第329話 雰囲気の色
葬儀が終わると、一気に静かになった。
し~んと——
商業ギルドの人達からもらった配給品を口にしながら泣いていたり、思い出話に花を咲かせている者もいた。
ぽつぽつと——
会話——
ここでの役割は終わったかな——
「メーガンさん、帰りましょう?」
「そ、そうね……」
「どうかしたんですか?」
「いえ、噂は聞いていたのだけど、精霊達の姿を見せてもらえるとは思っていなくて……」
あぁ、精霊達が姿を見せたのっていつ以来だろう?
「学園だと、結構姿を見せている気がする……」
「そうなんだ……」
「というか、どうしてあんな盛大な葬儀になったんだろ……」
『アーニャですよ、彼女が提案していたんです』
「ぇ」
『ここにいる皆が納得できる葬儀にさせるから、死体を処理させてほしいってな』
その結果が、精霊達が姿を現した葬儀——
なるほど——
---
「あれ?過去にも似たような事があったの?」
『ありましたよ、ルマーン革命で亡くなった兵士たちを見送るときにもやりましたし、今の状況と同じように、流行り病で死者を弔う時とリタの時代にも何度かやっていますね』
「だから、リタを知っているアーニャさんが知っていたと……」
『えぇ、アーニャは実際に見ていますからね』
「そうなんだ……」
私が精霊使いだってことはヴィッシュから聞いていれば何ら不思議でもない——
とりあえず、何のトラブルもなく遺体処理ができてよかった——
「ラミナさん」
声がした方を見ると、リンクル族の男の子と一緒にアーニャが居た。
二人——
「はい?」
「こちらの方を紹介しますね、彼は……」
「よい、自分でする、私はグレイブ・カーンだ、四年前まで商業科で教えていた者だ」
「基礎学年二年のラミナです」
私は丁寧に深々と頭を下げた。
「グレイブ先生、メーガンはご存じですよね?」
「あぁ、当時治癒院で働いていた子だな」
「えぇ、その通りです」
「そうか、では私は戻る」
「ヴィッシュ先生には会わないのですか?」
「どちらにしろ、明日の朝会いに行くことになるだろうからな」
グレイブはそういうと私をじっと見た。
女の子を連れていくという事だろう——
「はい、お待ちしています……」
私はとっさに答えた。
「そういうことだ」
「わかりました。ヴィッシュ先生に伝えておきます」
「あぁ」
グレイブはそういうと、背を向けて去っていった。
小さな背中——
「何かあったんですか?」
アーニャが前を歩きながら私に問いかける。
「両親がすでに亡くなっていたんですが、女の子の命を助けたんです」
「なるほど、死なせてやらなかったのか?ですか?」
「はい……、私は救える命は救うべきだと思ってますから……」
「そうですね、ラミナさんは、その女の子を助けこの先の人生をサポートをしたいんですか?」
「私自身だけでは難しいと思います。だけど、私には環境を整える力はあると思います」
「それで、ヴィッシュ先生を頼ろうと思ったんですね」
「はい」
「なるほど、わかりました」
アーニャはそういうと、立ち止まり静かに目を閉じた。
しばらくの間目を閉じ立っているだけだったが、ゆっくりと目を開けた。
「ラミナさん、応えてくれる人が現れそうですよ、あなた自身の力は必要ですが、あなたを取り巻く人たちがあなたの想いに応えてくれるはずです」
「ぇ」
私は驚いた。アーニャは未来でも見ていたのだろうか?
