第333話 過剰支援?
臨時治癒院前に戻ってくると、グレイブを中心にスラムの人達が集まって何かを話していた。
ざわざわと——
時々聞こえる単語からは、セレス農園に行く順番とかを決めているのかな?と思った——
私にはもう一つやることがある——
「まん丸。スラムの人達が住める家をお願いしていい?」
『は~い、これだけ来るなら~、地下水路も整えようか~』
『そうですね、海も近いですし、本格的なものにしましょうか』
『じゃあ、地下水路も作るね~』
『お願いします』
まん丸とアクアで何やら話が進んでいく——
「地下水路?」
『そうだよ~、ラミナ一人だったら地面にしみ込ませればいいし~、町の側だったら、その町に排水流せばいいけど~、規模が大きくなるならね~』
『そうですね、ラミナならクリエイトウォーターで水を確保できますが、全員が全員水属性じゃありませんからね、それなら飲み水もしっかり確保したほうが良いでしょ?』
最初に創った家々は、そういったシステムはなかったのかな?なんて思いながら聞いていた——
「どうやってきれいな水を確保するの?」
『クリーンスライムが居れば永久機関になりますよ』
「クリーンスライム?」
『ルヴァ村の横を流れていた川にもいた子達です』
「あぁ。青いコアのあるスライム」
『そうです』
「あれが川の汚れをきれいにしてるって聞いたけど、近くにいるの?」
『いますよ、ロスロイの地下水路に沢山いますよ、彼らは汚れのあるところを好みますからね』
「排水だからか……」
『えぇ、なので、今回まん丸に一度ロスロイの地下水路につなげてもらい、一部のスライムをこちら側に追い込むんです』
「あとは排水が流れれば……」
『そういう事です。ついでに、海の水もろ過してもらいつつ、飲める水にすれば良いでしょ?』
「それで井戸を作ると……」
『えぇ、魔石があれば各家庭に組み上げられる魔道具でもあれば十分でしょう』
楽したいなら魔石をってことね——
それくらいは自分達でやってくれてもいいよね——
「じゃあ、それでお願い」
『は~い』
まん丸が返事すると、訪問治癒師の為の家から1本道を挟んだ地面が、ゴゴゴゴと大きな音とともに、もこもこと盛り上がり土や石が形を成していく——
地響き——
スラムの人達用の家が出来ていく——
次々と——
訪問治癒師の家の数よりも数倍の数の家が出来上がるのを見ていて、これはもう一つの宿場町みたいな状態だなぁなんて思っていた——
「今度は彼らの住む家ですか?」
「はい、崩れかけた家とか路上で寝泊まりしていましたし……」
「そうですね、ですがここまでする必要があるのでしょうか?」
「ぇ?」
疑問——
「極端な話をすると、住む場所、働く場所がラミナ君の手によって用意されましたよね」
「うん」
「そうなると、自ら進んで働こうという意思が芽生えるでしょうか?」
「えっと……、食べるものはセレスのところでもらって、だらだらしちゃうって事?」
「可能性の話ですけどね、そして、ここはロスロイの外ですからね、魔物に襲われる危険が出てくると思いますよ」
「あ~城壁が要りますかね……?」
というか、今まで魔物に襲われた記憶がないんだけど——
「ってか、この近くって魔物いるんですかね……?」
「居るはずですよ、ただ今はスコルさんとハティさんが側に居るからでしょうね」
『せやなぁ、本来この辺りにいる奴らは皆離れとるもん』
「絶対的強者から逃げてると……」
「えぇ、彼らが側にいるだけで圧を感じる魔物たちは既にこの地域から離れていると思いますよ」
「じゃあ、城壁は必須と……」
「そこは最低限作り、あとはスラムの人達で何とかしてもらうのも手ですよ」
「働き口って事……」
「その通りです。城壁作りは大きな仕事ですからね、と言ってもお金を払う方が居ればの話ですが」
「お金を払う人って、ロスロイの領主って事?」
「えぇ、ですが、今は不在ですからね」
「そうなの?」
「えぇ、じゃなければ解放軍と王国軍が争わないでしょ?」
「そうですね、じゃあ今は解放軍が領主って事?」
「そうなりますが……」
ヴィッシュはそういうと、メーガンの方をじっと見た。
「解放軍の人達は領主としての行動を起こしていませんよ」
「でしょうね、アリアナ君の部下であるあなたがそういうのでしたら間違いないでしょう」
「町の門にいる人が話しかけてこないのって……」
