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神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~ 【原作完結済】  作者: 川原 源明
第6章 平和な学園生活

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第76話 ごちそう

 ランフォール商会を出ると、すっかり日が暮れて辺りは暗くなっていた。

 本来なら屋台で適当に夕食を買って寮に戻ろうと思っていたけれど、せっかくお金が入ったし、今日はちょっぴり贅沢してもいいかと思った。

「なんか食べたいものある?」

『うちは何でもええで』

『私も何でも良いですよ』

『肉が食べてぇな』

『ぼくも~』

 どうやらグレンとまん丸が肉料理をご所望のようだった。

「肉料理でおすすめのお店あったら教えて」

『こっち~』

 真っ先に動いたのはまん丸だった。

 まん丸の後についていくと、広場に面した異国風の建物の前に到着した。

「ここ?」

『うん~、南国バルト共和国の料理が楽しめるお店なんだよ~』

『リタの居た頃から変わらない場所ですね』

 ということは、百年以上ここにあるということなのだろうか?

『だな。あの頃からまん丸のお気に入りだったな』

「おいしいの?」

『高いけど美味しいよ~』

 まぁ、日々お世話になっているお礼も兼ねているし、お財布にも余裕はある。

 そう思い、思い切って店に入ることにした。

「いらっしゃいませ~。お父さんとお母さんと一緒かな?それともお一人様ですか~?」

 白髪で長い耳を持つウサギの獣人だった。こういう種族を見るのは初めてかもしれない。

 店内に入ってみると、8歳の私には少し場違いな雰囲気に感じた。

「1人です」

「かしこまりました~。お席にご案内しますね~」

 案内されたのは、4人ほど座れそうな円卓だった。

 周りを見渡すと、大人の男性ばかり。時折、私の方をチラチラ見てくる人もいる。

「それではメニューお持ちしますね~」

 そう言って去ったウェイトレスはすぐに戻ってきた。

「お待たせしました~。こちらがメニューになります~」

「ありがとうございます」

 受け取ったメニューを眺めると、バルトブルという肉を使った料理が多いようだった。

 ただ、文字だけで構成されたメニューのせいで、どんな料理かまでは分からない。

『代わり映えしませんね』

『せやなぁ』

 周囲の様子を見る限り、混んでいるし人気店であることは間違いない。

『これとこれ~』

 ふわふわと浮かんだまん丸がメニューを指差してリクエストしてくる。

『おまえの好み変わんねぇな』

 まん丸のリクエストは、バルトブルのサーロインステーキとカルビサンド。

「私でも食べきれるよね?」

 なんとなく、お腹がはち切れそうな気がしてきた。

『食べきれないと思いますよ……特にステーキは、大人になったリタでも“キツ”って言ってましたからね』

『う~ん……』

 まん丸は、どちらにするか悩んでいるようだった。

『じゃあ~こっち~!』

 そう言って選んだのは、バルトブルのサーロインステーキ。

『食べきれるんかな~?』

 アクアとミントの言葉を聞いて、不安がよぎった。

「すいませ~ん」

 近くにいたウェイトレスを呼び止めた。

「ご注文はお決まりですか?」

「はい。このバルトブルのサーロインステーキなんですけど、半分くらいの量にしてもらうのは可能ですか?」

「大丈夫ですよ。半分はお持ち帰りされますか?」

『テイクアウト出来るようになったんですね』

 ということは、昔は持ち帰りができなかったのだろうか?

「はい、それでお願いします」

「パンとライスはどちらになさいますか?」

「んと、ライスで」

「かしこまりました~」

 しばらくして、大きな鉄板に乗せられた分厚い肉の塊が運ばれてきた。

 ……あれ?半分テイクアウトって言ったよね?

 どう見ても量が減っているようには見えない。

「あの、これ半分にした量なんですか?」

「はい。この後、包んだ分をお持ちする予定ですよ」

「あ、そうなんですね」

 いや……これ……食べきれるかな……?

「それでは、包んだものをお持ちしますね」

「はい」

 ナイフとフォークを手に取り、切り分けを始める。

『はやく~はやく~!』

「ちょっと待ってね……」

 急かすまん丸を横目に、全部切り分けてから食べ始めた。

「ん~おいしい」

『でしょ~!柔らかいお肉に甘いタレとピリッとしたスパイスが美味しいよね~』

『グルメはまん丸に任してれば外れ引かへんよね』

『そうですね。行ったことのない場所でも必ず当たりを引きますもんね』

 まん丸は普段は寝てばかりいる印象だけど、もしかして美味しいものを探して活動しているのかも……?

 そんなことを考えながら食べ進めた。

 案の定、半分ほど食べたところでお腹がいっぱいになってしまった。

「ん~もう無理……おなかいっぱい……」

『そりゃ、大人の量半分でもきついやんな』

『ぇ~まだ残ってるよ~』

 まん丸はまだ味わい足りない様子。

「ん、半分あるし、また今度……」

『う~残念~』

 残念そうにするまん丸を見て、残ったお肉をどうするか考える。

『残った分、持ち帰りできないのか?』

 グレンの提案を聞いて、近くのウェイトレスを呼んで確認すると、あっさりとOKが出た。

『良かったですね』

『う~ん!明日の朝ご飯だね~』

 朝から大きなお肉はちょっと……。

 その後、2つの包みを鞄に入れ、会計を済ませて店を出た。



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