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神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~ 【原作完結済】  作者: 川原 源明
第18章 動き出す厄災、救国の聖女

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第305話 行動分析

 野営の準備をすることになった。


 ルナが馬車を止め——


 静かになる——


「まん丸君とミント君にお願いしていいですかね?」


『な~に?』


『なんや?』


「二人とも何って」


「この斜面に昔作ってくれた小屋をお願いしていいですか?」


『いいよ~』


『ええで』


「いいよって言ってます」


「そうですか、お願いします」


『『魔素もらうね(で)』』


「うん」


 ミントとまん丸が私から魔素をもらうとヴィッシュが指定した斜面で何かを始めた。


 ヴィッシュが昔という事は、先祖と旅をしたって事だろうか?


「昔ってリタと一緒に旅したんですか?」


「錬金科を立ち上げる直前ですかね、五年ほどお休みをもらいリタ君と世界中を回ったことがあるんですよ」


「へぇ、錬金科絡みってことですか?」


「えぇ、薬草集めや世界中の病を調べるためですね」


「へぇ~そうなんだ」


 私の中では、世界を回ってきたリタがグリーサに戻ってきて錬金科を立ち上げたものかと思っていた。


「リタが世界を回って戻ってきて、すぐに錬金科設立だと思っていました」


「ふっふふ、その後、リタ君が行っていない地域中心に回っているんですよ」


「はぁ~そうだったんだ」


「えぇ、その時に先生となる人物も集めたりしたんですよ」


「へぇ~、クレイジーラットの病もその時に見たんですか?」


「そうですね、当時は蓬莱国北部にある地域のみにしかいない種でしたし、その時は地域特有の病って事になってましたね」


---


「地域特有ですか?」


「えぇ、クレイジーラットが居るのは砂漠や荒野と呼べるような厳しい地域に多いんです。彼らは自分の地域から離れようとしない種なんですよ」


「それが今回は……」


「えぇ、普通の子じゃない子が増えて来たんでしょうね、餌の少ない荒野を出て餌の多い地域を目指した結果なのかもしれませんが、実際に見てみないことには何とも」


「見てみないことには?見てわかるんですか?」


「えぇ、それくらいはわかりますよ、何のために行動しているのか、どうしてその行動をしているのか等は見ればわかりますからね」


『ヴィッシュのスキルは行動分析なんよ』


『だから、奴が見た対象の行動理由はすぐに把握できるんだよ』


『もっと言うとね~、感情の詳細までわかるスキルなんだよ~、便利だよね~』


『しかも、対象の過去も分析対象なんですよ』


『せやなぁ、“なぜここに来た?”と思えば、その理由もわかるんよ』


「へぇ~」


「今の間は精霊達から何か聞いたのか?」


 スキルについて探るのはタブーというのは聞いているので、ヴィッシュの方を見た。


「おそらくですが、私のスキルについて知ったのでしょう」


「スキルか、聞いてすまない」


「いえいえ、隠すようなものではないので」


「そうか」


 クロウやヤーハンの性格とかを見抜いているのは行動分析というスキルのおかげなのだろうか?


「生徒の性格的特徴を見抜いているのは、そのスキルでなんですか?」


「そうですね、特徴的な子はよく覚えていますからね」


「へぇ~」


「ちなみにラミナ君も結構特殊な子に分類しているんですよ」


「ぇ!?そうなんですか!?」


「えぇ、かなり特殊と言えば特殊ですね、さすがリタ君の子孫とは思いましたが」


 という事は、リタもまたかなり特殊なタイプだったのかな?


