「そう。正面衝突は最後でいい」


メイヤは窓の外、まだ静かな領内を見た。


「向こうは数で来る。なら、こちらは“想定外”で行く」


機構隊長はニヤリと笑った。


「密偵にすぐ準備させる。……嬢ちゃん、これはもう『戦』だな」


「ええ」


メイヤは短く頷いた。


「だからこそ、無駄な犠牲は出さない。そのための準備よ」


その視線は、すでに次の一手を見据えていた。

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