村の散策と“野菜事情”調査
「ミュネ、今日は村に行きましょう!」
メイヤの声に、侍女のミュネはぱっと顔を明るくした。
「はい、もちろんお供いたします!」
背中の簡易バインダーには、メイヤお手製の“押し花カード”が何枚も挟まれている。
ひよこを譲ってくれた農家へのお礼と、今日の聞き取り用メモの準備は万端だ。
■ ひよこをくれた農家へご挨拶
村の入口を抜け、石畳と土道が入り混ざる小路を歩く。
鶏の声と、畑からの土の匂いが混ざり、なんとも言えない田舎の心地よさを感じさせる。
目的の農家に着くと、軒先で玉ねぎを束にして干していたおばあさんが手を振った。
「あらまぁ、領主様のお嬢じゃないかい。ひよこは元気かい?」
「はい! とっても元気です。これ、その……お礼に!」
メイヤは押し花をあしらった小さなカードを差し出す。
鮮やかな色の花弁が紙の茶色に映えて、素朴ながら上品な一品だ。
「まあ……こりゃあ綺麗だこと……! こんなの初めて見たわ」
おばあさんは目を細め、大事そうに胸に抱きしめた。
(よかった……紙ができたからこそ作れたんだ)
ミュネも誇らしげに微笑んでいる。
■ 農家に“野菜事情”を聞いてみる
せっかく来たので、メイヤはメモ板を構えた。
「ところで、今この村ではどんな野菜を育ててるんですか?」
「そうだねぇ……うちは玉ねぎと豆が多いよ。育てやすいからね」
別の農夫が加わる。
「うちは麦と甘菜。甘い根っこの野菜で、保存がきく。冬の主力だな」
さらに奥の畑からおじさんが声をかけてきた。
「最近は土が痩せてきててなぁ。前より育ちが悪い。肥料がもっとあれば、他の品種にも挑戦できるんだが」
(やっぱり……どこの畑も同じ問題なんだ)
メイヤは丁寧にメモを取る。
――現在の主力作物は
・麦
・豆
・玉ねぎ
・甘菜(サツマイモと大根の中間のような根菜)
どれも保存性が強い、いわば“安全な作物”だ。
「他にも育ててみたい野菜はありますか?」
「そりゃあ色々あるさ。寒さに強い葉物とか、料理の幅が広がる香草とか……でも土がなぁ」
農家たちの悩みは共通していた。
肥料不足。
土力の低下。
新しい品種への挑戦ができない。
(……やっぱりピヨピヨ計画は正解だったんだ)
そう確信しながら、メイヤは村の奥へと足を進めた。
■ 小さなヒント
道中、干してあるハーブや、畑の隅に植えられた見慣れない草を見つける。
「ミュネ、この草は何?」
「あれは香草のですね。肉の臭み取りに使う程度ですが……畑の隅だけで育てているのは、成長が遅いからでしょうね」
「肥料がたっぷりあれば……もっと育つかもしれないわね!」
メイヤの目が輝いた。
(野菜だけじゃない……香草や薬草まで生産できるようになるかも!)
領地の可能性が、また一つ見えた気がした。
⸻
「ミュネ、今日の聞き取り……とても良かったわ!」
「ええ、メイヤ様のメモのおかげです」
バインダーに挟まれたメモは、もうびっしりだ。
「ピヨピヨ計画が進んだら……次は“畑の改革第二弾”ね」
メイヤの胸に、新たな計画の種が静かに芽を出し始めていた。




