第95話 再現するには
一通り先ほどの説明を終えると、話題は必要な人員について移った。
「ん~、水か光適正の子が必須かな」
「そうですね、少なくとも執刀する人を含めて、4人くらい必要ですかね?」
「執刀する人、それをサポートする人、執刀する人の対面で止血のために焼きごてでサポートする人は確定でしょうね。誰か一人でも水か光適正の子がいればいいでしょうし、出血のことを考えたらブラッドポーションも用意しておいた方が良いわね」
初めて聞く単語が出てきた。
「ブラッドポーション?」
「えぇ、失われた血の補充によく使われるポーションなんですよ」
『ダンジョンで作ってたやつや』
あぁ、あれがそうなのか。飲ませる相手がそばにいたから、そのまま分けて飲ませただけだったのか。
「そうなんですね」
「とりあえず、こっちは何とかなりそうだけど、問題は痛みね……」
「そうですね。おなかを切っているわけですから、相当痛いですよね」
それは私自身も同感だ。絶対に体験はしたくない!
「研究所でカブリトとダッド、両方試験してもらうようにしないと……」
「そのための研究所ですからね」
「そうだね~。こっちはちょっと時間かかるけど仕方ないかな」
「とりあえずは、逆子対策でしょうかね」
「そうだね。急に来て逆子出産だけは対応できないからね」
ん?
「逆子って対応できるんですか?」
「出来るよ。ちょっとした体操で正常な状態にすることが出来るんだけど」
「今回は予定日より早い状態での破水で急遽こちらに来られたんです」
『逆子の場合は予定より早くなるのが普通ですからね』
途中でアクアが補足説明してくれた。
「そうなんだ」
「とりあえずは、ラミナさんと同じことができるようにしないとだね」
「そうですね。希望者を募りますか?」
「そうだね。その前に私とマリベルがメインで動けるように練習しないと……」
練習か。クゥにお願いすれば……。
「あっ!」
クゥのことをすっかり忘れていた!
「ん! どうしたの?」
「いや、精霊を一人帝都に置いてきちゃった……」
「ぇ……? 大丈夫なんですか?」
契約してダンジョンを出てから別行動だから、大丈夫かどうかなんて分からない。
『大丈夫ですよ。冒険者登録して町中のクエストをこなしていますから』
クゥは何やっているの……?
『それなりに楽しんで帝都探索しているからほっといても大丈夫だろ。それに何かあれば意識して呼びかけてみると良い。俺らと違ってずっと感覚共有しているはずだからな』
『そうね。ずっと繋がったままだから大丈夫よ。お土産よろしくね』
クゥ本人から回答があった。
「なんか大丈夫みたいです……」
「そうなんだ……。ラミナさんは実技と魔法、パスしているよね?」
「はい」
「それなら、火の日までこっちに居ても大丈夫?」
「そうですね、水の日から授業に出れば良いので」
「明日予定の子がいるんだけど、多分何かしらトラブルが起きる可能性があるんだよね。一緒に立ち会ってくれない?」
「トラブル?」
「感覚的なものなんだけどね。逆子じゃないのは分かっているんだけど、お母さんがリンクル族でお父さんが人族だから、おそらく胎児が大きくて産道を通らない可能性がね……」
あぁ、なるほど。目の前にいるイリーナが、さっきのエルフの子を出産って考えると、すこしどころじゃなくかなり厳しい気がする。
異種族での結婚って厳しいのかな……?
「異種族同士って、そういうトラブルが起きやすいんですか?」
「お母さんがリンクル族かドワーフ族で、お父さんの方がエルフや人、獣人だと、そうなる傾向が高く、出産に失敗するケースも多いですね……」
「そうですね……。実際、同族結婚した場合の出産でも、先ほどのケースのようなものを含めて3割くらいは死産になるんですよ」
「死産って赤ちゃんがってこと?」
「そうです。これでもリタさんが治癒院を建てて以降、かなりましになったんですよ。出産がうまくいっても母親側が亡くなるケースも同時に減ったんだよ」
「そうですね。昔は死産率は5割超えていましたからね。お母さんの方も3割くらい亡くなっていましたが、今は1割くらいまで減りましたからね」
ぇ、そんなに?
「ぇ、そんなに死ぬ可能性が高いんですか?」
「そうですよ。人生の中で一番死亡率が高いのが、生まれるときなんです」
「なんというか……、出産って命がけですね……」
そんなに命がけなのは初めて知った。
『せやから、リタは出産って部分に力を入れるようになったんや』
『ですね』
「そうですよ。本当に命がけなんですよ」
土の日から闇の日、光の日、火の日の4日間は、なるべくこっちに来た方が良いのかな?
「ふわぁ~~」
話の途中で、思わず欠伸が出た。
「そういえばもうこんな時間だし、夕飯もまだだったね……。ラミナさん、ごめんね」
こんな時間?
カバンから懐中時計を取り出すと、既に21時を指していた。いつもなら布団に入る時間だった。
おかしい。サウススペルンに到着したのはお昼頃だったと記憶している。そしてそのまま治癒院に来た。イリーナと別れた後、そんなに時間かかっていたのかな?
「マリベルもオフなら、この後ご飯に行かない?」
「いいですね。私、日勤なのでいつでも帰れますよ」
残業!?
「それじゃあ、いつもの所に行きましょうか」
私としてはご飯より寝たいんだけどな~、なんて思いながら二人についていった。
多くの人で賑やかな食堂で、三人でご飯を食べた後、イリーナが使っている寮の一室で一夜を明かすことになった。
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