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神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~ 【原作完結済】  作者: 川原 源明
第4章 リタからの贈り物

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第38話 幕間 リタとメフィーの出会い

 植物の大精霊ミドリ(ミント)視点


 リタのアカデミー入学式当日。


『リタ、ぼちぼち行かへんと』

「そうね、行きましょうか」


 うちはリタとアオイと一緒に宿を出て、アカデミーへ向かった。


 アカデミーに着くと、校門入ってすぐのとこに、クラス分けの表が貼り出されとった。


『やっぱりSクラスやね』

「当然ね」

『でも、Sクラスは貴族しかいないみたいですよ……』


 掲示板に貼られてる表を見ると、見事に姓付きの名前ばっかり並んでる。


 貴族嫌いのリタにとって、Sクラスってどうなんやろ……しかも皇族までおるし。


『せやなぁ、おまけに次期皇帝ボルト・ルマーンもおるな』

『ですね、リタこのクラスで大丈夫ですか?』

「大丈夫じゃない?なれ合うつもりないし」


 リタは落ち着いた顔で答えたけど、うちはちょっと心配やった。


 過去にアカデミー通ってた契約者はおらんけど、今ここにおる下位・中位・上位精霊たちから話を聞く限り、グループで取り組む授業もあるらしいしな。


『大丈夫なんかなぁ?』


 クラス分けの確認が終わった後、うちらはSクラスの教室へ向かった。


 教室に入った瞬間、見渡す限り育ちの良さそうなお坊ちゃんお嬢様ばっかりやった。


「席は決まって無さそうね」


 リタはそう言いながら、誰の荷物も置かれてない席にすっと腰を下ろした。


 ふと、数日前に届いた合格通知と一緒の手紙のことを思い出す。


 新入生の挨拶――ちゃんと暗記できたんやろか?


 昨晩、うちらはちょっと遠めの国での式の挨拶例をリタに教えたんやけど……。


 アオイと目が合った。おそらくアオイも同じこと考えてたんやろな。


『なぁなぁ、リタ』

「ん?」

『この後の挨拶は大丈夫そうですか?』

「大丈夫よ、2人のおかげで何とかなりそうね、2人ともありがとう」

『よかった』

『ですね』


 リタとそんなやり取りしてたそのとき――


「リ~タ~さん!」


 きゅるんとした声が教室中に響いた。声の主は、金髪ポニーテールの可愛いらしい女の子。その隣には、濃いブラウンの髪を左右に分けてカールさせた、大人しそうな男の子が立っていた。


『ロックフォルト公爵家の娘と、次期皇帝の男やな』


 うちがそう言うた瞬間、リタの顔が一気に曇った。不機嫌そうな目が、そのふたりに向けられたのが分かった。


 うちがそう言うたら、明らかにリタの顔が不機嫌になった。


「なにか用?」

「冷たいですね~、私はメフィー・ロックフォルトです!」

「僕は、ボルト・ルマーンだ。君がすべてのテストを満点で通過したと聞いてね、魔法陣の問題をどうやってクリアしたのか知りたくて」

「その頭は空っぽなの? 自分で工夫してみなさいな」


 そら、リタの答えは“精霊魔法には魔法陣が存在しない”やからな。つまり最初から“答えなんて書いてへん”ってもんや。


『言い過ぎちゃう?』

「なっ……!」


 ボルトは面食らった様子やった。そりゃそうやろ、初対面で仲良くしようと声かけた相手に、頭空っぽ呼ばわりされたらな。


「私はリタ。貴族は嫌いなの。関わらないでくれる?」


 その一言に、教室中の貴族たちがざわついた。

 うん、そら当然の反応やわ。ほんまストレートに物言う子やで。


「冷たいですね~。何があったかは知りませんけど、私は貴族ですけど当主じゃありません! だから関係ないです!」


 メフィーは、リタの言葉を意に介さず、堂々と胸を張って言い返してきた。うーん、何かよく分からん理屈やけど、本人は本気みたいや。


「そうだな。僕は貴族じゃなくて“皇族”だ。だから僕も関係ないな」



 いやいや、なんかちゃう気がするけどな……。


「はぁ……じゃあ、当主の娘も皇族も嫌い!」


 リタはバシッとそう言い放って、そのまま席を立ち、教室から出て行った。


『ええんか?』

「なにが?」

『過去にあったことはしゃあないけど、彼ら自身が直接関係してたわけちゃうやん』

「それは分かってる。でも、同じような人間だと思うと無理ね」


 リタの母親は、貴族の指示で殺された……そう思てるんやから、無理もない。けど、この先の学園生活、大丈夫なんやろか……。


「何が無理なんですか~?」


 急に背後から声がして、うちはちょっとビクッとした。


「……なんで、あなたがここにいるの?」

「そりゃ~そろそろ会場に移動する時間ですし。それより、誰とお話してたんですか~?」

「別にいいでしょ」

「え~気になります~!」


『この子、メンタルめっちゃ強いな……』

『ですね。リタがあそこまで言うたのに、めげないってすごいですね』


「私、貴族の娘が嫌いって言わなかった?」

「言ってましたね~。でも、それでも私はリタさんと仲良くしたいんですよ~」


 メフィーは、ほんまにニコニコしながらそう言うた。めっちゃ素直で真っ直ぐや。


『純粋にそう思うてるな』

「私は仲良くしたくないんだけど……」

「なんでですか~? 私たち、会ったばかりで嫌われるようなことした覚えないですよ~」


 リタは深いため息をついた。


「私はね、貴族に母親を殺されてるの。そんな貴族を好きになれると思う?」


「そうか、それは……済まなかった。許してくれとは言わない。けれど、せめて謝らせてほしい」


 今度は、メフィーの後ろにいたボルトがまっすぐ頭を下げた。


「なんで、あんたが頭を下げるの?」


 リタの問いに、ボルトは顔を上げて真剣な表情で言うた。


「貴族は皇帝の部下だ。いずれは、僕の部下にもなるだろう。部下の非は、僕の非でもある。だから、僕が頭を下げる」


『……けっこうまともな思考しとるやん』


 素直にそう思った。


 貴族だけやのうて、そのさらに上に立つ王族や皇族っちゅうのは、たいてい威張り散らしたり、威圧的やったりするんが普通や。


 民に対して頭を下げる王様や皇帝なんて、これまで見たことも聞いたこともあらへん。


『そうですね』


 アオイも、しみじみ同意しとった。


「どうだかね。私はあなたたちを信じないから!」


 リタはそう言い放って、もう一度だけ二人を睨みつけた。


 ……リタのこの貴族嫌い、今後どないな影響をもたらすんやろなぁ。

 うち、ちょっとだけ不安になってきた。


 ――んで、その不安は、案外すぐに現実のもんになった。


 入学式が終わったその日のうちに、サバイバル学習のためのグループ分けが発表されてな。

 よりにもよって、リタはあのメフィーとボルトと、無理矢理同じパーティーを組まされることになってしもたんや……。



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