「なんでわかるんですか?」
「私のスキルのおかげです。私はほんの少し先の未来が見えるんです」
エルフで、未来を視るスキル持ちというと、リリアンの事が思い浮かんだ——
「なんというか……、エルフの人って未来を視るスキルを持つことが多いんですかね……」
「私以外にも、そういうスキルを持ってる人を知ってるんですか?」
「はい、ステルツィアの人なんですけど……」
「あぁ、リリアン・スターブレイドですか?」
「ぇ……、知ってるんですか?」
「……その名前、久しぶりに口にしましたね。だってリリアンは私の姉ですから、と言っても何十年と連絡とっていないんですけどね……」
占星術で未来を視るリリアン、そして何らかの手段で少し先の未来を視るアーニャ——
姉妹——
なんというか——
「そうだったんだ……」
「えぇ、さぁ戻って今日は休みましょうか、スラム街の人達だけではなく、周辺エリアの方まで対応しましたし大分疲れたでしょう?」
私はアーニャの言葉を聞いて、「そうだったの!?」と思った。道理で思った以上にぞろぞろと人が来ていたわけだ——
---
「いえ……、私はそこまでつかれてないかも……」
精霊達の子を量産する時はさすがに精神的に疲れはしたけども。治療する過程ではそこまで疲れたような感触はなかった——
「私はあと数回浄化をしたら倒れそうなんですけどね……」
メーガンがアーニャの問いに答えていた。
ぐったり——
「私も似たような状況ですよ……」
多分基本の魔素の量の違いな気がするけども——
そんなことを話ながらロスロイの町の門をくぐって外に出たとたん——
「ミャ!」
小さな鳴き声と共に勢いよく私の胸に、ミーシャが飛び込んできた。
バフッと——
「ミャ!ミャ!」
『どこ行ってたの!って言ってる!』
フゥが通訳してくれる。
「あ~ごめんね、ロスロイの人達を治療してたの」
「ミャ!」
『私もネズミいっぱいとった!だって』
「お~今日もありがとうね~」
ミーシャの小さな頭を撫でると気持ちよさそうな表情を見せていた。
ふわふわ——
温かい——
---
「かわいいですね、ラミナさんはキャットバットの言葉がわかるんですか?」
様子を見ていたメーガンに聞かれ——
「私自身がわかるというより、風の精霊さんが通訳してくれるんです」
「へぇ~いいですね、魔物って相手とコミュニケーションとりたいと思わないと意思疎通できないって言われますからね~うらやましいですよ」
「そうですかね……」
何と答えていいのか分からず言葉に詰まってしまった——
「ラミナさんは藍色が好きですか?」
突如アーニャに唐突色の事を聞かれ驚いた。
「ぇ?藍色ですか?濃い青は好きですけど……」
「なるほど、あなたの雰囲気の色とでもいえばいいんですかね?ヴィッシュ先生じゃないけども、私もそれなりに人を分析することが出来るんですよ」
「そうなんですか?」
「ラミナさんは、お友達と過ごすより、精霊達と過ごしているほうが好きなんじゃないですか?」
「そりゃまぁ、精霊達は気を使う必要ないし……」
ミアンはともかく、ミッシェル達とは少し気を遣う……。
私は正直に答えた——
「ですよね、あとはそうですね、物事を決めたらとことん探求するタイプでしょう?」
『せやなぁ、じゃなきゃ今の治療法とか考えんわな』
『そうですね、ラミナの一言が魔素硬化症の治療を形作りましたからね』
「なのかな……?」
精霊達からしたら、アーニャの言葉は当たっていると思ったのだろうけども、私からしたらよくわからなかった——
「集中力が強みじゃないですかね?」
『当たってるな、何時間も同じ作業を繰り返し繰り返しやっても苦じゃなさそうだしな』
『だね~』
それは練習のため、相手の命を救うためだし……。
「ぇっと……なんでわかるんですかね……?」
「その人の持つ雰囲気の色で大体の性格がわかるんですよ」
「そうなんだ……」
不思議——
「さぁ、つきましたし、ロビーでご飯にしましょうか」
思うんです。治癒院の前には沢山の家があるのに、そこじゃなくて、ここでご飯食べるの……?と——
---
その後は、ロビーでセリス農園産の果物とセリスのパンを二人に渡し、夜遅くまで雑談をしながら過ごした。これから組む仲間のことを少しでも知るために——
果物甘い——
パン香ばしい——
メーガンの話——
アリアナとの出会い——
暗部での活動——
でも——
治癒への想い——
アーニャの話——
リタとの思い出——
質問ばかりしていた日々——
学ぶことの喜び——
笑い——
温かい時間——
これから一緒に戦う仲間——
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