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神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~ 【原作完結済】  作者: 川原 源明
第18章 動き出す厄災、救国の聖女

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第328話 最期の別れ

 治療を続けていると、先ほどの男の子が色々と手伝ってくれていた。


 動いている——


「死体は一か所にまとめてやれ」「動けない奴はルブロの家の前にあつめろ」「症状のない奴はこっちに集まっとけ」


 的確な——


 指示——


 動ける者達に色々と指示を出し、症状のある人を一か所にまとめてくれたのですごく助かる。


 いったい彼は何者なんだろうか?


 見た目通りの男の子じゃなく、リンクル族っぽいけども——


 そんなことを思いながら集められた人たちを治療していた。


 治療をしていると、同じグループとなったメーガンと、アーニャと呼ばれていたエルフの女性が駆け寄ってきた。


 タタタと——


 二人とも治癒師の制服をきている。


 白い——


「やっぱりここに居ましたね」


「さすが、アーニャ先生、探し物は本当に得意ですね」


「当然です。さぁメーガン、ラミナさんを手伝いましょう」


「はい」


 アーニャ先生?


 メーガンは学園に入れなかったってヴィッシュは言っていたけども——


 アーニャが先生をやっていた時期に治癒院にきて何らかの形で交流を持ったのだろうか?


 癒し手が増えたことで、どんどんと治療対象者が減っていく。


 次々と——


「手術する必要ある人いないよね?」


『おらんで』


「そっか」


 魔素硬化症まで進行している人が居ないだけまだましなのだろうか?


 というか、ヴィッシュの説明でその部分に触れてなかったけれど何か理由があるのかな?


 スラム街と呼ばれる場所には、思っていた以上に人が住んでいたらしく、どこからかともなく人が集まってくる。


 ぞろぞろと——


 治癒対象者がどんどん減っていたと思っていたけども、気づけばどんどん増えていく。


 そして、最後の治療を終えたころには、すでにとっぷりと日も暮れ、スラム街では、商業ギルドの人達による配給が始まっていた。


 暗闇の中の松明の光——


 ちゃんと食べていけるんだ。なんて思っていると——


『セレス農園からの物のようですね』


『せやね』


「って、ここに届いてるんだ……」


『ロシナティスからでしたら、ちょうどいい位置ですからね』


『あそこを出港したら、流れに乗るとロスロイが一番最初の港町だね!』


「そうなんだ……」


「ラミナさん、私達も帰ろうか」


 メーガンが肩に手を置いて話しかけてきた。


 温かい——


 帰りたいけれど、最後にもう一つやるべきとこがある——


 助けられなかった人たちの遺体の処理だ——


 配給が始まっても、遺体の側で泣いている人もいる。


 すすり泣く声——


 おそらくは家族やら親しい人が亡くなったのだろう——


「遺体処理したほうが……」


『そうですね、感染源になりえますからね』


「なんといえばいいだろうか……」


 港の方では、かなり雑に扱われていたようだけど、ここの遺体はここにいる人たちの身内だったり親しい人たちだったと思うとなんと声かければいいのかが分からなかった——


 悲しみ——


「私が言いましょうか」


「ぇ?」


「そういうのは年長者である私がやるのが適切でしょう?それに……」


「それに?」


「気のせいかと思っていたけれど、一人知り合いがいますからね」


 え?


