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第34話 地の大精霊ノーム

 スペルン遺跡に入ると、驚きの光景が広がっていた。


 すべてが白い石で出来ている綺麗な町並みが広がっていたのだ。


「これが噂にきく、スペルン王朝遺跡ですか」

「ミアン知っているの?」

「えぇ、アカデミーに入るまで家庭教師から勉強を教わっていたのですが、1000年以上昔の事ですが、この周辺大陸を統一した王がいたそうです。その初代王の名は、サーディという名だったそうです。その王が精霊に作らせたのがこのスペルンの街なんだそうですよ」

「精霊に作らせたって、その王も精霊使いだったってことかな?」

「じゃないですか?一応世界三大文明の遺跡って言われているんですよ」


 ミアンの話を、へぇ~と思いながら聞いていた。


『せやで、初代の精霊使いやったんや』

「そっか……」

『でも、私達とは契約しなかったんですよね』

『やね、ノームだけしか契約せんかったんや』

『そうなんだ』

『まぁ当時は、私もミントもこの大陸には居なかったんですけどね』

『せやな』


 初代の精霊使いと聞いて何となく縁を感じた。


「ゴーレムさんどこに連れてってくれるんですかね」


 ゴーレムの後について行くと、町の中央に来た。


 すると、なにかが下から流れてくるような感触があった。


 そして、そこは見えない何かが下から噴き上げているようで、ゴーレム化していない地の精霊達が上空に巻き上げられていた。


「こりゃ、龍脈か……?」

「ジョーイ君、何か知っているの~?」

「あぁ、地中を走っている龍脈が地面から浅い所を走る事があるんだ、そういうところは、ここみたいに魔素が下から噴き上げていたりするんだよ」

「あ~なるほど~この感覚は下から魔素が吹き上げられているからなのか~」


 ジョーイとクロードの話聞いていて、ここに精霊達が居る理由がなんとなくわかった。


「この感触気持ちいですね~」

「だね~」


 ちょっと中央にとどまっていると。


『あいつ寝とん……』


 ミントはそう言うと、隅っこにある黄色い塊の所に飛んでいった。


『ですね……』


 黄色い塊を見た瞬間、黄色い塊の正体がノームで、なぜノームがリタにジャガイモと言われていた理由がなんとなくわかった。


 どうみても大小二つのジャガイモが落ちているようにしか見えなかったのだ。


『おい!おきろ!』


 ミントは、黄色い塊に近づくと、何度も何度もたたいたり、のしかかったり、足蹴りをお見舞いしていた。


 扱い雑だなぁ……、なんて思って、見ていた。


『んあ~、ミドリじゃないか~』

『ミドリじゃないか~やないわ!今はミントや!』

『ん~?』

『約束通り、リタの子を連れてきたんですよ』

『お~アオイ~げんき~?』

『元気ですよ、私も今は、アクアって名前を貰っているんです』

『ん~~?』


 やっと、ノームと目が合った。


「えっと、こんにちは……」

『おぉ~、リタの子か~、雰囲気は違うけどわかるよ~』


 先祖と私の間に何かあるのだろうか?


「えっと、私はラミナ。……契約、してくれるかな?」


 心臓が少しだけ高鳴った。


『いいよ~、おいらに名前をおくれ~』


「名前かぁ……まん丸だから……」


『おいらの名前は、まん丸か~』


 ――え?


「あ、いや違うよ! “まん丸”って名前にするわけじゃなくて……!」


『ふふふ、まんまる~』


『諦めたほうがいいですよ。リタのときも“ジャガイモみたい”って言っただけで、ジャガイモって名になっちゃったんですから』


 ……つまり、リタも私と同じように“それっぽい見た目”を呟いただけで名前とおもわれちゃったってこと?


