第330話 救いを求める者達
翌朝——
夕べは三人で話ながらヴィッシュを待っていたが、会えることなく眠気に負け使われてない病室で寝てしまった。
「おはよ~ってあれ?」
目を開けるとまだ薄暗い時間だった。
『おはようございます。どうしました?』
「まだ朝じゃない?」
『もうすぐ夜明やで』
いつもより早い時間に目が覚めた——
「ん~」
どうしようかな、二度寝してもいいけれど、夜明けのロスロイを見て回ろうかな——
そんなことを思い、身支度を整え枕元で丸くなっているミーシャをそっとポケットに入れた。
「ミャ……?」
「起こしてごめんね、ちょっとお出かけするから」
「ミャ~」
ミーシャは、大きくあくびをするとポケットの中で丸まっていく。
温かい——
階段を降りてロビーに向かう。
静かに——
ロビーに降りてくると、ヴィッシュとアーニャが何か話をしていた。
二人——
「おはようございます」
「「おはようございます」」
「あの~アーニャさんから?」
「えぇ、グレイブ先生と女の子の件でしたら聞きましたよ」
「対応お願いしても大丈夫ですかね……」
「問題ありませんよ、幸い孤児院で働いていた子がいますからね」
対応してくれる職員がいるという事だろうか?
よかった——
「お願いします」
「えぇ、ラミナ君はこれからどこへ?」
「ちょっとロスロイを散歩してこようかと」
「そうですか、まだ暗いので気を付けて行ってきてください」
「はい」
ロビーを抜けて外に出ると、スコルとハティがオオカミの姿で丸まっていた。
大きな狼が二匹——
「ん~?こんな時間にどこに行く?」
「目が覚めたので、少しロスロイを散歩してこようかと」
「ふむ……」
スコルは返事するとハティの方を見た。
じっと——
「姉上が行けばいい、今日は自分の番だろ?」
自分の番?って何の話だろか?
「そうだな、そうさせてもらうか」
スコルはそういうと、っぱっと人型になった。
「あの自分の番とかってなんですか?」
「決まってるだろ、キャットバット達の子守だ」
「あぁ、狩の練習ってやつ?」
「ん?精霊達からそう聞いてるのか?」
「ぇ?違うの?」
「まぁ、狩りなのは事実だからな、気にするな」
「ぇ?」
『狩の練習が大半なのですが、朝一はキャットバット達と一緒に、クレイジーラットに忍び込まれた荷物を持った馬車を追ってるんですよ』
「あっ、そうなんだ」
「お前のポケットの中にいる奴は経験が少ないからな、何事も勉強だ」
ミーシャのためでもあるって事かな?
というか、もしかして、他の町へ感染が広がらないようにしてる?
「もしかして……、他の町へ広がらないように?」
「それは、たまたまそうなってるだけだな、もうじきキャットバット達が来るから見てるがいい」
「ぇ?」
そもそも他のキャットバット達はどこにいるんだろうか?
