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神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~ 【原作完結済】  作者: 川原 源明
第6章 平和な学園生活

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第79話 事件解決へ

 翌朝、目を開けるとグレンの顔が目の前にあった。


「うわぁ!」


 私が起き上がると同時に、グレンは私から飛び退いた。


『驚かすなよ』


「いや、こっちの台詞だし!」


『せやから言うたやん』


 グレンに対してミントが忠告してくれていたようだった。


『だがなぁ、まぁいい。例の犯人、どうする?』


 グレンは犯人を捕まえたいのかな?


「どうしたいの?」


『相応の罰を受けるべきだろう』


『それは私も同感ですね』


 アクアとグレンは犯人をどうにかしたいらしい。


 ミントの方を見ると、


『2人に任したらええんちゃう?』


 ん~、まぁなんとかしてくれれば町の平和が戻るから良いんだけど。


「2人に任せるけど、どうするの?」


『燃やすか?』


『いえ、氷漬けにして詰め所に突き出しましょう』


 犯人を殺すこと前提になってる!?


「犯人、殺すの?」


『それしかないやろな』


『影渡り持ちは簡単に逃げられるからな』


『スキルを使わせない方法なんてありませんしね』


「そっか……」


 それなら仕方ないのかな。


「じゃあ氷漬けにしてくれる? 私は衛兵の人と一緒に犯人の居るところに向かうよ」


 死亡確認してもらうには、燃やすよりはそちらの方が良いだろう。


『分かりました。私は先に向こうに行っていますね』


『じゃあ俺が案内だな』


 それって今すぐ動けってことかな?


 そう思った時には、既にアクアが外に出て行っていた。


 とりあえずベッドから出て身支度をしてから、衛兵の詰め所に向かうために家を出た。


「詰め所ってどこ?」


『西門の横にでも行けばええんちゃう?』


「そっか」


 ミントの言うとおり、西門にある詰め所へ向かった。


 町中を見守っている衛兵の人のもとへ行くと、


「あれ? 君は……」


 どこかで見た気がする。


「あの、精霊さんが夕べの犯人を捕まえた? らしいんですけど」


「精霊さん? 夕べの犯人?」


「ジャックって人」


「あぁ、例の通り魔の件か。って、捕まえたの?」


「多分?」


『既に氷漬けになっているから問題ないぞ』


「あっ、氷漬けにしてあるみたいです」


「“みたいです”って……君がやったんじゃないの?」


「いえ、私じゃなくて精霊さんが……」


「うん? まぁいいや。君の名前は?」


「ラミナです」


「ラミナちゃんね、とりあえず仲間を呼んでくるよ」


「はい」


 衛兵の人は近くの扉の中に入っていった。


 しばらく待っていると、5人の兵隊が出てきた。


 そのうちの1人が私の方を見た。


「あれ? 夕べの子」


「夕べの衛兵さん?」


 昨夜の遅い時間も働いていたのに、こんな朝早くから働いているのか。内心“お疲れ様です”なんて思った。


「そういえば、君、有名人なんだね」


「ぇ?」


「私ね、この格好しているけど騎士科の7年生なんだ」


 7年生ってことは卒業年度か。


「ぇ? そうなんですか?」


 騎士科ってことはハンゾーと一緒?


