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神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~ 【原作完結済】  作者: 川原 源明
第18章 動き出す厄災、救国の聖女

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第300話 動き出す歯車

 旗の制作騒動から早一か月以上の時が経ち、五月を迎えていた。


 食堂で、聖女と呼ばれるようになった日から連日忙しい日々を過ごしていた。


 治癒院に行けば、私の治療を求める人、私に興味を持ち覗きに来る人、そして治癒院勢力の戦力になる為にと志願してくる人等々、本当に色々な人が押し寄せてきた。


 食堂での騒動翌日こそは混乱があったものの、その翌日からはプライヤー治癒院の院長のウッズと、プライム辺境伯が動いてくれ、落ち着いて必要な人への対応ができるようになった。


 ウッズ院長は、特別な手術が必要な人、そうではなく治癒院の人で対応可能な人を振り分け、特別な手術を必要としている人のみを私に回してくれる。


 一方プライム辺境伯は、治癒院勢力の副長を自ら買って出てくれて、色々な対応をしてくれている。


 そして、アリアナは、私の近くで現在の国内の動きを私に教えてくれていた。


---


 ようやく、ずっと埋まり続けていた手術の予定が全てなくなり自由ができた。


 予定に存在していた最後の手術を終え、ようやく一息をついた。


「だいぶ落ち着いてきたね~」


『せやなぁ』


 ふぅ——


 長かった——


「ヴィッシュ先生まだ来ないのかな……」


『ヴィッシュでしたら、昨晩プライヤーに到着されていますよ』


「そうなんだ、それじゃあ今は宿で?」


『えぇ』


「そっか……」


 私が今知っている国内情勢は、クロウが王の代理として名乗り、すべて自分の裁量で判断し独裁政治を行っている事。


 そして、第一王子と第二王子は、すでに何度か暗殺されそうになっているところを、アリアナの部下たちによって何度も救出され、二人とも騒動が落ち着くまでステルツィアへ亡命という形で国外に逃れている。一方エリザベス王女は、王都ノルトハイム沖に停泊している、ステルツィア海軍の第一艦隊の元に身を寄せたままになっているらしい。


 複雑——


「ん~どうなるのかな~」


『何がだ?』


「この国だよ、私は早くルマーンに帰りたいんだけど……」 


『聖女として祭り上げられている以上、何もしないままというのは無理だろう』


「ん~、王都に行くべきなのかな……」


『いえ、それよりも、ロスロイに向かったほうが良いかと』


「何かあるの?」


『えぇ、クレイジーラットが上陸したようで』


「あっ……」


 日々の忙しさで、厄災の事をすっかり忘れていた。


『まぁ実際は、グリーサに来た船内にもいたらしいが、クゥが消したようだな』


「そうなんだ、グリーサはクゥが居るから感染は広がらないかな?」


 学園祭の時に、曰くつきの品を早々に確保していたクゥなら、クレイジーラットが自分の空間内に入ってきた瞬間に対応していそうな気がした。


『当然!』


 本人から返事があった。


 頼もしい——


「そっか、ノルトハイムは?」


『こちらの王都は、基本グリーサを経由してくる船が大半なので問題ないですね。ただしトロランディアからミネユニロントへと広がり、ミネユニロントからノルトハイムに来る船に……、という事は十分あり得ますが、ロスロイから広がるのを少しでも遅らせる方がいいでしょうね』


