第291話 プライヤーへの道
翌朝——
目を覚まし、マジックコンテナから適当な果物を取り出し腹ごしらえを済ませると、プライヤーの町へ向かった。
シャクシャクと——
りんごをかじる音——
治癒院のスタッフたちに見送られ、私はルナにまたがった。
「気をつけてね」
「はい、ありがとうございました」
手を振り、アルドゥハイの町を背に駆け出した。
パカパカと——
蹄の音——
朝の風が心地いい——
---
「プライヤーまでどれくらいかかるのかな?」
『一直線に行ったとしても、おおよそ三日といったところですかね?』
アクアが答える。
『せやなぁ、馬を全力で走らせても二日はかかるで』
「そうなると、どこかで一泊かな?」
『だろうな』
グレンが頷いた。
「プライヤーまでは一直線じゃないの?」
『違うよ~、街道は北にある山間の村々を経由してるんだよ~』
まん丸の言葉を聞いて、周囲を見渡した。草原に時々木々が生えて丘があるくらいだったが、北側には山脈だろうか?山が連なっているのが見えた。
遠くに聳える山々——
雄大——
「一直線に行っても特に何もないの?」
『あるで、元々この草原を放浪する遊牧民の集落があるで』
「その近くで休めるかな?」
『どうでしょうね、彼らは盗賊としても活動していますからね』
アクアの声が少し心配そうだった。
「ぇ……?」
『草原の生活じゃお金になるものが少ないからね~』
『元は馬やらを育てて町で売る仕事だったみたい!』
フゥが教えてくれる。
「軍にとられるとか……?」
『そうでしょうね』
なんだか生きるために盗賊にならざる得なかったって事かな……?やりきれない気持ちになる。
そんなことを思いながらルナの背に揺られていた。
ザワザワと——
草原を風が渡っていく——
---
しばらくルナの背に揺られていると、グレンが何やらきょろきょろしているような様子を見せていた。
「なにやってんの?」
『俺か?』
「うん、さっきからきょろきょろとしてるよね?」
『あぁ、空飛ぶ鳥を燃やしてるだけだ』
「ぇ?」
『鳥使いがラミナの動きを探っているようですからね』
アクアが補足してくれた。
「私の動きを悟られないように?」
『そういう事だ』
『ちなみに、ヴィッシュの方も対応しているんですよ』
「そうなの?」
『えぇ、あちらは、ラミナよりも重要な動きになりますからね』
「そうなんだ」
第一王子や第二王子、エリザベス王女と接触するってことだったし、私よりも重要そうではある。
ふと思ったことがある——
「ヴィッシュ先生とは、すぐに合流できないよね?」
『せやなぁ、最短二か月くらいちゃう?』
『そうですね、第一王子のいるメリディアから、王都はすぐですが、第二王子のいるロスロイに関しては、王都からでも往復一か月半以上かかりますからね』
「遠いね……」
『北の端だからな』
「そんなところにいる理由ってあるのかな……?」
なんでそんなところにいるのかが気になった。
『それはね~。ロスロイとその周辺はね~海底からアクアクリスタルと言われる宝石が取れるからなんだよ~』
「宝石?ってことは財源確保とか?」
『えぇ、おそらくですが、ロスロイとその周辺の地は他の貴族たちも欲しがる場所のようですからね』
『その場所を守ることと戦の資金にしないためかもね!』
フゥが付け加える。
「そっか」
というか、自国内の領土争いとか意味あるのかな……。ただ単に略奪される村の人たちが可哀想なだけじゃないか……。
胸が痛む——
「プライヤーの町で治癒院の人たち解放したら戦は終わるのかな?」
『後継者争いでの戦でしたら、もう終わるのではないでしょうか?』
「ぇ?」
『先の戦でヤーハンとつながりのあった貴族三人が死んだからな、扇動するやつらが居なくなったんだよ』
グレンが言った。
「アリアナは四人って言ってなかったっけ?」
『そのうち一人は既に捕らえられ処刑されているんですよ』
「ぇ?だれに?」
『レジスタンスだな』
「レジスタンスという事は領民が立ち上がってるって事?」
『あぁ』
『問題は、レジスタンスと王国側との戦につながる可能性が高いという事です』
アクアの声が重い——
「ルマーン革命みたいな事が……」
『せやね、今は規模は小さいけど、どうなるやろな』
「あのさ……、そのヤーハンって人が絡んでる可能性は……」
『絡んでますよ、きっかけを作ったのが彼ですから』
「え……、止めなかったの?」
『俺らからすれば、ラミナの命がかかわらなければ興味ないからな』
グレンの言葉が冷たく響く——
『そうですね、それにラミナの考えは民衆の味方ですよね?』
「まぁそうだけど……」
『レジスタンスのリーダーが王になるべきって考えてる人と、エリザベス王女を王位にって考えてる人がいるからまとまり自体はそこまでないんだよね~』
まん丸が説明してくれる。
「ヴィッシュ先生は知ってるのかな……?」
もう少し早く教えてほしかったんだけど……。
『えぇ、彼も言ってましたよね、第三勢力治癒院の名でって』
「うん、支持している人が居るから、すぐ大きな勢力になるかもって……、もしかして……」
『えぇ、ヴィッシュは既に、第三勢力が存在していることを知っています。そして勢力として育てる案も彼らを吸収できると踏んでいたからです』
アクアが静かに言った。
『まぁ実際、治癒院制服を着て先の戦に参加したからな』
『そしてバックに、地神ウォンバルが付いていることを見せつけましたからね』
「私がリタみたいにリーダーになると、人が集まる……?」
『えぇ、神が側にいる勢力になりますからね』
『ボクらはどんな状況でもラミナを支えるよ~』
まん丸の声が優しい——
「う~ん……」
私にリタのようなことができるとは思えない……。けれど荒廃した国を立て直すために必要だというならやるのもやぶさかではないけども……。
どっちがいいのだろうか?
重い——
考えがまとまらない——
---
風が吹く——
草が揺れる——
ルナは黙々と草原を走り続ける——
パカパカと——
蹄の音だけが響く——
私は、ただルナの背に揺られながら、考え続けていた——
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