セミに気をつけろ
7月下旬、午後2時。コンクリの照り返しが地面を揺らす。
アパートの一室で、康太は苛立ちを抑えきれずにいた。
「……うるせぇなぁ、マジで……」
窓の外から鳴り響くミンミンゼミの声。いや、それにしても、やけに近い。
鳴き声が右耳の奥に響いているような、不快な違和感。スマホで音楽を流しても、まるで意味がない。
──ミィィィィ……
「うるっせぇっつってんだろ……!」
ついに立ち上がり、耳を指でぐりぐりとこする。
そのときだった。
指先に、何かが触れた。
ぶよりと柔らかく、でも甲殻のような硬さもある。
そして、それは動いた。
「……え?」
次の瞬間、小さな羽音が顔の横をかすめた。
康太はその場に倒れ込んだ。叫ぶこともできず、
ただ放心した顔で天井を見つめていた。
お前ら、セミに気をつけ...ろ.......
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