表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

幕間2

 彼女が剣を一閃し、少し遅れてガチャン、と音がした。そして僕の手首は軽くなった。

 長年僕と共にあった手鎖が、断ち切られ、地面に落ちた。

 それから彼女は僕の後ろへ回り、剣が空気を切る音が聞こえた。そして足首も軽くなった。足に繋げられていた鎖を切ってくれたのだ。


「おーし、これで全部だな」


 まるで自分が切ったみたいに、目の前にいたグレンさんは言った。

 当の本人である彼女、勇者アシュリーはそれには何も突っ込まず、つまらなそうな顔で剣を背に仕舞った。


「よかったらどうぞ」


 そう言ったクリスは僕に自分が羽織っていたローブを手渡した。

 戸惑う僕にすまなそうな顔で言う。


「あなたが着られるような服を持ってなくて。このあと仕立て屋に行きましょう」

「あ? 俺は行かないが」

「それより風呂」


 グレンさん、アシュリーさんが各々勝手に言う。


「ちょっとあなたたち、ドリューが仲間になってくれたんですよ、もっと何かあるでしょう!? 何か!」

「え、ほんとにコイツ付いてくんの?」

「グレンさん?!」

「それより風呂」

「アシュリーさん?!」

「あ、あの……僕は別に……」


 クリスは二人の態度が気に食わないようだが、僕は何も不満はなかった。

 アシュリーさんは確かに僕をパーティーに迎えてくれた。グレンさんはまあ優しくはないけれど、殴らないし、そこまで酷い言葉も投げ掛けない。


「というか俺の攻撃魔術があれば前衛の戦士なんていらなくね? 筋肉バカはアシュ坊一人で十分だろ」


 いや、結構酷い気がしてきた。


「グレンさん、あなた自分への防御結界と運動能力は雑魚なこと忘れないでください」


 物腰穏やかなクリスはたまにポロッと毒舌なことを言う。


「ああ? やんのか攻撃力ゼロ坊主」


 クリスの口元がぴきり、と引き攣る。

 クリスは法術使いで、法術は治癒と防御のための技だ。法術には攻撃の術はない。基本的には。稀にいるらしいが。なのでクリスが攻撃力ゼロであるのは何もおかしくはないが、このパーティーにいるなら、気にするらしい。

 嘘みたいに強力な魔術をバンバン使うグレンさんに、自分の背丈ほどもある魔剣を軽々と振り回しつつ全てをなぎ倒していくアシュリーさん。かくいう僕も力押しタイプだ。


 クリスとグレンさんが一触即発になっているところ、アシュリーさんはくわ、と口を大きく開けて欠伸をした。


「みっともねえぞ、アシュ坊」

「アシュリーさん、もう少し隠した方が……」

「どうでもいいだろ。はやく風呂入ってメシ食うぞ」

「風呂と食うことしか頭にないのか、お前は」

「それが一番大事だろ」


 グレンさんは何か言いかけたが、結局何も言わなかった。


「でもそうですね…… まずは休息しましょう。ドリューさん仕立て屋はまた後ほど」

「は、はい……」


 アシュリーさんはくるりと背を向け、街の中心に向かった。


「おし、風呂」

「お前……もしかしてまた全員で入るつもりか?」


 不思議そうにアシュリーさんがグレンを見上げる。

 見た目からはわかりづらいが、アシュリーさんはこのパーティーで唯一の女性だった。


「別々に入る金ないだろ、あたしたちに」

「いやいや、俺たち勇者一行よ!? 結構色々貰ってるはずだよな!?」

「……それ以上に使ってますからね」

「そ、そうなんですか……」

「大飯食ぐらいと壊し屋がいますからね」

「アシュ坊が食い過ぎぎなだけだろ」

「グレンこそ壊し過ぎだろ」

「あなたたち二人とも食い過ぎで壊し過ぎなんですよ!!」

「クリスだって寄付し過ぎ」

「そうだそうだ、恵まれない俺たちをもっと恵め」

「あんたたち本当に勇者一行ですか?!」


 滅茶苦茶な人たちだけど、彼らと一緒にいると、なんだか少し楽しくなってくる気がした。



 これはまだ旅の終わりが遠い頃の話。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