「うん。今はね、いろいろな場所で就労体験させてもらっているんだ」


「あっ、そうなんだ。もしかしてハンゾー先輩と?」


「そうだね。君のことを聞いたのはミラちゃんだけどね」


 ハンゾーからではなく、ミラから聞いたのか。


「知り合いなんですか?」


「基礎学級の時にクラスメイトだったよ」


「あ~なるほど」


 雑談していると、5人の中の隊長と思われる男性がこっちに来た。


「リンダ」


「っは! すいません!」


「ラミナ君と言ったかな? 私は帝都第2守備隊のリーングレットだ。ジャックの元に案内してもらえるかい?」


「はい。グレン、お願い」


『あぁ、任せろ』


 グレンの案内のもと帝都内を歩いていると、スラム街とまではいかないが、崩れかかった建物が多い一角まで来た。


「下級民のエリアか……」


 私のすぐ後ろを歩いているリーングレットがつぶやいた。


「下級民って?」


「スラム民とまではいかないが、その日暮らしをしている者たちが多く住む場所だな」


「そうなんだ……」


 そういう人たちがいると聞くと、自分がいかに恵まれているかが分かる。


『ここだ』


 グレンが案内した場所は、壁が一部崩れ落ちている建物だった。


「ここみたいです」


「わかった。君は下がっていたまえ」


 リーングレットに後ろに下げられたので、私は衛兵たちのやりとりを後方から見守ることにした。


 リーングレットがそっと扉を開けて中に入ると、それに続いて他の隊員たちも入っていった。


 私はそのまま外で待っていた。


 しばらくすると、リーングレットが出てきた。


「誰もいないんだが、ここじゃないのか?」


『そりゃ隠し階段の先にある地下にいるからな』


「地下にいるみたいですよ」


「地下? 降りる階段なんかあったか?」


「いえ、ありませんでした」


「あ、隠し階段って言っています。グレン」


 入り口付近に移動すると、グレンが指を差しながら言った。


『そこだよ』


 グレンが指さしたのは、入ってすぐの場所にある壁だった。


「ん?」


 入り口付近にいる衛兵を押しのけて中に入った。


 グレンの指さす壁に触れると、感触がなかった。


「ぇ?」


 押してみると、壁の中に腕が吸い込まれていく。


「何これ……」


『幻影の魔道具だ。特定の幻影を見せる道具だな』


「そうなんだ」


 壁の中に入ると、地下に続く階段があった。


「こっちです」


 再びグレンが先導し、地下に降りて通路を進んだ。


「地下通路か……」


 しばらく進むと、水路が現れた。


「下水路ですか。ブロウンラットの襲撃に備えろ!」


 ブロウンラット?


「「「「ッハ!」」」」


 グレンは先導しながら、あちらこちらを指さしているようだった。


 さらにグレンの動きを注視していると、指さした先に一瞬だが火の手が上がっていることに気づいた。


「ネズミ退治しているの?」


 後ろの衛兵たちに聞こえないよう、小声で聞いた。


『それくらいはな。もうすぐ着くぞ』


 グレンがそう言うと、何もないところで立ち止まった。


 そして右にある壁に手を当てると、レンガの壁から火の手が上がり、燃えた箇所のレンガが崩れ落ちた。


 崩れ落ちた壁の奥には大きな空洞があり、中央近くに考えるようなポーズをした氷像となったジャックと、そばに佇むアクアがいた。


『遅かったですね』


『すまんな』


 なぜグレンが謝るのだろうか。


「こいつは……」


 崩れた壁から中に衛兵たちが入っていくのを、私は見送った。


「ラミナ君、氷を溶かしてもらうことはできるかい?」


「はい」


 私の返事に合わせてアクアが力を解くと、ジャックの体が崩れ落ちた。


「すまない」


「いえ」


 私がやったことじゃないし……。そう思っていると、アクアが手元に戻ってきた。


「お疲れ様」


『ありがとうございます』


 衛兵たちが部屋の中をあちこち調べていた。


 しばらくすると、リーングレットがこっちに来た。


「間違いなく手配中のジャックだと分かった。君は帰れるようなら帰っても構わない」


「あっ、じゃあ帰ります」


「分かった。後日詰め所まで来てくれ。報酬を渡そう」


「報酬?」


「あぁ、こいつは高額の賞金首だからな」


「あぁ~なるほど……。それじゃあ、火の日にでも行きます」


「わかった。それまでに準備しておこう」


「お願いします」


「あぁ、気をつけてな」


「はい」


 私は衛兵たちと別れ、地上へと戻った。


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