そんなことを思っていると、研究所の後ろに広がる海の方から日が顔を出しはじめた。
オレンジ——
光——
それと同時に研究所の屋上の方から複数のキャットバット達がこっちに飛んでくる。
バサバサと——
「ふむ、それでは自分は行ってくる」
「あぁ、気をつけろよ」
キャットバット達は私達を気にすることなく、街道に沿う形で飛んでいき、その後をハティが追っていく。
「ミャ!」
ミーシャがポケットから顔を出して一鳴きする。
「今日ぐらいは構わない、ゆっくり甘えとけ」
「ん?」
『行きたくない!って言ったんだよ!』
「そうなの?なにかあるの?」
「いつもは我々が攫っているからな」
「ぇ?」
『ラミナと一緒に寝ているところを、こっそりと連れていかれてるんですよ』
『ミーシャからみたら、気づけばハティかスコルに首の後ろを咥えられ強制連行されてるってことだな』
「あ~そうなんだ……」
私の中では自発的について行ってるものかと思ったけど違ったのか——
「ミャー!」
なんだか抗議の声をあげている気がするが——
怒ってる——
「まぁゆっくりしていいってことだし、今日はそこに居なよ」
「ミャ♪」
ミーシャは、ご機嫌な声を出すと、すぐにポケットの中で丸まり始めた。
嬉しそう——
---
「んじゃ、とりあえずロスロイの町を回ってこよう」
今日も町に入るときに衛兵たちに声をかけられずに門をくぐる。
精霊達が辺りを漂っている位で、とても静かな状態だった。
ふわふわと——
「誰も居ないね……」
「夜が明けたが店が開くまで時間があるからな、今はどこもこんなものだろ」
「そっか」
スコルと一言二言交わしながら町を歩く、大通りを越えて港の方まで来るも、とても静かな状態だった。
足音だけ——
「ん~なんもないね……」
初日の時みたいに、死にそうな人たちが並べられているような様子もなく、停泊している船も一隻だけという静かな夜明けだった。
穏やか——
引き返し外の治癒院へ戻るとき、町の入り口近くまで来ると、来る時とは逆に多くの人が町の外にぞろぞろと出て行くところだった。
「ぇ?何かあるのかな?」
『彼らは、ラミナに助けを求める者達ですよ』
「ぇ?」
『グレイブに言われましたよね、救った命を見捨てるなよと』
「あぁ、うん……、もしかして……」
『その通りです。女の子だけではなく、スラムに住む者達が皆あなたを頼っているのです』
「ぇ~!?私の中じゃ、女の子だけのつもりだったんだけど!?」
驚きと困惑——
「お前はそうだったかもしれないが、周りはそう思っていないって事だろ、なんであの子だけが!とか思われた方がいいのか?」
「いやそれは……」
それはダメだと思うけど——
「だろ、ならばやれるだけのことをやればいい」
「うーん……」
期待に応えられるかわからなけれど、やれることはやってみるか——
幸いロスロイの外は土地が余っているし——
「ヴィッシュ先生にもう一度相談しないと……」
『それはいらないんちゃう?』
『同感ですね、ヴィッシュにとっては想定内の事だと思いますよ』
「そうなの?」
『まぁ、あいつは人生経験長いしな、リタの時やった事位想定してるだろ』
「ってことは、リタの時も同じような事が……」
『ありましたよ、あの時はリタの側には居ませんでしたが、リタの話を聞いていますからね』
アクアの話を聞いて思ったことがある。今回と似た状況の話は聞いた覚えがある。フゥと喧嘩別れした話だ、あの話は、数日間ずっと治療に明け暮れ精霊達もそれぞれの役割を果たしていた話だった記憶がある——
「ん~もしかしてだけど、フゥと喧嘩した時の事だったりする?」
『フッフッフ、そうです。あの時リタも同じような状況に直面しましたからね』
「でもさ、これ手を貸すのはいいけど、私に依存しちゃダメってやつだよね?」
「ほぉ、その年でそこまで考えられるか」
「あっ、いや……、前にミントとアクアからそういう話を聞いているから……」
「そうか、まぁ手を貸すのは構わないが、あくまで自分で立ち直るまでの話が一番いいな、奴らを見たところ働こうと思えば働ける連中が多いようだからな」
「そうなの?」
「あぁ、子どもと年寄りを覗けば大半が働けるだろ」
夕べの治療を思い返してみると、どこか大けがして部位欠損をしているような人達はいなかった記憶がある——
「じゃあ、スラムに居たから働けなかったとかそういう理由だったり……」
「だろうな、一人一人適正が違う、それぞれに適した場所でなければ、長くは続けられんだろ」
ふと思った、アーニャが私に言った雰囲気の色だ、それで一人一人の適正って見ることは出来ないんだろうか?
性格を言い当てられるのなら出来るような気がする——
私は、急ぎ臨時治癒院に向かって走り出した。
タタタと——
息が弾む——
アーニャならわかるかも——
スラムの人達の未来——
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