表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/234

第32話 精霊達の索敵と最初の獲物

 馬車から降り立った瞬間、まず目に飛び込んできたのは、一面に広がる草の海だった。丈はくるぶしほどで、風に吹かれてさわさわと揺れ、波のようなうねりをつくっている。遠くには、木々が連なる薄暗い森の影も見えた。


 私たちは草を踏みしめながら、クロエ先生の指示に従って整列し、平原の入口に集まる。


「よし、Sクラス全員そろったな。これから五日間、昼までここで過ごしてもらう。ケガをしたらすぐにここへ戻ってこい。あと、森に入るのは自由だが――ゴーレムが出る遺跡には近づくなよ!」


『なぁなぁアクア、ゴーレムってたしか、地の子どもやったやろ?』

『そうですね。私たちがいれば問題ないと思いますよ』


 ……つまり、遺跡に行くつもりってこと? 


「行く気なの……?」

『そりゃ、ノームはそこにおるからね』


 ノームがいるなら、行かない理由がない。


「ラミナ、今なにか言ったか?」


 ――しまった、また声に出してた。


「あっ、大丈夫です!」 

「そうか。それじゃあ、解散だ! 健闘を祈るぞ!」


 先生の合図で、生徒たちはそれぞれパーティーごとに分かれて散っていく。


「ミアンよ、俺たちはどうする?」

「そうですね。課題の素材はすべて森の中で手に入るものなので、そっちへ行きませんか?」


 話し合った結果、私たちのパーティーは、ミアンがリーダーを務めることになった。


「はい」

「了解」

「は~い」


 陣形は、ジョーイを先頭に、私、ミアン、クロードの順で森へと足を踏み入れる。


『狼だらけやなぁ』

『はい、相当数がいるみたいですね』


 ……ミントとアクアが索敵してくれてるのかな?


「ジョーイくん、精霊たちが狼が多いって」

「わかった」


「精霊さんって、ほんと便利ですね」

「まあねぇ」


 森の中――つまりミントの得意分野に入ってきた。


『よっしゃ! ラミナ、両手前に出して!』


 いきなりミントが声を張り上げる。


「え?」


 言われた通りに両手を出すと、


「どうしたんですか、急に?」


 そのとき、どこからともなく黒く小さな鳥の死骸――蔦に絡まったミニブラックバードが飛んできて、私の手の上に落ちた。


「え? うわっ……!」


 反射的に声を上げてしまった。


「なんだよ、うるせぇな……。ミニブラックバードか……。いつの間にやったんだ……?」

「今、右の方から飛んできましたよね~」


 クロードは冷静に方向を見ていたようだ。


「……この子、まだ温かい。でも死んでる。それに、この蔦……ワイルドプラントのやつだよね?」


「なんか、精霊さんが両手出せって言うから出したら、勝手に……」

「精霊がやったってのか?」

『せやで~』

「そうみたい」


「……好戦的なのか、協力的なのか……。まあいい、どこか見晴らしのいいところで解体しよう」


「ばらすって、解体ってこと……?」


 ミアンが確認するように尋ねる。


「ああ。血の匂いで狼をおびき寄せる」

「そんなことして大丈夫なの?」

「問題ない。ラミナの精霊が力を貸してくれるなら、対応は可能だ」


『まかせとき。気合い入れてやるわ』

『私も準備はできています』

『この先に開けた場所があるから、やるならそこでええんちゃう?』


「精霊さんたちは、やる気満々みたい。それと、このまま進めば開けた場所に出るって」


「了解。そのまま行こう」


 歩き出すと、今度は次々とミニブラックバードの死体が、蔦に絡まれたまま私の腕の上に落ちてくる。全部で六羽分。完全に精霊たちの仕業だ。


『なぁ、ラミナ』

「ん?」

『ホーンラビット、この森にはおらんで』


「え?」 


『本来ならこの森に住んどるんやけど、狼が増えすぎて生態系が崩れてるねん』


「……ってことは、課題達成できない可能性あるってこと?」


「どうした?」


 ジョーイが前を歩きながら問いかけてくる。


「森にホーンラビットがいないって。狼が増えすぎて、生態系が崩れてるらしい」

「全くいないのか?」


『森の中にはおらんけど、遺跡の中にはおるで』


「遺跡の中にいるって……」

「は? ゴーレムと戦うのかよ」


「中にいるってだけで、別に行かなくてもいいんじゃない?」


『ノームもおるから、行かへんとあかんやろ』


 ノームと接触するなら行かざるを得ないけど……他のメンバーの迷惑にはなりたくない。


「……まあいい。とにかく、まずは進もう」


 そして、しばらく歩いた先――森の中にぽっかりと空いた、視界の開けた場所へとたどり着いた。


「面白い」「続きが気になる」「応援する!」と思っていただけたら、


『☆☆☆☆☆』より評価.ブックマークをよろしくお願いします。


作者の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