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神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~ 【原作完結済】  作者: 川原 源明
第18章 動き出す厄災、救国の聖女

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第310話 飛び出したキャットバット

 肩にいたキャットバットが、急に飛びだしていった。


 パタパタと——


 どこへ?


「あっ、待って!」


 私は思わず叫んだ。


 小さな影が——


 森の中へ——


 消えていく——


「おい、どうした?」


 スコルが振り返る。


「キャットバットが……、あの子が……!」


「追いかけるのか?」


 ハティが尋ねた。


「うん……、小さいし、一人じゃ危ない……」


 生まれて数日の子——


 どんな魔物がいるのか分からない森、放っておけない——


「はぁ、仕方ねぇな。乗れ」


 スコルが再びしゃがむ。


 私は慌てて背中に飛び乗った。


 ふわふわの毛——


 温かい——


「しっかり掴まってろよ」


「は、はい!」


 スコルが駆け出す速い、風が、ビュンビュンと、木々の間をすり抜け、ハティも隣を走っている。


 マッドゴーレムたちも、這いずるようについてくる——


「見えたか?」


「あっ、あそこ!」


 小さな影が、森を抜けて開けた場所へ出て行った。


「チッ、仕方ねぇ!行くぞ!」


 スコルが加速する——


 ハティも並走する——


 マッドゴーレムたちが、旗を掲げながら続く。


 森を抜け、視界が開ける——


 そして、その先には戦場——


 そのまま、私たちは戦場へと飛び出した。


---


 陣営と城壁の間——


 兵士たちが剣を、槍を、弓を、杖を構え、無数の矢や、魔法が飛び交っていた。


 そこへ小さなキャットバットがパタパタと飛んでいく。


「ダメ!」


 私は叫んだ、でも間に合わない。


 キャットバットは、そんなのお構いなしに戦場の真ん中へと飛び込んでいった。


 私の声に気づき、一部の兵士たちの顔がこちらを向く。


 驚愕——


 困惑——


 恐怖——


 こちらに気づいた兵士たちは様々な表情を見せていた。


「姉上!」


「あぁ!」


 スコルは走りながら大きく息を吸った。


「全員止まれ!これ以上の攻撃は神への攻撃とみる!死にたくない奴は武器を納め下がれ!」


 スコルの言葉に双方の兵士たちは攻撃をやめたものの、キャットバットだけはお構いなしに飛んでいく。


「止まらない子が居ますね……」


 私は素直にそう口にした。


「姉上の言葉は通じているはずなんですがね……」


「あんのガキが!」


 スコルが苛立ちを隠さない。


---


 キャットバットの後を追い続けると、王国軍の陣営の奥へ飛んでいく。


 私達が陣中に突入すると、兵士たちが怯えた顔で道を開ける。


 そして、小さな影は、大きな天幕の中へと消えていった。


「あそこは……」


『中にはご飯がいっぱいあるね~』


 まん丸が答える。


 兵糧庫——


 なんで、あの子がここを目指したんだろう?


「行きましょう」


 私はスコルの背から降り地面に足をつけた。


 兵士たちの視線が痛い。


 私は、天幕へと歩き出した。


 天幕の中へ入ると、小さなキャットバットが一つの木箱にしがみつき、「ミャ!ミャ!」と鳴いていた。


 必死に——


『あぁ、そんなかにクレイジーラットがおんねん』


「あぁ、匂いで……」


『でしょうね』


「ってか、池のところからここまでって結構距離あるよね……」


『こっち風上!向こうが風下だからじゃない!?』


「それでクレイジーラットの匂いが漂ってきたと……」


 とりあえず、木箱にしがみついているキャットバットを捕まえ抱きかかえた。


 ふわっと——


「ミャ!ミャ!」


 何を言っているのか分からないが、木箱に向かって飛び出しそうなところを見ると、「放せ」とでも言っているのだろう。


---


「居たのか?」


 声がした方を振り返ると、白いロングコートとサングラスを身に着けた、長身の獣人男性が立っていた。


 見覚えがある——


「ハティさん」


「ハティでいい」


「クレイジーラットの匂いでここに来たようで」


 腕の中で、バタバタしているキャットバットを見せた。


「ふむ、その子には貴女の言葉が通じないんだろうね、仕方ない」


 ハティが、私の腕の中でバタバタと暴れているキャットバットのおでこに右手を当てると、ハティの右手が僅かに光った。


 ほんのりと——


「これでいい」


「ぇ?」


『人語理解を付与したようですね』


『だな、これでラミナの言葉はこいつに通じるわけだ』


「あ、ありがとうございます」


「いやいい、借りの一部を返しただけだ、それよりも名前くらい付けてやれ」


 そういえば名前は付けてなかった——


 というか、キャットバットの記憶を覗いたのだろうか?


「えっと……、なんて名前にしようかな……」


「ミャ!?」


 私の声が理解出来て驚いたのだろうか?


 小さなキャットバットが暴れるのをやめてこっちを向いた。


 目を丸くして——


---


「ミャミャ鳴くし、ミーシャ、ミーシャでいいかな?」


「ミャ!」


 嬉しそうに——


「それでいいらしい」


 どうせなら私にもキャットバット言語理解付与してくれたりしないんだろうか?


「私にこの子の言葉がわかるスキルとかはくれないんですか?」


「精霊使いがあるから無理だな、この子はまだ種族スキルしかなかったから付与できただけだ」


「そうなんだ」


 少し残念に思った——


「で、どうするんだ?町に行くのか?」


「んと……」


 ふと思う、ここにクレイジーラットがいるという事は、病原菌があるという事、という事は——


「ねぇ、アクア、兵たちに病にかかってる人はいないかな?」


『数名体内に保菌しているのを確認してますね、ただ症状はまだ出ていないようですが、どちらかというと、街中の方がすでに発症している方が多いですよ』


 どうすべきだろうか、仮にこのまま陣を引き払い撤退したところで、撤退先で感染が広がるのは分り切っている。


 ならば——


 隔離という意味でも——


 ロスロイの外を治療拠点にしよう——


---


「決めた。ここを治療拠点にする。まん丸。悪いんだけど、この辺りに大きな治療施設を作ってくれる?」


『は~い、旗を掲げとけばいいかな~?』


「うん、わかりやすいように何本か掲げておいて」


『わかった~、じゃあ隣に建てるね~』


「うん、魔素持って行って」


 私がそういうと、まん丸だけではなく、一部のマッドゴーレムが崩れ、中から出て来た地の子達も私から魔素を受け取りにきた。


 そして、まん丸と一緒に外に出て行くと——


 ゴゴゴゴゴと——


 大きな音とともに——


 外からざわつく様な声が聞こえてきた。


「よっし、始めよう!」


 私は、私自身に気合を入れこれから始まる長い闘いに向けて気合を入れた。


 王国軍の陣営の隣に、見る見るうちに巨大な治療施設が姿を現していく——


 土と石で作られたしっかりとした建物の屋根には、治癒院のシンボルとウォンバルの横顔を描いた旗が何本もはためいている。


 兵士たちが、呆然と見上げていた。


 私は、ミーシャを抱きかかえたまま施設の方へと歩き出した。


 やるべきことはたくさんある。


 クレイジーラットの駆除に、感染者の治療。


 そしてこの戦を終わらせること。


 長い戦いが始まる。


読んでくれてありがとうございます!


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