「私のどこが変わってるんですか?」


「一番気になるのは、手術中のラミナ君ですかね」


「手術中ですか?」


「えぇ、イリーナ君やミアン君達は、"失敗しないように"とか"助けないと"という想いを持ちながら対応しているのですが、ラミナ君の場合は"無"なんですよ」


「無ですか?」


「えぇ、余計なことを考えずに淡々とこなしているんです、術中にトラブルが起きても感情揺れもなく淡々とね」


 ん~、言われてみれば、すべてがそうであるわけじゃないが、常に"次はこうして~"とか手順しか考えていない気がする。トラブルも大体練習中に経験しているから対処のしようが分かってるからかな……。


「って、本番前にたくさん練習してるからじゃないですかね?」


「そうだと思いますよ、だからこそ、相手が助かる術を完全に把握しているから、助けようと思う必要もありませんからね」


「そういう考えは基本ベテランと呼ばれる人間たちの考えなんだがな……」


「ベテラン……、なんですかね……?」


「私から見ても、ベテランだと思いますよ」


「はぁ……、リタはどういう意味で特殊だったんですか?」


「そうですね、彼女の場合は気分が全てといった感じでしたね」


「それって、気分屋ですか?」


「えぇ、たとえば座学を淡々と受けるだけの生徒が集まった授業は二時間連続で続けると駄目ですね、二時間目の授業はほっぽってどこか行ってしまいます」


「あ……、リリアンさんが名物先生が居たって言っていた気がする……」


「リリアン?」


「リリアン・スターブレイド、今はステルツィア王国の第二騎士団団長をしている」


「あぁ~、居ましたね、あの頃はまだ手探りだったと思いますね、クラスに一人は好奇心旺盛で質問をする生徒を混ぜないと駄目というのに気づいていませんでしたからね」


「質問をする生徒ですか?」


「えぇ、ただ授業を受けるだけの子達だけだと、彼女は飽きてしまうんですよ、なので授業中に少しでも質問をしてくれないと、次の時間はどこか行ってしまう」


「結構適当な人だったんですかね……?」


「私から見れば、教えるという部分に関してはすごく適正があるように見えましたが、本人は、"こういうの(座学)向いてない!ヴィッシュが教えてよ!"とばかり言っていましたね」


『ふっふっふ、懐かしいですね』


『だな、あいつは身体を動かす方面なら飽きないのにな』


『だね!』


「精霊達が身体を動かす方面なら飽きないって」


「ふっふふ、そうですね、身体を動かすのが大好きでしたね、座学も教室内をうろうろしながら教えていましたね、一人一人の生徒のノートをチェックして"ここは大事なことだから線ひいときな"とか、"ここの解釈はちょっと違うよ"とかちゃんと指摘していましたからね」


 私からしたら、立派に先生しているし、常に生徒の理解度もチェックしている先生ってそんなに居ない気がするんだけど……。


「立派な先生じゃないか」


 アリアナがリタをほめた。


「えぇ、だから私から見たら教えるという部分に関しては申し分のない子でした」


「だけど工夫しないと、飽きてどこか行っちゃう……」


「そうなんです。私の教え子の中で一番手のかかる子でしたね」


「そういう意味で特殊だったと……」


「えぇ、リタ君に関しては他にも色々ありますがね……」


「しっかし、それほど気分屋なら仕事に来ない日はなかったのか?」


 アリアナが尋ねた。


「それはありませんでしたね、毎日ちゃんと来てましたよ」


「仕事自体は好きだったんだな」


「えぇ、それは本人も言ってました。教え子の成長を見るのは楽しいと」


 会えないのは残念だけど、どんな感じで教えていたのか、実際にリタの授業を受けてみたいと思った。


「私もリタの授業を受けてみたかったな」


「それは私も同感だ」


「ふっふふ、周囲からの先生としての評価はとても高かったですからね、リタ君の授業を受けたいという生徒は多かったですよ」


 そんな話をしていると——


『できたよ~』


『出来たで~』


 まん丸とミントの声が聞こえた。


 振り向くと——


 斜面に——


 しっかりとした小屋が建っていた——


 土製での部分はガラスとかではなく、周囲の草の蔦が絡んだものが垂れ下がっていた——


 少し特殊な——


「おぉ、相変わらず見事な仕事ですね」


 ヴィッシュが感心したように言った。


「さて、それでは中に入りましょうか」


 いまだに馬車の中でとろけているキャットバット達を抱えて中に入った。


 今日は——


 ここで夜を明かす——


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