「んじゃ、メレス王国は北部のロスロイから始まる感じなんだ」


『えぇ、もっというなれば、海峡を挟んで向こう側にある、トロランディア帝国ではすでに広範囲に広がり始めていますね』


『まぁ、ロスロイに来た船もトロランディア北部の町を経由してるからな……』


「そっか、ヴィッシュ先生と合流したらロスロイかな……」


『そうですね、それがよろしいかと』


「ほぉ、ロスロイに行くのか」


 後ろから声が聞こえ、後ろを振り向くと、アリアナが立っていた。音もなく——


「聞いていたんですか?」


「あぁ、患者が出て行ってからずっとここにいたからな」


「最初からじゃん……」


「そうなるな」


 アリアナが肩をすくめた。


「んで、ここに居るってことは……?」


「あぁ、お前の依頼していたクロウ政権の話だが」


 正直、善政なら別にどうでもいいと思うし、そうではなく、これまでと変わらない、もしくは悪化するようなら対処すべきだとは思っていた。


「うん」


「よくはないな。荒れた国内の立て直しのために税率アップだそうだ」


「そうなんだ……」


 やっぱり——


「これは、お前の対策だが「神は特定個人の専有物ではない」だとか、「神を名乗り民衆を扇動する行為は慎むべき」とか言ってるな」


『少しでもこちら側の勢力が膨らむのを抑えるためでしょうね』


『せやろなぁ、武力じゃどうしょうもないもんなぁ』


『だね~、だけど効果はあったのかな~?』


「ぇ、効果はあったんですか?」


「いや、ないな。そもそもメレス王国自体熱心なメフォス教信者が多いからな、そんな奴らがウォンバルを実際に見たりしたらな」


「見たのは一部の人だけでしょ……」


 アルドゥハイ南部の戦場にいた人と治癒院の人達だけだと思う。


「まぁな。それに何よりもお前自身の治療実績だな。実際に一日に七~八件対応してきたのだろう?その奇跡を目の当たりにしたやつらが地元に戻ったらどうなると思う?クロウの言葉を信じると思うか?」


「……、信じない……、というか……、アリアナさんたちは何もやってないですよね?」


「やってないな。今は民衆の熱意がすごいからな、こちらが扇動しなくても勝手に盛り上がってくれるからな」


「……、そうですか……」


 もう本当に、この聖女呼ばわりされるのは早く冷めてほしいと思う。


 ため息——


『アリアナ達もクロウの狙いをかなり潰しているようですよ』


 ぇ?


『治癒院を名乗る偽物つぶし!』


『ラミナの名を使った詐欺~』


『まぁ、暗部らしい対応でだな』


『そうですね』


 そんなことをしていたんだ……。


 それは知らなかった。


---


「で、ロスロイに行くのか?」


「あっ、はい!クレイジーラットがロスロイに上陸したらしいので」


「そうか、厄災が始まるのか」


「かもしれませんね」


「ところで噴火の方はどうだ?ステルツィアの方は難民であふれているが、闇に飲まれるほどではないと聞く」


『すでに魔大陸から西のエリア、倭国や蓬莱なんかは晴れのない日々が始まっていますよ』


「えっと……、魔大陸から西のエリア、倭国や蓬莱なんかは既に晴れのない日が始まってるそうです」


「そうか、風の流れか」


『そうだよ!この星の北側のはるか上空は蛇行、分離、合流なんかしているけど、基本東から西へと風が吹いてるからね!』


「そうみたいです」


「この辺りが飲まれるまでの猶予は?」


『風の速度次第ですが……』


『五日!早くて五日!』


「早くて五日だそうです……」


『でもね!人の子の体に影響を与えるかわからないよ!』


「あれ?リリアンが泣いている子供とか、雪とかって言ってたような気がするけど……」


『リリアンが居るのは、ステルツィアだろ?隣国のグリア公国のデルボック火山が噴火するんだ、実際に火山灰が降ってきてもおかしなことはないからな。火山灰なら目に入ればそりゃな……、ただ……』


「ただ?」


『あのね~火山から噴き出るもの中に、すごくすごく小さな粒があるんだけどね~』


『今のところね!それが地上に落ちないの!』


「ぇ、空の上にとどまってるって事?」


『そう!それが太陽の光を遮るの!』


「それで?気温が低下して雪がふるの?真夏に……?」


『可能性は十分にあり得ると思いますよ』


「ふむ、ラミナの独り言を整理すると、人の体に影響があるのは火山地帯周辺に限定か?」


 私の独り言で正解を言い当てるのは、さすが諜報とかを得意とするからなんだろうか?


「みたいです。で、闇に飲まれるってのは、すごく小さな粒が空にとどまって落ちてこないから、それらが太陽の光を遮ってるって」


「ふ~ん、となると元々冷えやすい地方や寒い地方は真夏でも雪が降る可能性があると」


「はい、そういってます」


「なるほどな。リリアンが居るのはグリア公国との国境近く、それも高地地帯だからな。火山灰も降るし、冷えやすい、そうなると、真夏でも太陽が遮られ、実際に雪が降る可能性もあると……」


「なんですかね……?」


「なるほど、あの時と解釈に違いがあれど起こりうるか。そうなると近々またデルボック火山が噴火する可能性があるという事か」


「あぁ~、真夏の雪が火山灰ならば……ってことですね」


「そうだ」


『噴火はするよ~今年中にあと二~三回は噴火するんじゃないかな~?』


「今年中にあと二~三回はって言ってますね」


「なるほど、それは伝えておくとしよう。リリアンの解釈だと後継者争いは黒幕を捕らえないと終わらないと言ってたな?」


「そうだっけ……?」


『せやね、黒幕を捕らえたら終息にむかうってゆうてたで』


「じゃあ、クロウもしくはヤーハンを捕らえないと終わらない……」


「そういうことになるな」


 はぁ……。


 グリーサに帰れるのはいつになるんだろう。


 そんなことを思っていると、手術室入り口の扉をノックする音が聞こえた。


 コンコンと——


読んでくれてありがとうございます!


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