「知合いですか?」


「えぇ、あそこにいるリンクル族の男性」


 そう言ったアーニャの視線の先には、両親の死体にしがみついている女の子を心配そうに見ている男の子だった。


 女の子はお母さんと思われる女性のお腹の上で倒れていた子だ、そして男の子は——


「お願いしていいですか……」


 今の私では力不足な気がして、アーニャに任せようと思った——


「えぇ、わかりました」


 アーニャはそういうと、リンクル族の男の子の元に走っていく。


 タタタと——


---


「あの~メーガンさん」


「はい?」


「アーニャさんと知り合いだったんですか?」


「えぇ、私、昔グリーサの治癒院に居たんですよ、その時アーニャ先生から色々と教わったんです」


 思っていた通りの繋がりだった——


「そうだったんだ……」


「えぇ、そしてあそこにいるリンクル族の男の子も、たしか商業科の先生だったと思いますよ」


「ぇ?じゃあ、二人はアカデミーで……」


「えぇ、私が治癒院で働いてた頃に何度か見かけたことがありますから」


「そうなんだ……」


 でも、精霊達が何か思わせぶりなことを言っていたけど——


「ねぇ、アクア……」


『なんですか?』


「アーニャ先生の事知ってたの?」


『えぇ、彼女はリタの教え子の一人です』


『リタにとっては最後の教え子ちゅうてもええ気がする』


『だな、リタが学園を去る直前に卒業した子らの一人だからな』


「そうなんだ……」


 私をどこか懐かしむように見ていた事、何となく納得ができた——


『リタにとってはね~一番思い出のある子だったんじゃないかな~?』


「どういうこと?」


『彼女は、分からないことがあればすぐにリタに質問していたんです』


『だからな、アーニャが居る座学はいつも楽しみにしてたな』


『せやなぁ、いっつも「今日はどんな質問が来ると思う?」みたいな事ゆうてたもんな』


 ヴィッシュが言っていた。リタはただ教えるだけの授業は向かず、質問が飛んでこないと飽きてどこか行くと——


 そんなリタにとって、一番思い出のある子だったんだ——


「そっか……」


『さぁて、俺らの出番だな』


『そうですね』


『近くにいるハティ―にも声かける?』


『声かけんとも聞いとるやろ』


 ぇ?何が始まるの?


「あぁ、聞いているさ」


 そう言ってさっきまで姿を見なかったハティが、白い狼の姿で後ろに立っていた。


 大きな白い——


「えっと……?何をするの……?」


「ここにいる者達の葬儀と供養だ、精霊と神に連なる者達が立ち会う葬儀となれば亡くなった者達も納得もするだろう?」


 精霊と神に連なる者達が立ち会う葬儀——


 荘厳な——


「という事は……、みんな魔素を持って行っていいよ」


『よっし!来た!』


『はいはい~貰うよ~!』


『では、またいただきますね』


 アクアの言葉にエセリアもこちらを見てニコニコと頷いている。


『ほな、うちももらうで~』


『ボクももらうね~』


 精霊達が私から魔素を受け取り、それぞれが周囲の人達に見えるよう姿を顕現させていく。


 ふわりと——


 それぞれの色で光——


 ハティが居ただけでもざわついていた周囲が、精霊達が姿を現すことでさらにざわつきが増していく。


 ざわざわ——


 どよめき——


---


「……よく、ここまで生き抜いた。お前たちの歩みは、決して無駄ではなかった。痛みも、恐れも、悔いも、すべてこの地に置いてゆけ。これより先は、安らぎだけが待っている」


 ハティの声が辺りに響き渡る。


 深く——


 優しく——


「残された者たちよ。嘆くことを恥じるな。涙は別れを告げるためのものではなく、繋がりが確かにあった証だ」


 周囲の人達がハティに向かって跪いて深々と頭を下げた。


 静かに——


 そして——


「「「「「「我らは見届ける。精霊も、神々も、そしてこの世界そのものが、お前たちの旅路を抱きしめる。どうか胸を張って、次の一歩を進め」」」」」」


 ハティだけじゃない、ミント、アクア、まん丸、グレン、フゥ、エセリアの声も混じっているかのように、それぞれが声をそろえて言った。


 重なる声——


「「「「「「死は終わりではない。ただ、形を変えて続く道だ。ここに眠る者たちの想いは、お前たちの中で生き続ける。さあ、安らかに眠れ。そして、生きる者たちは……どうか前を向け。我が名にかけて、すべてを見守ろう」」」」」」


 その言葉が終わると、多くの遺体が小さな光の粒子となり天へ昇っていく。


 キラキラと——


 舞い上がる——


 美しい——


「これでよい、魔素の海に帰り、再び新たな生を受けるまで、ゆっくりと休め」


 ハティがそう言って締めくくった。


 静寂——


 祈り——


 涙——


 でも——


 どこか——


 温かい——


 空気——


 失った——


 悲しみ——


 でも——


 見送れた——


 安らぎ——

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