第336話 奴の狙いは?
精霊達の力を借りればいい気がするけど——
「あの、私精霊使いなんですけど、精霊達の力を借りればすぐに捕まえられると思うんですけど……」
「なるほどねぇ、ヤーハンに関しては任せようかねぇ、けれど、クロウはねぇ……」
「何かあるんですか?」
「支持する連中がいるからねぇ、騎士団連中もねぇ、そうなると正面から行くのかい?」
「ん~?」
捕まえるのに正面から行っちゃだめなのかな?なんて思っていると——
『おそらく拘束した後の事でしょうね』
「あぁ、捕まえても城から出してもらえずにこっちが捕まると」
私の場合は精霊達が暴れるとは思うけども——
余計な被害を避けるためにって事かな?
「そうさねぇ、ならば正統な後継者であるエリザベス王女に来てもらうのがよさそうだねぇ」
「大義名分みたいな、ってこと?」
「そうさねぇ、ただ、王女は継承権を破棄した身、それだけじゃぁ大義名分にはならないからねぇ、使徒さまが証言してくれるなら十分なんだがねぇ」
---
たしかに、アカネが証言すれば確実なものだけど——
証言してくれるのかな——
というか——
アカネは見た目ただの子どもなんだけども——
「あの~、フューリーさんは、使徒様がどういった子か知っていますか?」
「アカネという名の子どもってくらいしか知らないねぇ」
「アカネ自身を連れてきても信じてもらえるのでしょうか?」
「ふむぅ、そこであんたの出番じゃないのかい?」
「ぇ?」
「あんたの噂は王都でも有名だったよ、地神ウォンバル様に愛された子ってねぇ、しかも今はウォンバル様の子が側に居るんだろぅ?」
「あぁ、スコルとハティ……」
「その子らにアカネ様を連れてきてもらうことが出来ないのかい?」
どうなんだろう——
「それくらい構わん」
どこからか声が聞こえ、辺りを見渡すと民家の屋根の上に人型のスコルが居た。
上——
見上げて——
---
「そんなとこで何やってんの……?」
「決まってるだろ、お前の護衛だ、我々の任務を忘れたか?」
そんなこと言っていたっけ?
「忘れてるようだな……、出会った時に言ったはずだぞ、ウォンバルからお前を守れって言われていると」
「そうだったっけ……、でも、いつも側に居なかったですよね?」
『おったで』
『いましたよ』
『スコルはいつも屋根の上から見てたよ~』
あれ?精霊達がそういうのならずっとそばに居たのだろうけど——
ハティはついてくることが多いから知っていたけど——
いつも屋根の上から見てたんだ——
本当に気づかなかった——
「ずっとそばに居たがな」
「全然気づいていなかった……」
「当然だ、気づかれずに護衛するのが普通だろうが」
そうなのかな?
「そうなんだ……、スコル様、アカネを連れてこれるってことですか?」
「あぁ、それくらい問題なかろう」
---
「だそうです」
「あのお方が?」
「はい、ウォンバル様の娘さんです」
「フューリーよ、本来の姿を見せたほうが良いか?」
「可能であれば……」
フューリーは、そういうとスコルに向かって深々と頭を下げていた——
スコルの答えを聞くや否や、スコルは瞬時に本来の狼の姿に戻った。
大きな——
赤と白い毛並み——
狼——
「おぉ……」
その姿を一目見たフューリーが地面に膝をつき地面に額を付けているのかと思えるくらいに頭を下げていた。
深く——
畏敬——
「フューリーよ、頭をあげよ」
「ははっ」
「クロウを捕らえるとき、私かハティが手伝う事を約束しよう」
「ありがとうございます」
フューリーは再び頭を地面につけている——
---
「よい、そのあたりもウォンバルが望むだろうからな」
そう答えるとスコルが瞬時に人の姿になっていた。
シュッと——
「あの、それじゃあ、当日、近くのブロイの町で」
私はフューリーが立ち上がりやすいように手を差し伸べた——
そっと——
「そうだねぇ、これで十分だろうねぇ」
「そうそう、ラミナよ、お前が口にしたヤーハンという男が、トロランディアからクレイジーラットを取り寄せているぞ」
「ぇ!?」
驚愕——
「どうするつもりなんだろうな」
ヤーハンの事だから、絶対にろくでもない事に使うのが目に見えている——
「それって、いつの話ですかね……?」
「だいぶ前の話だな」
私はミント達を見た——
『気づかんかったわぁ』
『ですね』
---
「精霊達が気づかないって……」
「ヤーハンは色々な方法で教えてくれるからねぇ、ある時は指定された場所の小石の置き方で、ある時は複数のメモを街中に隠して情報をくれるんだよ、私が知っているだけでもねぇざっと30種あるからねぇ、それもヤーハン自身が仕込んでいるわけじゃなく、彼に近い者達がやってるのさ、精霊様でも気づかぬレベルでやり取りしてるんだろうねぇ」
まぁ、クロウとの間では鳥と暗号を使っていたし、考えられないことでもないけれど——
巧妙——
「それを知っているってことは、神に近いものだから……」
私はスコルを見上げて聞いた——
「当然だな、さぁどうする?」
「今そのクレイジーラットはどこに……?」
「王都ノルトハイム沖合を航行している船の中だな」
「ミント、アクア」
『わかりました。私が対処しておきますね』
『ほなまかせるわ』
「ノルトハイム沖合って事は、トロランディアからじゃないよね……、ミネユニロントのどこかの港町からだよね……」
ルマーン帝国やメレス王国のある大陸と、トロランディアやステルツィア、ミネユニロントのある大陸の間を流れる海峡の流れを考えると自然とその答えになる——
---
「そうだな、やつらは意図的にバラまいていったぞ」
「なんてことを……、ってか、町と町の間が離れているところが多くて日数かかるから感染した人が運ぶのは無理だからミネユニロントの北部までで感染が広がってないって聞いたんだけど」
「そりゃそうだ、奴は中継を挟んでいたからな」
「……、そこまでして何が狙い何だろう……」
なんというか、ヤーハンを捕らえないと余計な被害が広がりそうな気がしてきた——
焦り——
「さぁな」
こうしてる場合じゃなくなった。今から急ぎ王都に向かいヤーハンを捕まえ誰からの接触出来ないようにしないと!
「今から王都に行こう!」
「行ってどうするんだ?」
「捕まえないと!無駄な被害が広がっちゃう」
「そうだねぇ、捕まえたら生かして私の元に連れておいで」
「ぇ」
「なぜこんなことをするのか知りたいのだろう?」
「そうですけど……」
フューリーは、幻術スキルで何かする気だ——
「わかりました」
「乗るか?」
「お願い」
私が言うと、スコルは屋根から飛び降り、降りる過程で狼の姿になった。
ドサッと——
大地が——
揺れる——
私がスコルの背中に飛び乗ると、スコルはすぐにノルトハイムに向かって走り出した。
疾風のように——
風が頬を叩く景色が流れる——
ヤーハンを急いで止めなきゃ——
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