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神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~ 【原作完結済】  作者: 川原 源明
第18章 動き出す厄災、救国の聖女

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第303話 山越え

 そして、しばらく走っていると、上り坂が続くようになってきた。


 道が険しくなる——


 ガタガタと——


 揺れが大きくなる——


「どうやら一つ目の山に差し掛かったようですね」


「この先はアースドレイクがいるから気をつけろよ」


 アリアナは誰に向けていったのだろうか?


 ルナに言ったのかな?


「ルナに言ったんですか?」


「あぁ、奴らは急に地面から飛び出すからな」


『ん~でもこの辺りには居ないし大丈夫じゃないかな~』


「そうなんだ」


『うん~、どちらかというと~キャットバットの数がね~』


「キャットバット?」


『うん~この先の山を越えたところに、たくさんの洞窟があるんだけど、キャットバットがいっぱいいるんだよね~』


「そうなんだ」


「キャットバットがどうした?」


「この先の山を越えたところにある洞窟にいっぱいいるって」


「そうか、食い物にもならないし売れる部位もあまりない奴らだからな……」


「そうなんだ……」


「おまけに彼らはすばしっこいですからね、普通の魔法は当たらないと認識すべき相手なんですよ」


「へぇ~そうなんだ」


---


「授業でやってないのか?」


 一年次の魔物生物学の授業を思い返してもやった記憶がない。


「ん~やった覚えがないですね……」


「キャットバットは、基礎学年二年の夏あたりの課題だったと思いますね」


「そのころには帰れますかね……?」


「どうでしょう、流行り病次第ですが、難しいように思いますね」


「ですよね~」


 今は五月、これから厄災とか考えたら夏に帰れる見込みは薄い気はしている。


 ため息——


「さぁて、この調子で進んでいると、二つ目の山を越える辺りが夜でしょうかね」


「それくらいだろうな」


「それでは、二つ目の山のふもと辺りで夜を明かす方向で行きましょうか」


「アーマーアントはいいのか?」


「えぇ、虫よけのお香がありますからね」


「準備が良いことで」


「ほんとは、シルバー・ヴァインの方を用意したかったんですけどね……」


 知らない単語が出て来た。


「シルバー・ヴァインってなんですか?」


「さっき話に出たキャットバット対策に使える草だ」


「そうです、キャットバット達にとってはお酒のようなものなんですよ」


「旨くやれば、懐くんだよ」


「へぇ~」


『ほんならバッグに入っとるやろ、ゴールデン・ヴァインが』


「ん?ゴールデン・ヴァインってなに?」


『奴らをなつかせることが出来るで、ペットとして捕まえるなら必須アイテムなんよ』


「へぇ……」


「ゴールデン・ヴァインを持ってるんですか?」


「なんか鞄に入ってるっぽいです」


「ほぉ、それはいいですね」


「ぇ?」


「キャットバットの好物は何か知ってますか?」


「いえ?」


「彼らはラット系の魔物を好んで狩るんです」


「ぇ……」


「キャットバットにクレイジーラット狩させるのか?」


 アリアナが驚いた声を出した。


「えぇ、彼らに人は敵ではないと教え込むことが出来れば、行けると思いますよ」


「だが、ゴールデン・ヴァインをどれだけ大量に使う気だ……」


「そこが課題ですね」


「というか、クレイジーラット狩を覚えさせることのほうが課題じゃないんですか?」


「いいえ、街中までついてくれば彼らは匂いで追い始めるので問題ないんですよ」


「ゴールデン・ヴァインが側に有ってもですか……?」


 お酒のようなものって言っていたし、酔ってる状態でクレイジーラット狩なんてできるのだろうか?


「そこは問題ありませんね、何故かラット系のにおいがあると、狩人モードになるようで」


「まぁ、ラットに食いついた瞬間使い物にならなくなるがな……」


「ダメじゃん……」


「まぁ、数匹飼いならしてみるのもありだと思いますよ」


「まぁ、見た目はかわいいからな、ペットとして人気はあるな」


「時々ゴールデン・ヴァインかシルバー・ヴァインを与えないと逃げ出しますけどね」


『まぁでも、感染対策には使えそうですね』


『せやなぁ、町の外に放っとけば、商隊の積み荷に紛れ込んだ奴らを襲うやろ』


『だな、そうなった場合人間に狩られそうだがな……』


 一つの案としてよさそうと思ったけど、人に狩られるのはダメじゃん!


「というか、ゴールデン・ヴァインがいっぱいあればいいんですかね?」


「えぇ、あればあるだけいいですよ、三日に一本与えれれば問題ありませんし、毎日与えれば従順な子になりますよ」


「へぇ~」


 ふと思った。セレスのところで量産できないだろうか?


---


「ねぇ、セレス~、これ量産してくれる~?」


 私は誰も居ないところに向かって言ってみた。


『いいよ~、コンテナに入れておいて~』


 すぐに返事があってよかった。


「は~い」


『実をイメージして取り出してみ』


 マジックバッグから、ゴールデン・ヴァインの実をイメージして取り出すと、緑色の濃厚な甘い匂いをした小さな実が手元に現れた。


 ポンと——


 手の平に——


「これが……?」


『甘くてうまいで』


「そうなんだ……」


 個人的には匂いが強すぎてそこまで食べたいって思えないんだけども……。


「その香りはゴールデン・ヴァインですか?」


「はい」


「その独特のにおいが奴らは好みなんだよ」


「へぇ~」


「ちなみに猫系の獣人も同じようになるからな」


「……そうなんだ……」


 気をつけよう——


 鞄からマジックコンテナを取り出し、ゴールデン・ヴァインの実を入れておいた。


 一匹位はペットとして飼ってみようかな?


「って、アリアナさんって猫系獣人じゃないの?」


「そうだが、私は甘いものが苦手なんだよ」


「この香りも……?」


「あぁ、それに訓練も受けているからな」


「訓練?」


「アリアナさんのように、裏方で動く人たちは毒等の耐性が付くように訓練されていたりするんですよ」


「そういうことだ」


「そうなんだ……」


 という事は、ゴールデン・ヴァインは毒扱いなのかな……?


 そんなことを思っていると、下り坂に差し掛かっていた。


 ルナの足音が変わる——


 パカパカと——


 リズムが変わる——


 一つ目の山を——


 越えた——


読んでくれてありがとうございます!


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