表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/195

想定外の前線

こんな話は聞いていない。


それが、先遣の二十名全員の共通した感想だった。


目的は単純だ。

王都方面が騒がしくなり、各地で兵が動き始めている。その隙に、北寄りの小領地を牽制する。場合によっては軽く荒らし、王族派の神経を逆撫でする。それだけの役目だった。


「守りは薄い」

「見張り小屋がいくつかあるだけ」

「兵力も大したことはない」


そう報告を受けていた。


だから二十名だった。

威圧には十分、戦闘になる前に引けば問題もない数。


だが――。


森を抜け、丘を越え、視界が開けた瞬間。

先頭を歩いていた男は、思わず足を止めた。


「……は?」


声が漏れる。


そこにあったのは、見張り小屋ではなかった。

木組みの城壁。簡易とはいえ、明確に「城」と呼べる構造物。


しかも新しい。

木材の色が違う。削り跡も生々しい。


「聞いてないぞ……」


誰かが呟いた。


周囲を見渡す。

城壁の外周には、やけに整った地ならし。

死角になりやすい林は不自然なほど間引かれている。


「前線拠点……?」


二十名程度を威圧するための規模ではない。

百人単位で籠もる前提の造りだ。


「撤退するか?」


その声に、別の男が首を振る。


「待て。様子がおかしい。旗も出ていない」


確かにそうだ。

城壁はあるが、陣旗も紋章も見えない。

人影もない。


「……脅し用の張りぼてじゃないのか?」


その希望的観測に、全員がすがりたくなった。


「近づいて確認する」


そう判断が下った。


それが、最初の誤算だった。


草むらに入った瞬間、妙な感覚が背筋を走る。

静かすぎる。


鳥の声がない。

風の音だけが、やけに大きい。


「……止まれ」


次の瞬間だった。


背後から、横から、前方から。

同時に気配が立ち上がる。


「囲まれて――」


言い終わる前に、後頭部に衝撃。

視界が揺れ、地面が迫る。


「ぐっ……!」


悲鳴が上がる。

しかしそれは一瞬で途切れた。


誰も殺されはしなかった。

ただ、徹底的に殴られた。


武器は弾き飛ばされ、抵抗する暇もない。

人数? 分からない。

ただ、多い。


城壁の上からも、草むらからも、統制の取れた動き。

訓練されている。


「話が違う……!」


それが最後の意識だった。



目を覚ました時、男は寒さを感じた。


「……?」


自分の姿を見て、理解する。

服がない。

下着一枚だ。


周囲を見ると、仲間も同じ状態で転がされている。


「起きたか」


聞き慣れない声。


境界杭の向こう側。

つまり――追い出されたのだ。


「伝えろ」


城壁の方角を指して、淡々と告げられる。


「ここは、もう“空き地”じゃない」


「次は、こうはいかない」


笑いも嘲りもない。

ただの事実として。


男は、初めて理解した。


この領地は、誘っている。

王都へ向かう最短路として。

そして――罠として。


二十名は失敗ではない。

あえて返されたのだ。


知らせるために。


「……クソが」


歯を噛みしめながら、男は立ち上がる。


王都では、大軍が動いている。

だが、ここにも確実に「戦場」が用意されていた。


知らずに踏み込めば、次は戻れない。


それを、ようやく思い知らされたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