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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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王都に届いた静かな報告

王都・中央庁舎の一室。

昼下がりにも関わらず、窓は閉められ、室内は薄暗かった。


「……以上が、現在までに確認された事象です」


淡々と読み上げる声。

それは決して緊急報告の調子ではなかった。


だが――

机を囲む者たちは、誰一人として茶に手を伸ばしていない。


報告書の内容は、どれも単体で見れば些細だった。


・地方街道での荷馬車転倒事故の増加

・倉庫火災の発生率上昇(原因不明)

・契約更新直前の商会が、突如取引を白紙に戻す

・港湾都市での荷役人足の集団欠勤


「偶発、あるいは管理不行き届きとして処理されてきました」


報告官は一度、言葉を切った。


「ですが――“時期”と“場所”を重ねると、線になります」


机の上に地図が広げられる。

赤い印が、点ではなく、帯のように連なっていた。


「反王族派と噂される旧貴族領」


「かつて市場を支配していた旧商人の拠点」


「近年、外国商船の寄港が増えた港町」


三つが、奇妙なほど重なっている。


「……三合連合、という理解でいいか?」


重々しい声が落ちた。


「はい。反王族派、旧商人勢力、そして外国資本。いずれも単独では動いていません。しかし“互いの利害が一致する部分だけ”を共有しています」


それは同盟というより、目的限定の結託だった。


・王族の統制力を削ぐ

・正規流通を混乱させる

・地方領主の自立を促す


「さらに」


報告官は、最後の紙を差し出す。


「一部の地方領主が、兵糧・装備・人員を“平時以上”に集積しています」


室内の空気が、はっきりと変わった。


「反乱準備か」


「“即時”ではありません。ですが――計画的です。年単位で見ています」


誰かが小さく舌打ちした。


「つまり、これは暴発ではない」


「はい。“環境作り”です」


物流を乱し、民心を疲弊させ、

“王族に頼らない選択肢”を各地に芽生えさせる。


その先にあるものを、ここにいる全員が理解していた。


沈黙の中、年配の官僚が低く呟いた。


「……静かすぎるな」


「ええ」


報告官は頷く。


「だからこそ、危険です。彼らはまだ、こちらに“気づかれていない”と思っています」


机の上の報告書。

その一枚一枚は、悲鳴を上げていなかった。


だが。


「対応を急ぐ必要があります」


誰も反論しなかった。


王都に届いたその報告は、

鐘も鳴らさず、血も流さず――

確実に、“戦争の準備が始まった”ことを告げていた。

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