「そうですね、領主不在で指示がないからというのもありますが、スコルさんとハティさん達を連れている人間とかかわり殺されたくないから等の気持ちがあると思いますよ」
「触らぬ神に祟りなし……」
「まさにその通りですね、実際我々以外がロスロイの町に入ろうとすると、ちゃんと確認しているのを見ていますから、って、話がそれましたね。とりあえず、彼らへの最低限の安全を確保しつつ、働き口は用意しておいた方がいいでしょうね」
「じゃあ、ロスロイとは別にある程度の高さのある城壁ですかね?」
「そうですね、城壁というほどの立派なものではなく、対魔物の侵入を防ぐ程度のものでいいと思いますよ」
「この辺りの魔物って?」
『狼系が多いですね、虫系はいないですが……』
『ロックバーン!』
『あいつらはここまで下りてこんやろ』
「んじゃ、狼系とかの侵入を防ぐ程度のでお願い」
『は~い、どうせなら広くとるね~』
ん?広くとるってなに?って思った瞬間、城壁がどんどんできていく、ロスロイを大きく取り囲むように、スコルとハティと出会った池と畔の森すらも城壁の中に取り囲んでいく——
ゴゴゴと大きく広く——
城壁じたいは厚みが一メートル、高さが三メートル程度の物だった。本当に侵入を防ぐだけの目的とした城壁だった。
「……、これって裏側って村があったところまであったりしないよね……?」
『村があったところも入れたよ~、あとはね~ちゃんと門も作ったよ~』
いやいやいやいや、本来のロスロイの二回り以上大きくなっていそうなんだけど!
驚愕——
『いいんじゃないですか?塩害を考える必要がありますが、安全に農業もできるという事でしょ?』
セレス農園に行ける人が農業をやるかと思えばNOな気がするけども——
「そうだね……」
「お前は何をしている……」
気づけばグレイブが側に居た。
いつの間に——
「えっと……」
「まぁまぁ、グレイブ先生、彼らが安全に住めるように住居と最低限の城壁を作っただけですよ」
私の代わりにヴィッシュが答えてくれた——
助け舟——
「……、安全に住めるのはありがたいが、このエリアをどうするつもりだ?」
「えぇ……、活用してもらえれば……」
私にはそう伝える事しかできなかった——
「ロスロイ外町として使えばいいんじゃないですか」
「元々住んでいた場所はどうするつもりだ」
それは私に聞く事じゃなくないかな——
正直に"知らないよ"って答えたい気分だった——
「なら、あそこを更地にして、先ほどの農園で採れたものを使った料理を提供する場を作ればいいじゃないですか」
「それは先ほど農園を見て思ったが……」
ん~ここまでやったら、そのお店を作るまで支援して、あとは頑張ってくださいの方がいいかな——
「じゃあ、準備ができ次第スラム街の場所を更地にします。更地にするまで私が支援しますが、それ以降は皆さんで頑張ってください……、これでいいですかね……」
「そうですね、際限なく支援していては彼らの為にもなりませんし、グレイブ先生どうですか?」
「ふむ、ありがたくその好意を受け取らせてもらおう、救った命を見捨てるなよと言った言葉がここまで支援されるとは思っとらんかった」
それを聞いて思い出した——
「女の子はどうするんですか……?」
「孤児院のようなものを作る予定だ」
「孤児院?」
「あぁ。農園で食べ物が入るとなれば運営費用はだいぶ抑えられるだろう、子どもたちも農園で手伝い賃金をもらい、ほしいものは買う、小さい子には酷だが、社会というものを学べるからな」
それはそれでいいのかな——
引き取られた先で幸せになれるようにと祈った——
「そうですか」
「では、グレイブ先生、彼らの事を任せても」
「あぁ、構わない、明日までに荷物を片付け新居に移動させるように伝えよう……、おぬしには本当に感謝している」
グレイブは私に向かって深々と頭を下げた。
深く重く——
「いえいえ」
「では、そちらの事はグレイブ先生に任せて、アーニャ君達はどうしますか?」
「そうですね、元々の予定通り訪問治療しましょうか」
「「はい」」
私とメーガンは声をそろえて返事をした。
「そうですか、では気を付けて行ってらっしゃい」
「「「はい」」」
私たちは改めて、訪問治療をするためにロスロイの町に向かった。
歩き出す——
三人で——
ロスロイに住む人たちの命を救うために——
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