第317話 現実問題
アリアナの仲間たちの治療を終えて一息ついた。
ふぅと——
息を吐く——
これからすべきは、ここで来る人を待つ治療ではなく、こちらから行く治療をしないとだめだ。
この後、ヴィッシュに会いに行く際に、相談してみよう——
「ラミナ、感謝する」
診察室で一息ついていると、アリアナが入ってきてお礼を言った。
「いえいえ」
「治療費はいくらだ?」
「いらないですよ、昨日も王国軍の人を相手にしましたけど、お金を取っていません」
王国軍の人からも「お代は」と聞かれたがすべて断った。
「そうか……」
「ところで、皆さんの話を聞く限りナノフリーに噛まれてから症状が出るまで三日程、症状が出てから数日以内ならば助かる可能性が高いです」
「あぁ、そうみたいだな」
「なので、町の人をここに誘導するのをいったん待ってもらっていいですか?」
「ん?なぜだ?」
---
「みんなさんの話を聞いていると、最初の症状が出て一~二日は、軽い症状だったけど、三日目にはいると、急に歩くのもつらくなるようなレベルですよね?」
魔素が回復しなくなっているのだろう。
「まぁ、今回人の手を借りて歩いていたやつらは確かにそんなこと言ってたな」
「となるとですよ、街中のあちらこちらで咳をしている人いるじゃないですか」
「あぁ」
「彼らは症状が出始めてから、一~二日目、症状も軽いから治癒院に行かなくても大丈夫だろって考えている人達だとして、そんな人たちが三日目歩くのがつらいレベルになったら……」
「なるほど、本当に助けが必要な奴らは家にいる可能性があると」
「はい、おそらくですが三日目くらいから急激に症状が重くなるんだと思います」
「で、どうするんだ?」
「ヴィッシュ先生に相談するのですが、訪問治療をしようと思うんです」
「まぁ、本当に助けを必要とする奴らを助けるなら、それがいいだろうな、だが……」
「だが?」
「誰がやるんだ?」
「私は当然動きますが、治癒院の人……じゃダメですかね?」
---
「いいか?治癒院とは言え無料で診察と治療をしているわけじゃない、治療費が払えないから治癒院に行かないという選択をとるやつもいるんだぞ、そんな奴らの元に押しかけて行って治療して治療費払えって言ったらどうなる?」
「トラブルが起きる……」
現実——
「そういうことだ、幸いお前は治癒院の人間だが治癒院とは別に動いている。お前の考えに同調する仲間を集めることも同時にやる必要があるぞ」
「たしかに……」
「幸いなことに、お前が最初に治療した女が光属性で、お前の考えに同調するらしい」
「え?」
アリアナの方を見ると、診察室の入り口の方から一番最初に治療した女性が顔を出した。
優しそうな目——
「団長は何でもお見通しですね……」
女性がアリアナに向かって言った。
「何年お前の上司をやっていると思っている。お前の考えを許可する。ラミナと行動してやれ」
「ありがとうございます。ラミナさん、私の名前はメーガン、よろしくお願いします」
「いいか、人は報酬無では長続きしない、その報酬を払うために治癒院は治療費という対価を受け取っている。それを忘れるなよ」
「はい……」
重い言葉——
「じゃあ我々は戻る、メーガンも引継ぎしておけ」
「はい」
アリアナはメーガンと共に診察室を出て行った。
---
「ん~治療費か~」
以前にもぶつかった課題だ、私一人なら無料でやってもいいけど、私以外の人には無料でやって、というわけにはいかない。
難しい——
『こればかりは組織である以上仕方のないことですからね』
『だな、セレスのところで作った物を一部販売したらどうだ?コンテナの中にたんまりあるだろ』
「そうしないと、メーガンさんに報酬払えないよね」
『それはないやろ、洗料のお金あるやろ』
「あ~、あれいまでも売れてるのかな?」
『皇族が使っていますし、普通に売れ行き商品でしょうね』
「そっか、そこから報酬を払うのもありなんだ」
『えぇ、一つの手としてはありだと思いますよ』
『ま、この辺りに商会に連なる店がないのが問題だが』
預けてあるお金を受け取るところがないと……。
『そうですね、ラミナ、ヴィッシュのところへ行かなくていいんですか?』
「そうだね、行こうか」
---
臨時治癒院を後にしてヴィッシュの元に向かった。
足早に——
研究施設に着くとヴィッシュがクレイジーラットの方を眺めていた。
じっと——
「先生、終わりました」
「ご苦労様でした。うかない顔をしていますが、なにかありましたか?」
やっぱりバレてる——
「それが……」
アリアナの友人らを診察してわかった事と同時にアリアナに指摘されたことをすべてヴィッシュに話した。
「フッフッフ、本当にリタ君と同じことで悩みますね」
「ぇ」
「リタ君も最初同じようなことで悩んでいたんですよ」
「治療費を取りたくないとかですか?」
「えぇ、実際の話ですが、現在の治療費だけでは治癒院の運営は成り立たないのです」
「ぇ?そうなの!?」
驚き——
「えぇ、リタ君からの要望もあり、治療費に関してはかなり低く設定しています」
「どうやって運営を……?」
「まずはメフォス教会との関係は?」
「創造神メネシス様からの依頼で世界各地に治癒院を作ったのは知っています」
「そうです、その際に治療費の話が出たのです。そして、教会への寄付金の一部を各地の治癒院に回してもらっています。そしてもう一つありますが、そこに関してはこれから向かいましょうか」
「ぇ?連れて行きたい場所っていうのはいいんですか?」
「大丈夫ですよ、むしろ連れて行きたい場所こそが、そこなんです」
「ぇ?」
私はよくわからなかった。
混乱——
するとヴィッシュがポケットから何か札のようなものを取り出した。
見覚えがある——
「では、これに魔素を」
見覚えがある。クゥやセリスのところに飛ぶ札と同じようなものだった。
「これって、センターリタの薬草園?」
「えぇ、その通りです」
札に手を置き魔素を流した。
ふわりと——
光に包まれる——
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