「そっか……」


「ラミナ? 何もないところ見つめて独り言って、どうした?」


「あ、ううん。そこに、地の大精霊がいるの」


「え? マジか、でも俺には何も見えねぇぞ?」


『そりゃ、精霊使いやないもん。見えるわけあらへんやろ』


「で、この後はどうするつもりだ?」


「そうだね……。えっと、“まん丸”、私たち今夜の寝場所を探してるんだけど、どこか使えるところある?」


『どの家でも使っていいよ~。全部ちゃんと手入れしてあるから、きれいだよ~』


「どの家でも使っていいって」


「よし、じゃあ俺は広くてのびのびできる家がいいな」


「ボクも同感!」


 どうやら、ジョーイとクロードは広さ重視らしい。


『なら、こっちだよ~。ついておいで~』


 まん丸のあとを、先ほどまで案内してくれていたゴーレム二体が再びついていく。


「案内してくれるって」


「へぇ、じゃあ行こうぜ」


 まん丸たち、地の精霊に導かれてたどり着いたのは、遺跡の中でもひときわ大きな建物だった。


『ここなら広いよ~』


「ここなら広いって……」


「って、おいおい、これって……城じゃねぇか!」


 白亜の壁に大きな門。どう見ても“城”としか思えない建物だった。


『好きに使っていいよ~』


「好きに使っていいって……ほんとに?」


「寝られるのかよ……」


「中に入ってみよ~」


 クロードが興味津々に歩いていくのを追いかけて、私たちもあとに続く。


 中も、外と同じく一面が白で統一されていた。壁も床も、柱までもが清潔感のある白で染まっている。


「なんか……絵とか壺とか置いてあるイメージだったけど、そういう装飾は一切ないんだな」


『作ったほうがいい~?』


「いや……作らなくていい……」


「どうしたの?」


「まん丸が、“壺とか作ろうか”って言ってきたから……」


「なるほど……。まん丸って、壺も作れるんですか?」


『まん丸はな、物作りに特化しとるからなぁ。土でも金属でも、素材があればだいたいのもんは作れるで』


 たしか……ガラスって、砂から作るんだっけ。

 今度、可愛い瓶とか作ってもらえるかな――そんな期待が、ふと胸をよぎった。


 ジョーイとクロードが城の中を探索しているあいだ、私とミアンもそのあとについて歩いていた。


「土とか金属製なら、いろんなもの作れるみたいだよ」

「へぇ~。さっきの氷のナイフも綺麗だったし、いいですね」


『ナイフ、いるの~?』


 まん丸がこちらを向いて尋ねてきた。


「ううん、大丈夫。今回は解体用ナイフ持ってなかっただけで……」

『なるほど~。また必要なときは言ってね~』

「うん、ありがと」


「……精霊さんがそばにいてくれるって、すごく楽しそうですね」

「うん。ほんと、いろんな意味で飽きないよ」


 そんな会話をしながら、廊下の向こうではジョーイとクロードが大はしゃぎで走り回っていた。あの二人、本当に仲がいい。


 クロードも貴族だったはずだけど、あんまり城の中とは縁がなかったのかな? 一方で、ミアンは静かに歩いていて、あまり興味がなさそう。おそらく彼女にとっては、こういう場所は特別じゃないのかもしれない。


 私自身も、どこか場違いな気がして――でも、不思議と居心地が悪いわけじゃなかった。


「よっし! 俺、この部屋にする!」

「ボクはこっち~!」


 ジョーイとクロードが部屋を選び終えるのを見て、私たちも近くの部屋を適当に決めて入った。


 中に入ると、そこも白一色の空間だった。壁も、床も、家具もすべてが白い石で作られていて、まるで異世界の美術館にいるみたいだった。タンスやクローゼットもきちんと備え付けられていて、試しに開け閉めしてみると、ちゃんと機能していた。


「すごいですね、白石製のタンスとか初めて見ました!」

「私も。今まで木製のしか知らなかったから、新鮮」


 ただし岩製らしく、ひとつひとつがちょっと重い。それでも、作りは丁寧で、全体に精霊の手が行き届いているのがわかる。


「さすがに、お布団はないね……」

「でも、魔物に襲われる心配もないし、屋根の下で休めるだけでも十分じゃない?」

「たしかに……。野外で贅沢言ったらバチが当たりますよね」


 本当に、これだけの環境で休めるなんて、贅沢すぎるくらいだ。


 そのあとは、廊下で焚き火を起こして、さっき解体したミニブラックバードの肉を串焼きにして食べた。ミアンやクロードととりとめのない話をしながら、時折笑って――そんな夜は、久しぶりだった。


 こうして、スペルンの夜は静かに更けていった――まるで、昔の精霊たちの夢の続きを見ているかのように


 火のゆらめきが、石の壁に静かに映っていた。


「面白い」「続きが気になる」「応援する!」と思っていただけたら、


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