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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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想定通り

メイヤは出城の壁上から、静かに周囲を見渡していた。


敵が来る。

それはもう疑いようがない。


数は少ない。だが、それが一番厄介だった。

偵察、あるいは捨て石。

本隊が動く前の「確認」だ。


だからこそ――。


「機構隊長〜」


呼ばれた男が即座に近づく。


「出城の後方、あの緩斜面に藁人形を配置して。数は……そうね、最低でも三百は欲しいわ」


「三百!? 人形でか?あー!」


「ええ。鎧も兜も、形だけでいい。遠目に“人が居る”と分かれば十分よ」


機構隊長は一瞬考え、すぐに口角を上げた。


「……なるほど。数を誤認させるわけかー」


「それだけじゃないわ。隊列も作って。焚き火の跡も残して。ここに“部隊が集結している”って思わせるの」


「了解だ。建築隊と志願兵を回す」


命令は即座に伝達された。

動きは早い。無駄がない。


藁人形は元々、獣避けや訓練用に備蓄があった。

それを改造し、槍を持たせ、盾を立て、布を巻く。

遠目には人にしか見えない。


さらに重要なのは配置だった。


出城よりも「後方」。

つまり、ここを拠点にさらに大軍が控えている――そう見せる位置。


メイヤは満足そうに頷いた。


「敵は少数。だからこそ慎重になる。慎重な相手には、“想像させる”のが一番効くのよ」


リディアが横で腕を組む。


「性格悪いわね」


「褒め言葉として受け取るわ」


夕方。

偵察に来るであろう敵の進路を想定し、草むらの配置も微調整される。


包囲網は完成していた。

だが、それを見せる必要はない。


見せるのは――“余裕”。


夜。

遠方に小さな動きがあった。


「来たわね」


望遠筒越しに確認すると、人数は想定通り。

二十名ほど。

慎重に、だが明らかに様子見の動き。


彼らは出城を見て、動きを止めた。

そして、その奥を見る。


藁人形の列。

焚き火の残り。

規則的に並ぶ“兵”。


空気が変わったのが、ここからでも分かった。


「……迷ってるか?」


機構隊長が小さく呟く。


敵は相談している。

引くか、近づくか。


だが結論は一つしかない。

この規模を見て、突っ込む判断はできない。


やがて敵は後退を始めた。


「撤退確認」


「追撃は?」


「しないわ。予定通り」


メイヤは出城の壁から目を離し、静かに息を吐いた。


敵はこれで報告する。

この領地には、想定以上の兵力が居る。

簡単には落とせない、と。


その誤情報こそが、今は何よりの武器だった。


メイヤは小さく笑う。


「……想定通り」

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